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インドコイン通史-4
2024年4月30日
今月もまたインドのコインについて語りたいと思います、ここまで3回にわたりクシャン朝、グプタ朝、中世ヒンドゥー諸国のコインと進めてきましたが、今回は中世インドの大帝国、ムガールのコインをとりあげます。
ムガール帝国のコイン
よく知られているように、ムガールの語源はペルシア語でいうモンゴル(ムグル)で、その発祥は現在のウズベキスタンあたりです。初代バーブル(在位1526-1530年)は、小さな地方政権の君主の子として生まれ、断続的に北インドに侵入しました。念願かなって北部インドを制圧するのは1526年で、この年をもってムガール帝国の成立としています。
バーブル以降、2代目フマーユーン、3代目アクバル(大帝)、4代目ジャハンギール、5代目シャー・ジャハーン、6代目アウランゼーブと続き、その版図を徐々にインド南部に広げてゆきました。
版図が最大になったのは6代目のアウランゼーブ時代ですが、同皇帝が亡くなった1707年以降、インド内部の反乱やイランからの侵攻、さらにはイギリス東インド会社の台頭などにより、ムガール帝国は急速に衰退してゆきました。
(ムガール帝国の版図:「世界の歴史まっぷ」より転載)
数行の中にムガール時代を圧縮するならこんな感じになりますが、コイン史という観点で見れば、ムガール帝国時代は貨幣経済の発展期でもありました。この時代の世界をみると、16世紀にはスペインの南米植民地から金・銀が大量に流出しましたし、日本でも採掘技術の進展から大量の銀が採掘されました、そのような金銀はヨーロッパに流れ込み、さらに交易を通したインドへも流れ込みました。ムガール帝国が銀による納税を義務付けた点も、この時代に多くの金銀貨が発行された要因の一つでした。
そんな事情もあり、ムガールのコインは今でも結構たくさん残っています、特に市場に多く出てくるのはジャハンギール以降の金貨(モハール)や銀貨(ルピー)です。
まずはモハールからです、下のコインはムガール時代を代表する金貨、モハールです。発行されたのは6代目のアウランゼーブ時代(在位、西暦1658-1707年)の1662年です。ペルシア語なので意味不明ですが、オモテには2行詩「輝く太陽のように世界中に貨幣を打ち作った、シャー・アウランゼーブ・アーラムギール」、ウラにはアウランゼーブの即位年と鋳造された都市名が書かれているそうです。
(ムガール帝国、アウランゼーブ時代のモハール/「ときいろ」サイトより)
アウランゼーブは50年近くも帝位にあったため、多くのコインを残していますが、それでもこのコインは決してありふれた金貨ではありません。それでも未鑑定のEF程度なら、ほんの10年ほど前まで地金価格で買えたものです、僕は都内のコイン商でこのコインを4万円ほどで買った記憶がありますが、あれはたしかリーマン・ショックの少し前です。当時インドは一人当たりGDPが1000ドルそこそこの極貧国で、コインだけでなくインド株ですら、よほど物好きしか興味を持たなかった時代のお話です。
それが近年の金価格の上昇やインド経済の大発展への期待から、最近この銘柄も随分と値を上げてきました、オークション価格も急に値上がりしており、MS63程度のありふれた状態でも、最近は2000ドルほどの値が付くようになりました、手数料込みの総支払額ベースでは42万円ほどです、上の写真はNGC-MS65ですが、このクラスになると3000ドルは致します、総支払額ベースでは58万円ほどになります。
続いて銀貨ルピーを見ておきましょう。
ルピーはモハールほど値が張りませんが、それでも状態の良い個体は値を上げてきました、ひと昔前ならルピーなど「その他大勢の大部屋組」でしたが、インドコインの将来性に着目する人は多いようです。ルピーでも状態が良いMS65以上なら十分投資の対象になるでしょう。
(ムガール帝国、ジャハンギール時代のルピー/「ときいろ」サイトより)
上のコインはムガール帝国の第4代皇帝ジャハンギール時代(西暦1605-1627年)に発行された銀貨ルピーで、1626年に発行されたコインです。上記のようにルピーは数多く残っていますので、モハールほど値は張りませんが、それでもMS66程度の高状態なら18-20万円ほどが現在の適正相場です、今のところMS63/64程度の並み程度のコインは投資の対象にはなりませんが、いずれ値を上げてくるでしょう。
今回はインド史上最大の帝国ともいえるムガール時代のコインを紹介させていただきました、宗教的な理由で肖像は書かれていませんし、ペルシア文字なので私たちにとってはとっつきにくいコインです。
それでもインドの人たちはムガールのコインを、西洋諸国による侵略以前にインドを統治した帝国、ムガールへの郷愁をもって見ているのではないでしょうか。
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