スマートフォン版に切り替える

Stories of coins and color stones

質的分散と不動産

2018年7月26日

今回は質的分散と現物資産というテーマで、
少しお話ししたいと思います。

資産運用に分散が重要だということは、このレポートをお読みの方はご存知だと思いますが、本当の意味での分散は決して簡単ではありません。

本当の意味での分散とは

例えば日本株とアメリカ株の組み合わせ・・・確かに分散はしていますが、これで本来の分散の目的は達成できるでしょうか。ではこれにヨーロッパ株やインド株を加えてみるとどうでしょう。確かに日本株に集中するよりはマシかもしれませんが、その効果は決して十分なものではないでしょう。

ではここにアメリカ国債を加えてみるとどうでしょう。確かに分散効果は高まりますが、期待通りの効果が得られるかどうかはわかりません。2月の米国債ショックの時のように、米国債が売られながら株も下がるというケースは珍しくありません。さらに私たち日本人から見れば為替の変動も加わります。金融ショックからリスク回避行動の流れが生まれ、円が買われるという定番のケースでは、手持ちの外貨建て資産の価値は下がります。首尾よく株安・債券高になったとしても為替で相殺となりかねません。

さらに株と債券では値動きの幅が違います、イメージとしては債券の変動幅が1なら、株価のそれは7くらいでしょう。したがって両者が完全逆相関だったとしても、株の下落を債券でチャラにするために、私たちは株1に対し債券を7ほども持たなくてはならない勘定です。

リタイアされた方で、すでに株をすべて処分された方もおいでではないでしょうか。そのような方にとっては上記のような懸念はないかもしれませんが、リスクとリターンのバランスから考えてみるとどうでしょう。米国債には大きな為替変動のリスクを伴います。それでも以前のように米国債の利率が5%もあれば、為替の変動はさほど気にはならなかったかもしれません。が、残念ながら今や米国の長期債の利率は2.8%以下です。この2.8%を取るために為替の変動を我慢しなくてはなりませんが、残念ながら金利が下がっても為替の変動率は変わりません。

少なくとも15年前の5%金利時代と比べれば、私たち日本人にとって米国債のリスク・リターンのバランスは悪化しているといわざるをえません。分散効果をえるための投資が、かえってリスクの偏りを招く可能性に要注意です。

少しお話が長くなってしまいましたが、上記のような点を考えるにつけ、株や債券、あるいはREITやヘッジファンドまで広げたところで、しょせんペーパーアセットの世界では、分散効果は十分得られないことがわかります。特に大きな金融ショックが起きれば本当の意味での質的分散の重要性を、私たちは再認識することになるでしょう。

質的分散の選択肢は

上記のようなことからも、中途半端な分散は効果が薄く、必然的にペーパーアセットに対して一定の現物資産(Tangible Assets)の組み入れが重要なことがわかります。ただし私たちが買える現物資産の種類は決して多くはありません。

では私たちが現物資産を組み入れる場合、
どのようなものを対象にすればよいのでしょう。

確かに僕はコインが好きですが、皆さんすべてにお勧めするわけではありません。コインはペーパーアセットに対する価格相関性という意味で、大きな長所を持っていますが、一方で持っていても一円のインカムゲインを得られないという短所もあります。資産の保全には絶大な効果がある一方で、ライフプランの観点から生活費を得るための資産にはなりえないわけです。

カラーストーンや貴金属も同様です、カラーストーンは美しく、身に着けることもできます。その意味で心の配当を得ることはできますが、それだけで私たちは生活できません。

では質的分散効果とインカムゲインを同時に得る金融資産はないのでしょうか。僕が知る限り、唯一のそれは不動産です。

国内の不動産は割高か

僕がこの仕事を始めて間もないころ、日本橋のワンルーム・マンション、築3年(超築浅)物件を1500万円でお買いになったお客さんがいました、手取りベースの収益率は6%ほどあったと記憶しています。ホントいい物件をお買いになったと思います、その方に久々にお会いしたら大変感謝されました、僕もとてもうれしかったです。あれから12年がたち、その物件はいまでは築15年になりましたが、今では2000万円以上の値が付きます。計算してみるとその方はこの12年で1000万円以上のインカムゲインと500万円以上の含み益を得られたことになります。

これは一つの成功例ですが、この12年間都内のワンルーム・マンションは値上がりを続けました。2008年のリーマン・ショック時には少し下げたかもしれませんが、その間も賃貸需要は旺盛で、ほぼ一定の賃貸料収入をすべてのお客様にもたらし続けたはずです、僕自身も数件のオーナーですので、その間のお客様の心情はよくわかります。株やREITなどでは(一時)手痛い目にあいましたが、不動産はコインやカラーストーンと並んで僕の心のよりどころだった時期もあります、つまり精神的な効果と金銭的な効果の両立で、理想的な分散効果を得ることができましたわけです、他の方もきっと同様ではなかったでしょうか。

では今後はどうなのでしょう。

僕はお客さんから時々「都内に不動産は高くなりすぎていませんか?」とか「オリンピックが終わると相場が終わりますよね」的な質問をよく頂きますが、僕の考えは少し違います。

不動産と並ぶミドルリスク・ミドルリターンの金融商品で、かつ定期的なインカムゲインをもたらしてくれる金融資産は、ほかにどんなものがあるのでしょうか。なかなか見当たらないのですが、唯一債券をあげることができるでしょう。では都内の不動産と日本国債を比べるとどうでしょう。ご存知のように現在日銀の低金利政策の影響で、例えば10年物日本国債の利率はほぼゼロに張り付いたままです。30年債まで時間軸を伸ばしても、日本国債(30年物)の利率は0.75%に過ぎません。これに対して都内ワンルームはどうでしょう。ワンルームに満期という概念はありませんが、それに似ているのは稼働年数ではないかと思います、一般にワンルームマンションの稼働年数は60年といわれますが、少し短めに50年としましょう、仮に私たちが築15年の築浅物件を買うとすれば、むこう35年は十分稼働してくれるはずで、これは先ほどの30年債とほぼ同等です。

余談ですが不動産というのは債券に似ていて、買った瞬間に収益率がほぼ決まるという特徴を持っています、もちろん将来家賃の相場が下がったり、空室が生じる可能性もありますが、仮にそのような事態になれば東京の将来は暗いでしょう。東京がそのような状態になってしまえば、おそらく日本の将来はさらに深刻で、わが国の財政破綻やハイパーインフレ、超円安なども同時に心配しなくてはなりません。この場合、不動産のことよりむしろ年金や円預金、医療費の問題などに対する根本的な発想の転換が必要です。当然そのような可能性もありますが、だからこそ現物資産を保有し、自らの資産を防衛するわけです。ですから日本の将来を悲観して、国内不動産を避けるという発想には矛盾があると僕は思います。

話をもとに戻しましょう。

日本国債30年物の金利は0.75%、これに対して都内ワンルームマンションの手取り収益率は4.2%ほどもありますので、不動産は国債に比べ3.4%ほどの収益のプレミアム(上乗せ)が見込めるわけです。このプレミアム部分は不動産の割高感を図る指標になります、例えば東京との都市間競争の対象になる香港やシンガポール、上海などの不動産の収益率はどうでしょう、これら近隣の都市の収益率はいずれも2%をやや下回る水準です、一方で超長期の金利をみると、中国(30年債)⇒4.2%、シンガポール(30年債)⇒2.7%、香港(15年債)⇒2%となっており、むしろ不動産の収益率を債券の利率が上回っていることがわかります。これはおそらく不動産バブルだと思います。これに対して東京は不動産の収益率が3%以上も債券の収益率を上回っていますので、少なくとも近隣諸都市に比べれば正常な姿ではないかと思います。

以上は他の都市と比べた場合ですが、国内の不動産のみに焦点を当てた場合、本当に債券との比較で割安感があるのでしょうか。そういう観点で今度は向こう35年間にわたる国債と不動産のキャッシュフローの比較をしたいと思います。それぞれ2000万円購入したとして比べてみましょう。

30年日本国債の場合

金利収入:2000万円×0.75%×80%(20%源泉分離課税)×35年=420万円--(1)
債券本体部分:2000万円--(2)
合計:(1)+(2)=2420万円

ワンルームの場合

家賃部分:2000万円×3.7%(注1)×95%(注2)×35年=2460万円--(1)
本体部分:1000万円-30万円(注3)=970万円--(2)
合計:(1)+(2)=3430万円

注1)長期的な手取りの収益率を3.7%とします、現在のところ4.2%程度が平均ですが、保有期間中の修繕や空室、老朽化に伴う家賃の低下など考慮しています。

注2)不動産所得は他の所得と合算して総合課税の対象です、リタイアメント層にとって、主な収入は年金になりますから、実行手取り率95%程度と考えました。

注3)築50年目で売却と想定しています。一般に築15年程度の物件の場合、土地の持ち分は1000万円ほどになると想定できます、したがって築50年時点の物件価格は、この1000万円に収れんすると考えられます。30万円さしひいたのは仲介費用等です。

上記のようにずいぶんと両者のキャッシュフローの差があることがわかります。国債と比較しても少なくとも不動産の割高感はないことがわかります。

不動産の固有のリスクと優位点

最後に不動産の固有のリスクや優位点についてみてみたいと思います。まずリスクからです、筆頭に挙げられるのは地震や津波など天災ではないでしょうか。世の中には絶対安全な金融資産はありません、日本国債を買えばわが国の財政破綻が気になってきますし、株を買えば会社の倒産が心配になります。だからこそ資産の分散が必要なわけで、不動産を買うということは地震や津波などのリスクを甘んじて受けることを選択したとこになります。ただし過度な心配もまたよくありません、都内の不動産は東日本大震災でほとんど被害を受けませんでしたし、熊本や神戸の震災でも、1984年の耐震基準以降のマンションは、大きな被災を免れています。さらに万一の場合でも土地持ち分は維持されるという点は、一つの気休めの材料にはなるでしょう。

東京の経済的な地盤沈下や、日本の同様の問題も気になるところではありますが、先ほども申しましたように、かりにそのような近未来が待っているとすればどうでしょう。その場合、不動産以前の問題としてわが国の財政破綻や、ハイパーインフレ、超円安などがセットで起きることになるわけです、一時的に社会の混乱は避けられませんが、いずれリセットされて経済は正常化にむかうことは歴史をみれば明らかです。大切なのは危機前の自分から、どうやって正常化後の自分に資産を減らさず渡してあげるかで、その点現物資産は理想的な資産だといえるでしょう。

長所をもう一つ上げるとすれば、相続における優位点ではないでしょうか。ワンルームマンションなど賃貸物件は、相続税の計算上たいへん有利に設定されており、都内のワンルームマンションなら時価に対し30%程度まで、相続税計算上の価値を圧縮できます。

一方で流動性の欠如には注意が必要です、幸いいまのところ比較的短期間で現金化できますが、それでも売りに出してから3か月程度は見ておかなければなりません、しかも仲介手数料として3%ほどのコストも発生いたします。ライフプランから必要とする流動性を確保したうえ、あまったお金で購入することが重要ではないでしょうか。