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Looking for valuable coins

ブラジルコイン、おもいつくままに

2024年9月30日

今回はおもいつくままブラジルの金貨についてお話ししたいと思います。

1700年台以前

たしか歴史の教科書にも出ていたと思いますが、1400年代の終わりあたり、ポルトガルとスペインは驚くべき取り決めをしました。すなわち世界を半分ずつに分け、その地域で見つかった新しい領土は2つの国で分ける、こんな感じの条約です。

なんとも傲慢で傍若無人かついい加減な取り決めで、僕などはここにヨーロッパ人の本質を見る思いがしますし、この体質はいまでもさして変わっていないのではないでしょうか。

ともあれ、こんなすごい条約が両国間で結ばれたのは事実で、この取り決めによって、日本はポルトガル領になりました。このあたりの経緯はアメリカのテレビドラマSHOGUNでも少し触れられていますが、戦国時代の末期、織田信長や徳川家康の時代には、すでにポルトガル宣教師や商人は、日本に随分と入ってきていました。彼らの最終的な目的は、その条約(トルデシャリス条約)に基づいて日本を植民地することでしたが、当時の日本は経済的、文化的、軍事的にみて、かなり高度な文明を築いており、思惑通りにはいかなかったのでしょう。なにしろこの時代の日本は、ヨーロッパの強国に匹敵する数の鉄砲を持っていたばかりか、自国でも作ることができました。

でも世界を見ると、あっちゅうまに征服された国や地域がたくさんあります、代表例は上の条約によってスペイン領にされてしまった中南米の文明群です、国は滅ぼされ、多くの人たちが虐殺され、そして金や銀が略奪され、さらに鉱山ごとぶんどられました。

ブラジルも同様です、中央アメリカのマヤ国、南米の西海岸にインカ帝国などと違って、当時のブラジルは現代的な意味での国は無かったのでしょう、ポルトガル人からすればやすやすと征服できたのではないでしょうか。

ポルトガルが初めてブラジルの土地を見たのは1500年ですが、それ以降、上の条約を根拠として植民地化をすすめます。でもスペイン領の中南米と違い、ブラジルには金や銀がいっぱいあったわけではなく、せいぜい地元のインディオ(ポルトガル人はブラジルの原住民をインディオとよんでいたそうです)を使って砂糖をつくる程度の収奪でした。

そんな事情もあって、ブラジル独自のコイン発行は遅れます。

たとえば旧スペイン植民地だったコロンビアやメキシコなどでは、すでに1600年代の前半からコブと呼ばれる、いびつな形をした金貨(通称「コブコイン」)が発行されていますが、ブラジルで独自の金貨が発行されるのは、ミナス・ジェライスで金鉱山が発見された1695年以降です。

1700年台

1700年代に入ると、ブラジルのリオ・デジャネイロ、ミナス・ジェライス、バヒーア3つの鋳造所で、ブラジル製金貨の発行が始まります。でもこの時代はポルトガル領だったため、本国の金貨と同じデザインでした。ブラジルコインとポルトガルコインの判別は、唯一ミントマークと呼ばれる目印で行われています。

前置きが長くなりすぎ、時間も無くなってきましたので、以下僕が好きな2銘柄のみ紹介いたします、まずは大型金貨の20,000レイスです。

(1726年ブラジル20,000レイス)

この銘柄はホアン5世(JoanⅤ)の1724年から1727年にかけ、ブラジルのミナス・ジェライスで発行されました、ミナス・ジェライスのみの発行ですからミントマークはありません。

発行数は不明ですが1725年銘は滅多に出てきません、続いてレアなのは1726年で、1724/27年が並み年です、この金はよく「中南米最大の金貨」などと呼ばれますが、重さは54グラムほどあり、通常の大型金貨の2倍サイズです。この銘柄はリーマン・ショック直後の2008年から急騰しましたが、その後しばらく鳴かず飛ばず、MS63程度でもオークションなら180万円ほどで買える時期が続きました。

コインというのは何の前触れもなく急騰する時期があるものです。この銘柄もここ3年ほどで急に値上がりしてきました。いまならMS63クラスでも300-350万円はします。なお本国ポルトガルでもこの銘柄は使用されましたが、ポルトガルの紋章が上から加刻されて識別していました、当時のポルトガルでは30,000レイスとして使われたそうです。

いま相場の急騰は、この銘柄に限らず同時代のブラジル金貨全体に及んでいます。以下は同国で最も早く作られた肖像コイン、12,800レイスです。

(ブラジル1730年、12,800レイス、ミナス・ジェライス鋳)

この銘柄はホアン5世の1727年から1733年にかけ、ブラジルのリオ・デジャネイロ、ミナス・ジェライス、バヒーア3つの鋳造所で発行されています、重さは約29グラムと通常サイズの大型金貨です。なぜ20,000レイスが58グラムで、この12,800レイスが半分の29グラムなのか僕は知りませんが、何か特別な理由があったのではないでしょうか。

鋳造所ごとの残存数は随分と開きがあり、圧倒的にバイーヤ(ミントマークB)が希少です。めったに市場に出てきませんが、いまオークションに出てくればMS63クラスが80,000ドルほどになるかもしれません。次いで希少なのはリオミント(同R)で、MS63のオークション価格は50,000ドルほどでしょう。最も一般的なのはミナス・ジェライス鋳(同M)ですが、それでもMS63クラスなら23,000ドルほどだと思います、日本円の総支払額ベースは440万円ほどです。

振り返ると、この銘柄もここ3年ほどで随分と人気が出ました、3年ほど前ならMS63がオークションで200万円ほどで買えた記憶があります、AU58クラスなら50-70万円ほどで買えたものです、当時から僕はこの時代のブラジル金貨の割安感を指摘しましたが、いまそのイメージに近づいてきた印象です。

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