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Stories of coins and color stones

アンナンの将来性に注目

2018年1月

今回はアンナンのコインについてお話しします。
アンナンってお聞きになっても、大概の方は「それどこの国」って感じではないでしょうか、アンナンという国はもうありませんが、まあ大雑把にいって今のベトナムといっていいと思います、政権としての連続性はありませんが、国としてアンナンと今のベトナムは、途中フランスによる植民地支配をはさみながらも連続しているといっていいでしょう。

ですからアンナンの文化や芸術、歴史などは今のベトナムに引き継がれているわけです。実はこのこととコインは無関係ではありません、まずアンナンのコインで注目すべきは、コインに漢字が使われているという点です。以下のコインをまずご覧ください。

(アンナン、1841-1847年にかけて作られた紹治通宝5銭銀貨、向かって左が表面、右が裏面)

ご覧のように表面には「龍雲契会」裏面には「紹治通宝」と漢字で書かれています、今のベトナムでは漢字は使われませんが、アンナン時代は中国文化の影響が強く、わが国や韓国同様に漢字が使われていました、ちなみに表面には龍の図柄が描かれていますが、これは王様の象徴で、これも中国文化の影響を受けています。このようにコインを通して私たちは、当時のベトナムの文化や社会に触れることができるわけです。

さてここからはコインのお話しです、上記でサラッとアンナン5銭銀貨の写真をお見せしましたが、この写真のコインは実は大変稀なコインなのですよ、どこが稀かといいますと、まず穴が開いていないところです、「穴とはなんだ」とお思いの方のために、穴が開いたアンナンのコインの写真を以下紹介させていただきます。

(同じく「紹治通宝7銭銀貨」の穴あきコイン)

こんな感じです、このコインは庶民が一般に使われていたものではなく、王様が臣下に与えた叙勲用のコインです、実際に通貨として使用された可能性もなくはありませんが、おそらく多くの場合勲章のような用い方をしたのではないでしょうか、勲章としてもらった側は写真のように上下に二つの穴をあけ、ここにひもを通して首から下げたわけです。このような経緯もあり、アンナンの金貨銀貨で穴の開いていないコインは稀で、僕の印象では市場で売りに出てくるコインのうち6割は穴あきです。

穴開けを免れた幸運なコイン達にも、次のハードルが待っています。アンナンのコインは作られてからすでに150年以上たっており、その間多くのコインは磨かれたり洗浄されたりしてきました、最近でこそヨーロッパのコイン文化が入り、洗浄や磨きは価値を下げると忌避されていますが、東洋のコイン文化は違いました。銀さびや汚れの付着はコイン美しさを損なうものと考えられ、むしろ積極的に磨きや洗浄を行い続けてきたわけです。その結果せっかく穴あけを免れたコインであっても、大半の個体は何らかの手が加えられており、鑑定会社にグレーディングを依頼すると、以下の個体のように数字がつかず、Detail表記がついてしまうのです。

(「紹治通宝7銭銀貨」の鑑定済み穴ナシコイン、ただしご覧のように数字はつかず、Detail表記がついています、Detailというのは「詳細に見れば欠点あり」程度の意味で、この個体の場合Surface Hairlineとあり、これは「表面に髪の毛状の細かい傷あり」という意味です、コインを磨くとこのようになってしまいます)

穴あきコイン、Detail表記コインの価値は?

ではこのように穴があけられたコインや、Detail表記のコインの価値は、いったいいかほどなのでしょうか。実はアンナンコインは数多く残っていません、本稿冒頭でアンナンとベトナムの間にフランス領時代があると申し上げましたが、19世紀後半にアンナンを植民地化したフランス軍は、第二次世界大戦後ベトナムを放棄したときに、大半のコインを持ち出したその後溶解したといわれています、ですからベトナムはもちろん、フランスにおいてもアンナンのコインはほとんど残っていません、そのような理由からたとえ穴が開いたコインですら希少品で、7銭銀貨なら一枚15万円はくだらないでしょう。わすか数年前まではゲテモノあつかいでした。

穴の開いていないコインは当然それより高く、例えば先週大阪で開かれたコインオークションでは、穴の開いていない鑑定会社のケース入り(Detail表記)7銭銀貨ですら20万円台なかばで競り落とされました。これも数年前なら10万円前後で買えたものです。

同オークションでは(本稿冒頭でご紹介したような)数枚の数字付きコインが出品されましたが、それぞれ以下のような価格で落札されています。

  • 明命通宝7銭銀貨(1833年)NGS社MS62鑑定 18万円⇒78万円
  • 明命通宝7銭銀貨(1834年)NGS社AU58鑑定 15万円⇒41万円
  • 明命通宝一両銀貨(1841-47年)NGS社MS61鑑定 35万円⇒175万円
  • 嗣徳通宝3銭銀貨(1848-83年)PCGS社MS62鑑定 25万円⇒43万円
  • 紹治通宝7銭銀貨(1841-47年)NGC社MS61鑑定 12万円⇒47万円

注1)落札者は上記価格に10.8%のオークション手数料を合わせて支払います

注2)金額の左側数字はオークションの開始価格、右側金額は落札額

ご覧いただいてお分かりのように、3銭から7銭銀貨で40万円台、大型の1両銀貨に至っては100万円台の後半で、すでに世界の高額金貨の仲間入りを果たしつつあるといえるでしょう、以前の相場を知っているひとからみれば疑いたくなるような数字です。なお同オークションでは金貨も出品されましたが、以下のように結果となっています。

  • 嗣徳通宝7銭銀貨(1848-83年)PCGS社MS61鑑定 500万円⇒500万円
  • 嗣徳通宝8銭銀貨(1848-83年)PCGS社MS63鑑定 500万円⇒670万円

2枚目の8銭金貨はオークション会社への手数料を合わせるとなんと740万円以上です、先ほどの銀貨とあわせ「アンナンのコインもここまできたか」と感慨深いものがありますが、今後のアジア経済やベトナム経済の成長、さらに中国文化圏コインへの中国人の進出など考えると、「まだまだ本番はこれからだ」という確信のような気持ちがあります。以前からアンナンコインを推奨してきた僕としては、読みが当たってうれしい半分、残り半分はますます競合が増え買いにくくなったなという不安な気持ちもあります。