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Looking for valuable coins

金を買うか、コインを買うか

2023年4月30日

本レポート冒頭のコラムで、「基軸通貨ドルの信頼低下問題⇒実物資産の価値上昇」というメカニズムについてお話ししました。

では一歩進め、私たちが実物資産に投資する場合、どのような選択肢があるのでしょう。今回はこの点について少し考えてみたいと思います。

第一の候補は金(Gold)です、これに銀やプラチナを加えてみてもいいかもしれません。

でも例えば銀の現物などは最近世界的に人気化しており、1オンスサイズの地金型銀貨が、31ドルほどの値段で売買されているようですし、1キロのバーなら1000ドルほどで売られていたりもします。ちなみに現在の銀価格は1オンス=25ドルほど、1キロなら800ドルほどです。小口の現物需要が強く、市場の現物がスポット価格を上回っているのだと思います。今はやっていませんが、僕は10年ほど前、都内の貴金属商で銀のバー(といっても弁当箱のように重いヤツです)を買っていたことがあります、すでに当時から銀の地金は在庫が少なく、入荷ソク完売の状態でした。なので入荷のタイミングを聞いておき、入荷と同時に注文を入れないとなかなか買えませんでした、おそらくですが現在はもっとタイトになっていると思いますし、当局の指導もあって現物の売買は難しくなっているようです。

すみません、少し話がそれました・・・・

さて本題の「金を買うかコインを買うか」というお話です。最初にここ20年ほどの上昇率を比べておきましょう。

金貨と金(Gold)の価格上昇率の比較

コインは銘柄によって希少なものから、希少性がなく金の地金と大差ないものまでピンキリです。20年ほど前の2000年時点のお話をしますと、例えばチェコで1900年代に発行された聖ヴァンセラセスを描いた10ダカット金貨は、当時のオークションでは15万円ほどで落札されていました。

(チェコ1932年10ダカット金貨)

重さは34グラムほど、金の品位は99%ほどですから、金の含有量は33グラムほどです。当時の金相場は1グラム=1100円ほどだったので、この金貨の地金価格は3.6万円ほど(安い!振り返ると信じられません)でした。一方でこの金貨の当時の価値は上記のように15万円ほどでしたから、その差額である11.4万円ほどが希少価値ということになります。

あれから20年が経ちましたが、現在この内訳はどうなっているのでしょう。

今このコインの未使用クラスがオークションに出てきますと、おおむね300万円から500万円ほどで落札されます(注)

注)もちろん状態のよって随分と開きがあります、先日国内で開かれたオークションでPCGS-MS67が出てきましたが、オークション会社手数料込み落札価格は約840万円でした、上記300万円-500万円はMS64程度のイメージです。

お話を簡単にするため、真ん中をとって400万円としましょうか、現在の地金価格は1グラム=9400円ほどですから33グラムなら31万円ほどになります。したがってこのコインの価格を分解すると

  • 地金価格=31万円
  • 希少価値=400万円-31万円≒370万円

となります、さらにそれぞれを20年前の比べますと

  • 地金価格:3.6万円⇒31万円ですから、この間、約8.6倍の値上がり
  • 希少価値:11.4万円⇒370万円ですから、この間、約32.5倍の値上がり

となりました。つまりこのコインは、地金価格の値上がりの4倍ほどのスピードで値上がりしていることになります。

もちろんコインは銘柄によって値上がり率が異なります。

さきほどのチェコの10ダカットは、比較的大きく値上がりしたコインですが、別段に選別して紹介したわけではありません、ヨーロッパの金貨は大型小型にかかわらず、状態の良いものならこの程度の値上がりは普通です。イギリスの5ギニーはじめ5ポンドも随分と値上がりしています、中南米はイマイチではありますが、それでも軽く地金価格の上昇率を上回るようになってきました。銘柄は少ないですが、中国はじめアジアの金貨の値上がりはチェコの事例を上回ります。

つまり全体を見ても、この20年はチェコの金貨のように、コインは地金価格の上昇率をはるかに超えて値上がりしているわけです。

なぜコインは地金価格以上に値上がりしているのか

では、なぜコインは地金価格の上昇以上に値上がりしているでしょうか。

僕は3つあると思います。

まず金や銀は今でも地中からたくさん掘り出されている点です、地表近い鉱脈はあらかた掘りつくされ採掘量は減ってきていますが、それでも新しい技術が開発されつつあります、海底の熱水鉱床からの採掘なども、長い目でもいれば採算ベースに乗るかもしれません。金はお札と違って増えにくい性格を持ってはいますが、今でも採掘され、それなりに価値の希薄化が起きていると考えておくべきでしょう。

二つ目は、ヒトはコインを買うとなかなか手放さない点です。

コインは金と違って売買が面倒です、これは欠点であると同時にコイン価格の下方硬直性(注)につながっていると思います。

注)いったん値上がりすると値下がりしにくい特徴

もちろんアメリカのコインバブルのような事例はありますが、そのような例はまれで、コイン収集家はいったんコインを買うとめったなことでは売りません、多くの場合、コインに対する愛着がそうさせるのでしょう。それだけに市場に出てくるコイン少なく、値上がりしやすいのだと思います。

三つめは、世界的にみられる富裕層の拡大傾向です。

近年世界で起きているのは富裕層の拡大と貧富の格差拡大です。コイン収集は、ある意味お金持ちの遊びで、この層が拡大すれば必然的にコインの相場は上がります。さらに最近では遊び以外の目的で、コインを現物資産として買う富裕層も出てきました、本レポート冒頭で中央銀行の資産分散のお話をしましたが、昨今のお札大量印刷を懸念し、現物資産におカネを移す傾向も見られます。現物資産と趣味の対象という性格を併せ持ったコインを、金(Gold)より好む富裕層が増えてきたように思います。

以上、近年コインが地金価格以上に値上がりしている理由を見てきましたが、おそらくこの傾向は今後も続くと思います。僕自身コインの収集家でもありますが、コインを趣味としてだけ見ているわけではなく、本音を言えばこのような資産運用としての目的も入っています。

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