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Looking for valuable coins

インドコイン通史-8

2024年8月31日

ここまで7回にわたってクシャン朝、グプタ朝、中世ヒンドゥー諸国、ムガール、イギリス東インド会社、イギリス領インド、とインドコインのお話しをしてまいりましたが、今回は最終回で現代インドです。

インド共和国のコイン

第二次世界大戦後の1947年、インドはイギリスから独立しましたが、1950年まで通常貨は発行されませんでした。ところが実際にはしばしばそれ以前のコインが市場に出てきます、これらは通常貨の発行に先立って、インド政府がいわば実験的に、あるいは贈呈用にごくわずか作ったコインです。

戦後のインドでは、試鋳貨が1946年と1947年に発行されていますが、いまだに僕は見たことがありません。1948年は試鋳貨すら発行されておらず、実質的に市場に出てくる試鋳貨は1949年銘ということになります。なお1949年には以下の9種が発行されています。

  • 1パイス(Pn8/8,000ドル)
  • 1アナ(Pn9/8,500ドル)
  • 2アナ(Pn10/9,500ドル)
  • 2アナ(Pn11/9,500ドル)
  • 2アナ(PnA12/10,000ドル)
  • 1/4ルピー(Pn12/10,000ドル)
  • 1/2ルピー(Pn13/11,000ドル)
  • 1/2ルピー(Pn14/11,000ドル)
  • 1ルピー(Pn15/12,500ドル)

注)カッコ内の左側はクラウスのコード、右側は同カタログの価格ガイダンスです

そもそも発行数が少なくめったに市場に出てきませんが、稀に出てくると高値を付けます。

今年(2024年)1月に、香港で開かれたオークションに、1ルピー、1/2ルピー、1/4ルピー、2アナ、1アナ、1パイスがバラで出てきました、僕はお客様に提案し、最高額面の1ルピーのみ落札に成功しました、ハンマープライスは15,000ドルでした。最新のクラウスの価格ガイダンスは、上記のようにPn15(1ルピー)が12,500ドルですが、この価格はすでに過去のものになってしまいました。

(インド共和国1949年、試鋳プルーフ貨1ルピー白銅貨)

1949年銘は、今後ますます入手困難になっていくでしょう。

一方で1950年目以降は、プルーフ貨のミントセット(貨幣セット)として市場にしばしば出てきますし、今なら比較的安価で入手可能です。といっても毎年このプルーフのミントセットが発行されたわけではありません。1950年から始まって1954年、1960年、1963年、1964年、1965年、1967年、1969年と断続的に発行され、それ以降は毎年発行されました。

特に価値が高いのは初年号の1950年です、僕はこの1950年のミントセットに思い出があります。たしか10年ほど前だったでしょうか、海外のオークションで7万円ほどで入手したものを、日本国内のオークションに出品したのです。多くのミントセット同様未鑑定で状態も悪く、さして期待はしていなかったのですが、順調にせり上がり確か15万円ほどで落札されました。落札したのはインド人のグループで、結構盛り上がってビッドを入れていました。当時インド経済は今ほど注目されていませんでしたから、意外な食いつきに驚いたものです。あれ以来、僕は1950年のミントセットを入手していませんが、今年5月の海外オークションでは1900ドルで落札されていました、総払額ベースで40万円弱です。

一方で1969年以降はさほど値が張らず、いまでも未鑑定のミントセットが200ドル前後(総支払額ベースで3-5万円ほど)ってところです、安く入手はできますが、僕は案外ねらい目だと思いますし、見つけたら極力入手するようにしています。

中国でも、戦後1949年以降に試鋳貨のミントセットが発行されていますが、初期のミントセットはなかなかお目にかかれません、一般に市場に出てくるのは1980年銘以降に発行された現代ミントセットですが、それでも1980年銘ならセットで15万円から25万円あたりがオークション相場です。

中国の現代ミントセットに比べると、インドのミントセットには割安感があると思います、ご参考までに下の写真は1973年に発行された、プルーフ貨のセットです。


(インドのプルーフ貨ミントセット紙ケース1974年、自分で撮影したものです)


(インドのプルーフ貨ミントセットの中身1974年、自分で撮影したものです)

どうも2000年以降の相場推移をみますと、インドコインは中国コインの後を追いかけて値動きしているように見えます、きっと経済成長や人口動態などを反映しているのでしょう。そんな理由で僕は、このミントセットもまた中国のミントセットと同様の値動きをすると思います。

僕はいまでも1950年のセットを落札した、あのインド人の熱気を忘れることができません。

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