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Stories of coins and color stones

ビットリオ・エマニュエル3世の名品コイン

2016年7月

趣味としてのコイン収集の歴史は長く、古代ギリシャ・ローマ時代には、すでにコイン収集家がいたそうです。時代が下りますとコイン収集層も拡大し、王侯や貴族の間でもコイン収集家がずいぶんとでました。

なかでもイタリアのビットリオ・エマニュエル3世(在位1900年-1946年)は、コイン収集家や研究家として有名であるばかりでなく、その在位中に素晴らしいコインをいくつも鋳造いたしました。

同王在位中に作ったコインとして、主だったものは以下の通りです。

100リレ金貨

  • 1903年/1905年発行(裏面サボイ家の紋章)
  • 1912年~1927年発行(豊穣の女神)
  • 1923年(ファシスト政権誕生1周年記念)
  • 1925年(在位25年記念)

銀貨

  • 1901年発行5リレ銀貨(サボイ家紋章)
  • 1914年発行5リレ銀貨(四頭立て戦車=クアドリガ)

コイン収集家だけあっていずれも素晴らしいデザインのコイン達で、今日でもこれらのコインは名品と呼ばれています。

例えば「豊穣の女神」と呼ばれる1912年-1927年の100リレ金貨を見てみましょう、このコインは厳密にいえば1912年と1926年、1927年のみ造られていますが、1926年はわずか40枚、1927年に30枚とごく少数が鋳造されただけです、したがって実質的に市場に出てくるのは1912年のみといってよいでしょう、なお鋳造枚数は約5000枚ですので希少な金貨と言えます。ただし大規模なオークションには必ず数点姿を見せ、収集対象としての難易度は決して高くはありません。相場も未使用品クラスで130万円から150万前後とお手頃です。

イタリア1912年、ビットリオ・エマニュエル3世100リレ金貨、鋳造枚数4946枚、現在の相場、未使用状態で130~150万円前後

同時代のイギリスでは、ジョージ5世時代に鋳造された5ポンド金貨が対抗馬になります、こちらは鋳造枚数2800枚とやや少ないですが、現在の相場は200万円をゆうに超えます。この金貨との比較で、「豊穣の女神」はやや割安感があるように思います。

イギリス1911年、ジョージ5世5ポンド金貨、鋳造枚数2800枚、現在の相場は未使用品で200万円~250万円前後

続いて金貨の名品をもう一枚紹介させていただきます、1925年に同王の在位25年を記念して作られた100リレ金貨です。

イタリア1925年、ビットリオ・エマニュエル3世100リレ金貨、鋳造枚数5000枚、現在の相場、未使用状態で160万円~200万円前後

この金貨はマットプルーフと呼ばれる艶消し状のプルーフ仕上げになっています、上記写真でも輝きがないのはこのためです。ほぼ同時代のイギリスでマットプルーフの5ポンド金貨(エドワード7世1902年)が作られており、コイン研究家のビットリオ・エマニュエル3世としては多少のライバル心があったのかもしれません。鋳造枚数はさきほどの「豊穣の女神」とほぼ同じですが、こちらのコインの方が人気が高く、価格も2割がた高く売買されます。

最後は銀貨の名品を一枚。以下のコインは1914年に鋳造された大型の5リレ銀貨です。表面は王様の肖像、裏面は古代ローマ時代に活躍した四頭立て戦車「クアドリガ」がデザインされています、特に裏面は素晴らしく、さすがビットリオ・エマニュエル3世とうならせるデザインです。

イタリア1914年、ビットリオ・エマニュエル3世5リレ銀貨、鋳造枚数約27万枚、現在の相場、未使用状態で180万円前後、完全未使用は250万円~300万円前後

上記のようにこのコインは27万枚以上鋳造されたのですが、ちょうど始まった第二次世界大戦のさなか、その大半は溶解されてしまいました。このコインは流通した期間が短く、比較的状態の良いコインが残っていますが、例えばMS65以上の完全未使用品ともなれば、上記のように300万円近くの値が付くことも珍しくありません。オークションやコイン商の店頭で、比較的よく見かけるコインではありますが、購入してソンはないコインです。

ヨーロッパのコイン商の間では、「日本人はホンの一部のコインだけに熱狂し、他は一向に興味を示さない」などといわれます。おそらくこれは新興のコイン商が本やサイトで煽り、意図的に顧客を誘導しているからだと思います。確かに昨今一部のアメリカのコインなどに人気が集中し、コイン先進国であるヨーロッパの相場観でいえば、偏っているといわざるをえません。今回はイタリアの20世紀初頭の金貨と銀貨を紹介させていただきましたが、世界を見渡すと他に素晴らしいコインはいくらでもあります。私たち日本人も、もっと目を肥やし広い目でコインへの投資を進めてゆきたいものです。高値掴みをしないという意味でも・・・