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Stories of coins and color stones

明治の一円玉のお話し

2018年4月17日

みなさんこんにちは。

なんでも今年は明治150年だそうで、それにちなんで
明治維新を振り返る機会が増えた気がします。

そこで今回は明治初年当時の貨幣事情について、
少し考えてみたいと思います。

明治に入って新政府は通貨体系を一新しました、
それまで使っていた小判や銭などを廃止し、
新しい世界標準のまん丸い通貨を導入したわけです。

江戸幕府が外国と結んだ不平等条約の改正を訴えるため、
あるいは欧米との貿易で不利益を被らないためにも、
新政府は世界に通用する通貨体系を導入する必要があった
のでしょう。

新通貨制度の制定に伴ってコインも一新されました。

江戸時代に金、銀、銅が混在していたのを改め、
高額コインは金貨、中額コインは銀貨、庶民が使う低額な
コインは銅貨というように、コインはその額面によって
材質の使い分けが行われたわけです。

金銀銅3種のコインの中で今回お話ししたいのは、
円銀(えんぎん)と呼ばれる一円銀貨についてです、

一円銀貨が最初に作られたのは、明治維新から少し遅れ、
明治3年になってからのことです、コインのデザインや
鋳造機の購入、制度の整備や告知など、準備期間が必要だった
からでしょう。

当時(したがって明治3年)の一年玉の諸元について
紹介させていただきますと、

例えば

  • 重量:約27グラム
  • 直径:約38.5ミリ
  • 材質:銀90%、銅10%
  • 鋳造枚数:約368万枚

などとなっております、
メルマガでご覧に入れられないのが残念ですが、
当時の一円玉はずいぶんと立派です。

感覚としては現在の1オンス金貨のサイズで、
今の一円玉に比べるとマグロと小魚ほどの違いがあります。

新しい通貨法によって、江戸時代の1両が1円になると同時に、
その1円=1ドルでスタートしていますが、
当時の1円は今の価値に直すと2万円ほどの価値を
持っていたようです。

あれから150年。

当時皆さんのご先祖様が手に入れた1円銀貨をタンスにしまい、
その1円銀貨を今皆さんが見つけたとすればどうでしょう。

その一円玉は、
いったいいかほどの価値があると思われますか?

もちろん状態にもよりますが、仮に未使用状態のまま
明治3年発行の円銀が見つかったとしたら、その価値は
10万円ほどになるでしょう、オークションに出品し、
オークション会社の手数料10%が差し引かれたとしても、
9万円ほどは皆さんの手元に残る勘定です。

上記のように明治初年当時の1円は現在の2万円ほどの価値ですから、
ご先祖様は正しい選択をしたといえるでしょう。

ではご先祖様が、他の資産に交換してタンスに
しまい込んだとすればどうでしょう。

例えば金です。

田中貴金属のサイトを見れば、明治初期の金の価格は
1グラムあたり67銭とあります、したがって当時の1円で買える
金の重量は約1.49グラムでした。

これに対して現在の金の買取値はグラムあたり税込み4900円ほどです、
従ってタンスから見つかった金の売値は7300円ほどにしか
ならない勘定です。

意外と少ないですね。

紙くずになるよりずっとましですが、これでは
インフレや社会の変動に勝ったとは言えません。

おそらく金はこの150年の間に、地中からずいぶん多く
掘り出され、価値が薄まってしまったからでは
ないでしょうか。

ではご先祖様が銀行に1円を預け、その預金通帳をタンスに
しまっておけばどうなったでしょう。

以前僕はメルマガでこれに似たお話しをさせていただいた
ことがあります。

興味のある方は以下弊社公式サイトをご覧ください。

http://www.ginzafp.co.jp/info/160204.html

上記メルマガは、1915年にある新潟の銀行が販売した
「100年定期預金」が、100年後の2015年に満期になった
事例について書いたものです。

今回の設定は上記と似ています。

仮に当時150年満期の定期預金があったとすればどうでしょう、
上記100年定期と同じく年利6%で回ったとしても、
当時の1円は満期時点で6250円にしかなりません。

注)1円×1.06の150乗≒6250円

年利6%といえば大変な高利回りですが、
それでもインフレや戦争などによる通貨価値の激変に
勝てなかったことがわかります。

ではご先祖様がある会社の株を買い、
その株券をタンスにしまっていたらどうでしょう。

運よくその会社が150年経ったいまでも生き残っていれば、
大変な利益を得ることができるでしょうが、150年生き残った
会社はそう多くはありません。

しかも日本に株式市場ができたのは1878年だそうで、
明治初年あたりには市場で株を買うことはできませんでした、
相対(あいたい)で株を買うことはできたかもしれませんが、
よほどの資産家でなければ株式の購入はできなかった
のではないでしょうか。

債券投資も同様です、しかも発行体の破綻や制度そのものの連続性
が維持できない場合も多く、ペーパーアセットの世界で
超長期運用することの難しさがよくわかります。

今回のお話は明治150年にちなんだ超長期の設定ですので、
少し現実感が乏しいかもしれません。

それでも先週の「開かずの金庫」の話と合わせ、
現物資産と超長期投資の関係を考えていただく機会として
今回のお話をさせていただきました。

ご参考までに、ご先祖様が一円銀貨以外のコインを
買った場合の150年後の成果は以下の通りです。

  • 一円金貨を一枚買った場合→45,000円ほど
  • 2銭銅貨を50枚買った場合→230万円ほど
  • 1銭銅貨を100枚買った場合→270万円ほど

注)いずれも未使用品の相場、1銭銅貨と2銭銅貨の初年号は
明治6年、したがって本例ではいずれも明治6年銘コインを
購入したと仮定します

では今回はこのへんで。