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Stories of coins and color stones

アメリカ初期コインのお話し

2016年9月

今回は初期アメリカのコインのお話しをさせていただきます。アメリカという国は歴史が新しく、収集対象日なるコインはせいぜい1790年代以降のものです。例えばヨーロッパのコインを見ますと、すでに1500年代の後半あたりからおびただしい種類のコインが登場しはじめ、集め始めるとドンドンと深みにはまってしまいます。しかも当時のヨーロッパは現在のような意味での国家という概念が希薄だったようで、例えば現在のドイツやオーストリア、ハンガリーなどを包含する形で存在した神聖ローマ帝国を見ますと、ザルツブルグ、ハンブルグ、ブレーメン、アウグスブルグ、マンスフェルト・・・などなど数十にもおよぶ小邦(日本の藩に似ています)が分立し、それぞれが独立して貨幣を作っていました。これらの小邦のコインは膨大な種類にのぼり、それを集めるのは並大抵のことではありません。もちろんコレクションの対象としては、それだけ奥が深く面白い対象だとも言えるのですが・・・ヘタをすれば散漫で希薄なコレクションになってしまいがちです。

これに対してアメリカのコインはずいぶんと趣が異なります。先ほど申しましたように歴史が新しいだけに、収集の対象になるのはせいぜい1790年以降のコインに限定されるといってよいでしょう、しかもほんの初期の銅貨を除き、(ヨーロッパと違って小邦単位ではなく)連邦政府が統一的に発行しています、したがってコインの種類もたかだが知れており、1800年代の百年間に発行されたコインをすべてあわせても、せいぜい100種類ほどに収まってしまうという少なさです。

ただし今後の価値の上昇という意味では決して侮れません。なにしろコインの収集家の数では世界のナンバー1ですし、多くの富裕層による圧倒的な富の集積もあります。今後はかつてのように世界のダントツの位置づけというわけにはゆかないでしょうが、それでも長期にわたり超大国の一角であり続けるのは間違いないでしょう。このような土壌はコインの価値上昇にとってプラスに作用し続けるでしょう。コインマーケットに流れ込むお金の量と、銘柄の少なさというアンバランスは、今後のアメリカコインにとって良い材料ではないかと私は思います。

ではそのアメリカコインの中で、どのような年代や銘柄が有望なのでしょうか。

私は初期アメリカ(大雑把に申し上げて1700年代末から1850年代あたりまで)のコインを推奨したいと思います。私が子供のころ西部劇がはやりましたが、まさにその頃のコインです。西部劇のなかでカウボーイがバーのカウンターにコインを置いて代金を支払うシーンをよく見ましたが、金額からみてきっとあれは1セント銅貨やハーフセント銅貨ではなかったかと思います、当時は貿易決済用や高額の商品売買のために1ドル銀貨や、それ以上の額面の、例えば5ドルや10ドル(1850年以降は20ドル金貨も作られましたが・・)といった金貨も使われましたが、庶民の日々の使用は、このような1セントやハーフセントの銅貨が主だったようです。日々頻繁に使われていたこともあり、このような銅貨は表面の摩耗が進んでおり、状態の良い準未使用級以上のコインを見つけることは困難です、それでももし皆さんが準未使用級の初期アメリカの銅貨を見つければ、きっとよい投資になるでしょう。

アメリカ1831年1セント銅貨、未使用状態で現在の相場は300ドルほどですが、このコイン自体は極美品程度の状態です。
なお裏面に端が4か所欠けているのは、鑑定会社が封入したケースのツメです、初期アメリカの1セントならこのような極美品でも十分投資対象になるでしょう

ただしこのような銅貨は決して高価なものではなく、まとまったお金の投資先としてはふさわしくはありません、一枚である程度の資産価値を持たせたいなら、銀貨もしくは金貨が収集対象になります。

以下はアメリカ初期に造られた1ドル銀貨で、通称ドレープド・バストと呼ばれる人気のコインです。皆さんは下の写真をご覧になってどうお感じでしょうか。きっと大半の方は「ずいぶんと汚れた状態の悪いコインだな」とお感じではないでしょうか。それが普通の感覚だと思いますが、実はこのコインの状態はなんと「未使用(UNC)状態」です。当時のコインは鋳造過程がずさんで、打ちも甘いものが大半でした。一見すると摩耗が進んでいるようにも見えますが、現物をよくよく見ればフィールド部分は未使用状態で、ほとんど使用感がないことが分かります。そもそもこのコインも先ほどの銅貨同様に、さんざん流通してきました。しかも初期のアメリカでは当時のヨーロッパや日本と違って、おそらくコインを収集の対象にする文化は無かったのではないでしょうか、その結果この個体のような未使用状態のコインに出会うことは極めてまれで、大半のものはツルツルに摩耗してしまっています。したがってこのコインに関しては美品(VF)程度でも十分投資対象になるでしょう。

アメリカ1802年の初期1ドル銀貨、ドレープド・バスト

ご参考までにこの写真のコインのような未使用品なら400万円以上ですが、並み程度の状態(VFクラス)ですと30万円以下で入手可能です。このコインをお買いになるなら多少高くても状態の良いものをお買いください、上記写真のコインのように未使用品にお目にかかることは稀ですが、美品以上のコインなら買ってソンはありません。

最後に金貨を一枚ご紹介しましょう。

アメリカ1800年10ドル金貨、リバティーキャップ

この金貨は初期アメリカを代表するコインで1796年から1804年まで、ごくわずかな期間のみ発行された大変希少なコインです、サイズは33ミリほど、重量は約17.5グラムで、当時のイギリスの5ポンド金貨の半分ほどしかありません、アメリカでは19世紀なかばに大量の金が西部で採掘されましたが、このコインはそれ以前に造られたものですから、まだ十分な量の金が確保できなかったのではないでしょうか。アメリカで世界サイズの大型金貨の登場は、1850年代の20ドル金貨まで待たなければなりません。さてこのコインの価格です、上の写真のコインはAU-58で極美品(EF+)程度の状態ですが、このコインが市場に出てきたら、おそらく200万円以上の値が付くでしょう。1800年銘柄の鋳造枚数は約6000枚ですから、それでも割安感プンプンです。

以上アメリカの初期コインをいくつか見てまいりましたが、共通して言えるのは割安感の強さです。最近新興のコイン商が、さかんにアメリカの現代金貨の相場を吊り上げているようですが、これらの初期アメリカコインは不思議とその対象にしていないようで、日本における売買価格も世界的にみて、決して相場からかけ離れたものにはなっていません。本国のアメリカでも近年さほどの値上がりもなく、カネ余りのわりには落ち着いた値動きを示しているようです、収集人口の多さや今後のアメリカ経済について考えると、コインの相場が崩れるとは到底考えられず、皆さんが適正な相場でお買いになる限り、買い値を下回るリスクは極めて低いといってよいでしょう、イギリスはじめヨーロッパの金貨に比べ、日本での注目度は低いですが、それだけにねらい目としては面白いと思います。