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Stories of coins and color stones

古代インドコインのお話し

2017年8月

今回は古代インドコインのお話をさせていただきます。

古代インドは紀元前4世紀に興ったアレキサンダー大王の遠征を受け、それ以降はギリシャ文明の影響を強く受けることになります。簡単に言えば、アレキサンダー大王が引き連れてきたギリシャや中東の軍隊により、彼らの文化が移植されたといってよいでしょう。文化だけでなく、ずいぶんと混血も進んだのではないでしょうか。この混合文化はヘレニズム文化と呼ばれ、インド独自の文明とギリシャ文明が融合して特異な文明を形成したしました。

コインの世界でも同じ傾向がみられます。

例えば紀元1世紀から3世紀なかばにかけて栄えたクシャン朝インドのコインには、時の王様の肖像(表面)と、裏面にはシバ神が、アルファベット文字とともに刻まれています、通貨の単位はディナールで、これはペルシャやアラブなど当時の中東地域で用いられた通貨の単位と共通です。

古代のコインはインドに限らず見ていて飽きません、すでに作られてから2000年近い年月が流れていますが、一枚一枚デザインは驚くほどに個性的です。一般的に表面は王様の肖像なのですが、胡坐(あぐら)をかいている像もあれば、立っている姿を描いたものもあります、2頭立ての戦車に乗った像(超稀!)もあればゾウさんに乗った王様もいます。状態の良いコインは王様の表情もまた味があって楽しめます。裏面はシバ神で統一されていますが、こちらも座像あれば立像あり、椅子に腰かけている姿もあれば、牛に乗っているすがたもあるなど変化に富んでいます。

クシャン朝のコインとして記録に残っているのは、カドフィセス王(在位AD107-127)、カニシカ王(在位AD127-150)、フビシュカ(在位AD150-191)、バスデバ1世(在位AD191-225)あたりが中心になりますが、最も高価なのはカドフィセス王時代のコインです。ディナール金貨でもEFクラスなら50万円をくだりません。カドフィセスの次のカニシカ王のコインも値が張ります、鋳造された都市によって相場に大きな開きがありますが。一般的な銘柄でもEFクラスなら30万円のなかばはするでしょう。めったに見ませんが、UNCクラスがもし出てくれば70万円以上の値が付くと思います。

さてさてこの古代インドコイン、特にクシャン朝のコインですが、僕はどう考えても安いと思います。

例えばほぼ同時代の世界を見渡しますと、コイン文化が栄えたのはローマ帝国ですが、このころの帝政ローマには、時の皇帝やその奥さんが描かれたアウレウスという金貨があります、重量もサイズもさきほどのクシャン朝のディナールと大差ない(重量は7グラム強です)のですが、このアウレウス金貨の相場は、一般的な銘柄でもEFクラスなら80万円から120万円はいたします。

(古代ローマ帝国、アントニウス・ピウス皇帝AD138-161のアウレウス金貨、状態はEF)

あおり系の新興コイン商なら、EFクラスでも200万円ちかくの値札をつけることもあるほどです。これに対してクシャン朝のディナールはどうでしょう。先ほどご案内したように、EFクラスなら30万円代で買うこともできますので、これはやはりどう考えても評価不足ではないかと思うのです、市場に出てくるコインの数に差はありませんので、おそらく残存枚数も似たり寄ったりではないでしょうか。

デザインも楽しめますし、時代も十分あります。EF以上のクシャン朝・ディナールを見かけたら、それはきっと良い投資の機会になるでしょう。

あとこれはご参考までですが、クシャン朝・カドフィセス王の統治時代には、数種類の2ディナール(ダブル・ディナール)も作られました、市場で目にする機会はめったにないのですが、幸いにも先日僕はあるお客様を代行し、このダブル・ディナールを競り落とすことができました、落札価格はオークション会社への手数料も含め、およそ380万円に収まり、大変ラッキーだったと思います。お客様のご了解のうえ、以下写真を掲載させていただきますので、皆様もその素晴らしいコインをお楽しみください。ちなみに重量は16グラムほどあり、通常のディナール貨の2倍です。

(古代インド、クシャン朝・カドフィセス王統治下のダブル・ディナール金貨、刻印の深い素晴らしい状態です、AU)

向かって左は表面でカドフィセス王の坐像、椅子に腰かけています。右側は裏面でシバ神が牛に乗っている姿です、裏面表面ともアルファベット文字が刻印されており、ヘレニズム文化の影響が見えます。