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Looking for valuable coins

インドコイン通史-7

2024年7月31日

ここまで6回にわたりクシャン朝、グプタ朝、中世ヒンドゥー諸国、ムガール、イギリス東インド会社のコインとお話しを進めてきましたが、今回はイギリス領インドです。

イギリス領インド時代の金貨

イギリスの東インド会社は1858年をもって解散し、それ以降のインドはイギリスの直接的な支配下に置かれました、いわゆる「イギリス領インド」です。イギリス領インド(以下「英印」)時代の初期コインは、前時代すなわちイギリス東インド会社時代のコイン様式を踏襲して発行されました。金貨は前時代と同じ重さの1モハール(=15ルピー)が1862年銘で発行されていますが、ほかに10ルピーと5ルピーも発行されています。このうち正式な通貨として発行されたのはモハールだけで、5/10ルピーは試験的に発行されたものです。下の写真はモハールです。

(英印1862年銘も1モハール金貨、「ときいろ」サイトより転載)

2022年あたりから、この英印のモハールは人気化し、最近の相場はMS63がオークションで150万円ほどです、2021年以前なら同状態が60万円前後で落札できていましたから、随分と値上がりやものです。ただ一方で今年に入り英印モハールの値動きは止まりました、長い間僕はコイン相場をみていますが、市場ではこのような動きはよくあります。急に人気化したと思ったら、そのあと少しの値下がり期間があり、いつかまた爆発する・・・、こうやって長い間を見るとギザギザしながら値上がりする・・、こんな値動きを何度も見てきました、そうやってその国の経済成長に見合ったコイン相場が形成されてゆくのです。

上で僕は5ルピー金貨、10ルピー金貨にも触れましたが、上記のようにこの2銘柄は実際には使われなかったようで、試験的な製造にとどまりました。したがって市場に出てくることは稀なはずのですが、実際には5/10ルピー金貨のプルーフ貨はよく出てきます、そのようなコインはリストライクといって後世に作られたものです、前々回でも少しお話ししましたが、イギリス東インド会社と英印のリストライク貨には注意が必要で、第二次世界大戦以降、アメリカのコイン商によって作られた復刻(リストライク)貨が大半です。この時代の5ルピー、10ルピーも事情は同じで大半は後世に作られたリストライク貨です。

(1870年銘、英印10ルピーのプルーフ貨/リストライク、「ときいろ」サイトより)

リストライクではありますが、最近のこの銘柄の人気化はなかなかなもので、たとえば10ルピーのNGC-PF63+がハンマープライス195万円で今年の年初に落札されています。そこそこ将来性はあると思います。

イギリス領インド時代の銀貨

銀貨も前時代のイギリス東インド会社時代のコイン様式を踏襲しています、ラインアップも同様で1ルピーを筆頭に1/2ルピー、1/4ルピー、2アンナの4種が1862年に発行されました、それ以降も毎年発行されたようですが、年銘の刻印は1862年のまま続き、ちゃんとした年号が打たれるのは1874年からです。

(1880年銘、英印1ルピー、自社にて撮影)

最高額面の1ルピーに関して言えば、発行枚数も多くいまでも市場にたくさん残っていますが、一般にみられる個体はMS63までで、MS64はもちろんMS65ともなれば見つけるのに骨が折れます。なお市場もそのあたりに注目しているようで、最近のオークション相場はMS64が7万円前後まで上がってきています。前時代のイギリス東インド会社の1840年ルピーには及びませんが、同様の価格動向をたどってきているように見えます。MS65は滅多に出てきませんが、僕は昨年12月の香港で1885年銘のルピーMS65を、ハンマープライス2500ドルで落札しました、総支払額ベースでは50万円を超える計算です。このようにMS64とMS65では随分と価格差があります。

鑑定分布をみても、代表的な年銘である1890年のボンベイ鋳を例にとれば、NGC社の総鑑定数379枚のうち、最高鑑定はMS65で2枚、MS64が25枚となっております。同時代の欧米の銀貨に比べると、意外に状態の良いコインが少ないことがよくわかります。

次に銀貨ルピーをもう一銘柄ご紹介します。下のコインはビクトリアの次の次の王様、ジョージ5世時代の1911年に発行された1ルピー銀貨です。この銘柄は1911年から1936年まで発行されており、いわゆる「ありふれたコイン」といっていいでしょう。相場も「ありふれコイン級」にとどまりMS63あたりまでなら。せいぜい1万円前後で簡単に手に入ります。でも状態の良いコインが少ないのは、さきほどのビクトリアと同様で、MS64ですら簡単ではありません、MS65、MS66あたりはもっと入手困難です。代表的な年銘である1918年ボンベイ鋳を例にとると、NGCの総鑑定数633枚のうち最高ランクがMS66でOnly3枚、以下MS65が41枚、MS64が152枚と続きます。ありふれた銘柄ではありますが、MS65以上であれば入手しておく価値はあると思います。

(1918年銘、ジョージ5世の英印1ルピー、「ときいろ」サイトより)

すみません、紙数と力が尽きましたので、今回はここで筆をおかせていただきます、次回は第二次世界大戦以降にインドが独立したあと、インド共和国のコインをいくつか紹介させていただきたいと思います、次回がインド通史の最終回です。

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