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Looking for valuable coins

インドコイン通史-6

2024年6月30日

ここまで5回にわたりクシャン朝、グプタ朝、中世ヒンドゥー諸国、ムガール、イギリス東インド会社のコインとお話しを進めてきましたが今回は東インド会社の続きです。できれば今回はイギリス植民地時代のコインまで行きたいと思いますが、もしかしたら東インド会社で終わるかもしれません。

イギリス東インド会社時代のコイン、ビクトリア時代

先月は1835年に発行されたウィリアム4世時代の金貨(モハール)と、銀貨(ルピー)について書きましたが、今回は次の王様ビクトリア時代の金貨と銀貨です。

まずは金貨モハールからですが、ビクトリアのモハールは1841年に発行されていますが、オモテに描かれたビクトリアの肖像によって2種類に分類されます。

まずは前期のモハールですが、下の写真のようにビクトリアの顔がキツネのようにとんがっていることから「フォックスフェース」などと呼ばれることがあります。

(イギリス東インド会社発行、1841年のモハール「フォックスフェース」/弊社サイトより)

ビクトリアの顔に違和感があったせいか、早くも同じ年にマイナーチェンジしたモハールが発行されています、下の写真のコインです。

(イギリス東インド会社発行、1841年のモハール/「ときいろ」サイトより)

ご覧のように下のコインのビクトリアは、ホホが少しふっくらとして柔らかい表情です、発行数は「フォックスフェース」が(3鋳造所あわせ)約64万枚で、後期「ふっくら」ののうは約44万枚です。

上のように発行数に大きな差はありませんが、市場への出現頻度は圧倒的に「フォックスフェース」が少なく値も張ります。NGC社の鑑定実績もこれを裏付けており、「フォックスフェース」が145枚に対し、「ふっくらフェース」は582枚ですから、概ね1対4です。当時の記録を僕は見たことがありませんが、もしかしたら一定枚数が当局によって回収されたのかもしれません。

「フォックスフェース」のオークション相場をみると、今年(2024年)6月の国内オークションで、NGC-AU55がハンマープライス130万円(総支払額ベース143万円)という例がありますし、昨年9月の海外オークションで、PCGS-MS62が総支払額ベース400万円という事例があります。5年ほど前ならAU55クラスで50万円ほどが落札相場でしたので、このあたりからもインドコインの勢いを感じます。

「ふっくらほっぺ」のほうも最近の値上がりは顕著です。僕は2022年12月に、この銘柄のNGC-MS63を代行落札したのですが、当時の価格は(弊社手数料8.8%を除き)で288万円でした。その方の依頼で先日オークションに出品したのですが、落札価格は総支払額ベースで616万円でした。わずか1年半で2.1倍以上になった計算です。

なおウィリアム4世時代は2モハールと1モハールが発行されていますが、ビクトリア時代は2モハールの発行はありません。

注)正確にいうとビクトリアの2モハールは試鋳貨が作られ、ほんのわずかのみ残っています、2019年の国内オークションに2モハールの試鋳貨が出品され、総支払額ベース1320万円で落札されました。

続いて銀貨ルピーです、ビクトリア時代はウィリアム4世時代と同じく、以下4種の銀貨が発行されています。

銀貨
1ルピー
1/2ルピー
1/4ルピー

ここでは最高額面のルピーのみとり上げたいと思います、ルピーはモハールより1年早く1840年に発行されていますが、モハール同様、前期の「フォックスフェース」と後期の「ふっくらほっぺ」があります、オモテの肖像はモハールと同じですので、ここでは「ふっくらほっぺ」だけ紹介させていただきます。

(イギリス東インド会社発行、1840年のルピー/「ときいろ」サイトより)

モハール同様、市場への出現頻度は圧倒的に「フォックスフェース」が少なく、「ふっくらほっぺ」が10枚出てくれば、「フォックスフェース」がようやく1枚出てくるかどうかですし、「フォックスフェース」は状態の良いものも稀です。以前から僕は注意して「フォックスフェース」を探しているのですが、MS62クラスですら見つけるのは難しいです。「ふっくら」のほうはMS63が市場によく出てきますので、「フォックスフェース」の難易度がお分かりいただけると思います。そのわりに「フォックスフェース」の市場価格はそれほど高いわけではありません、昨年4月に香港で開かれたオークションに、NGC-MS63が出品されハンマープライス850ドル、総支払額ベースでは18万円ほどでした。

「ふっくら」のほうは、MS64クラスでも17万円ほどで落札できます、たしかに「フォックスフェース」は高いのですが、難易度を考えると割安感が強いと僕は思います。

すみません、紙数が尽きましたので、今回はここで筆をおかせていただきます、次回はインドがイギリスに植民地化に置かれて以降のコイン、いわゆる「イギリスインド=英印」時代のコインについて書かせていただきます。

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