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Stories of coins and color stones

国力とコイン

2017年9月

ヨーロッパの金貨を知っている方なら、多分みなさん不思議に思われるのではないでしょうか。

古代ギリシャやローマの時代、紀元前の4世紀あたりから紀元2世紀あたりまで。この期間の金貨はデザイン、重量共に重厚感があり、みていて飽きません。まさに金貨の黄金時代とよいでしょう。下のコインはプトレマイオス朝エジプトという国で、紀元前3世紀に鋳造されたオクタドラクマ金貨ですが、このコインは28グラムほどもある古代最大の金貨です。

(プトレマイオス朝エジプト、オクタドラクマ金貨、紀元前3世紀、EFで280万円ほど)

写真でも素晴らしさは伝わると思いますが、実際にみると圧倒的な重厚感と輝きがあり、とても2000年以上前に作られたコインとは思えません。このコインの現在の相場はEFクラスで280万円ほどですが、ぼくは大変安いのではないかと思っています。ちょうど先ほど過去のオークションカタグ(銀座コインオークション)を読み返していたのですが、例えば平成20年に開かれたオークションのカタログを見ますと、例えばイギリスの有名な金貨「ウナ&ライオン」が680万円で落札されています。このコインは未使用ですので、おそらく今オークションにかかれば3000万円以上の値が付くでしょう。また同じオークションでイギリスのジョージ4世の11枚プルーフコインのセットが出品されていますが、落札価格はたったの300万円です。このコインセットのうち、5ポンド金貨のみが先月国内で開かれたオークションに出品されたのですが、落札価格はなんと2480万円でした。考えてみればジョージ4世やビクトリア女王の時代のイギリスも国力が充実しており、世界中から集めた金で重厚で美しい金貨をたくさん作りました。そのような金貨がいま脚光を浴びる理由はわかるような気がしますが、なぜそのお金が古代のコインに入ってこないのでしょう・・・ちょっと不思議な気がするわけです。

さてお話の続きです。古代からから時代が下りますと、残念なことに金貨はドンドンみすぼらしくなってゆきます、デザインは単調で平凡になり、形状は薄っぺらく重量も軽くなってしまうのです。コイン収集の世界でもこの時代のコインは人気がなく、あまり値が付きません。

ヨーロッパにおける二度目の金貨の黄金時代は、スペインやポルトガルが主導した大航海時代ですが、それまで1600年以上も待たなければなりません。

さてさて上記2度にわたる金貨の黄金時代を比べますと、面白い共通点を見つけることができます。まず古代ですが、マケドニアから出たアレキサンダー大王によって、地中海と中東にまたがる強大な王国が成立しましたし、その後はローマ帝国が北アフリカと全ヨーロッパにまたがる強大な帝国を築きました。

広大な版図から集めた富の貯蔵手段として、大型の金貨は必要不可欠なものではなかったでしょうか、同時にその広大な版図から豊富な金が産出した点も、金貨の隆盛を後押しすることになったのでしょう。このような強い国家の成立と金貨の重厚化には、密接な関連があるように思います。

16世紀に至り、ヨーロッパの西隅にあった2つの小国が、持ち前の冒険的気質によって新大陸に進出し、にわかに国力を拡大しました。彼らはかつてのローマ帝国時代のように富の集積をすすめる、使用する金貨は質量ともに二度目の最盛期を迎えます。例えば下のコインはブラジルで1726年に作られた20,000レイスという金貨ですが、重さはなんと53グラムもあり現代以前における南米最大の金貨です。

(ブラジル20,000レイス金貨、現在の相場はEF+で110万円前後)

肖像は描かれていませんが、大変人気のある金貨です。価格はEF+程度で110万円前後と割安感があります、今後の相場上昇が期待できる金貨ではないでしょうか。

このような強い国家の成立と金貨の重厚化には、密接な関連性があるように思いますし、コイン収集を投資として考えた場合にも、そのような着眼点は面白いのではないでしょうか。