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Stories of coins and color stones

ポルトガレッサーに感動

2017年10月

みなさん、まず下のコインをご覧いただけないでしょうか。

これはハンブルグで1679年に鋳造された「ポルトガレッサー」というコイン(注)で、重量約35グラム、直径5センチ以上もある大型の金貨です。あまりに素晴らしデザインですので、さらに大きく致します。

注)正確には贈呈用にごくわずか鋳造したメダルですが、実質的にはコインとしても使われており、便宜上コインと呼ばせていただきます。

(1679年ポルトガレッサー、表)

上記はおもて面で、ハンブルグに富をもたらす二人の女神の立像が描かれています。いわれはよくわからないのですが、女神の下に横たわっているのは老婆です。図柄の寓意については一度調べてみたいと思います。コインのふちに「互いが法に忠実になることによる信頼ある接吻」と書かれていますが、図柄とは対照的に、銘文の説教臭くて面白味がありません。

下の写真は裏面の拡大ですが、こちらはさらに美しいです。図柄は当時のハンブルグの景観で、同時代の金貨や銀貨では人気のデザインの一つです。さらにこの図柄で興味深いのは都市の上空に描かれた女神で、両手それぞれコーヌコピア(Cornucopia)と呼ばれる器(=富の象徴です)を持っています、よくみるとコーヌコピアから、いくつかの種類の木の実や種がハンブルグの街に降り注がれています。おそらくハンブルグという都市が、神によって特別の恵みを受け続けているという、自尊や感謝を表現したものではないでしょうか。

都市の景観も素晴らしいですね、教会やお城、エルベ川を行き交う船など、当時の景観がまるで絵画のよう、しかもそれが金ですからたまりません。コインでありながら美術品といってよい美しさ、ため息が出てしまいます。

(1679年ポルトガレッサー、裏)

ちなみにコインのふちの銘文は「我々はあなたの人生があなたにふさわしく、良きものになるようお祈りします」で、こちらもあまり面白くはありません。

ポルトガレッサーの由来

さてこのポルトガレッサーという変わった名称の由来ですが、16世紀ポルトガルで発行されていた、ポルトゲースという大型の金貨を模倣して作られたことから、この名で呼ばれるようになりました。当時のハンブルグは神聖ローマ帝国から自治権を与えられており、金融や芸術、商業の中心地のひとつでした。ポルトガレッサーはハンブルグに設立された銀行が、株主に対して配当として配ったものです。その種類や発行枚数についての記録は見当たりませんが、10ダカットサイズのもので、一年号当たり僅か20枚程度ではないかといわれています。本コインのような10ダカットタイプのもの以外にも、5ダカットタイプ(1/2ポルトガレッサー)、2.5ダカットタイプ(1/4ポルトガレッサー)もありますし、試作と思われる銀製や錫製のものもあります。ちなみに銀貨タイプのものでも、めったにお目にかかれるものではありません。

ポルトガレッサーは通貨として作られたものではありませんが、ヨーロッパの諸都市では通貨として通用していたという記録もあり、したがってやや摩耗が進んだ個体もあります。状態は総じて良いものが多いですが、未使用状態のものでも、ヘアラインが目立つ個体が多いように思います、きっと歴代の所有者がせっせと磨いてきたからではないでしょうか。
したがってヘアラインが少ないものはより希少です。

ポルトガレッサーの価値と今後の見通しについて

最後にこのコインの価値についてです。上記のようにポルトガレッサーは鋳造枚数が極めて少なく、したがって高値で売買されてきました。近年では同地域で作られたダカット同様にデザインの美しさが好まれ、相場はさらに上がりつつあります。世界のオークションにおける過去の履歴を見ますと、例えば2005年あたりで200万円ほど、2013年あたりで500万円(いずれも未使用品、落札者の総支払額)と徐々に値を上げてきており、最近の売買事例では未使用品が1000万円を超える例もでてきました。直近オークションの事例では、10月13日に開かれたオークション・ワールド(国内です)において、1679年に作られたこの半分のサイズ(1/2ポルトガレッサー)が、落札者の総支払額ベース383万円で落札されております、なお状態はMS61(準未使用)でした。

このコインのデザインや希少性に惹かれる愛好家がおりますし、今後新しくコイン収集に参入する富裕層にとっても、おそらくこのコインは格好の収集対象になるのではないでしょうか。価格面からも、例えばイギリスの5ギニーや希少5ポンド(「ウナ&ライオン」や「ジョージ4世」)に比べ割安感があり、長期で持つにふさわしい銘柄ではないかと思います。