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Looking for valuable coins

アメリカ20ドル、今年を振り返って

2024年11月30日

コインの世界では今年もいろいろ変化がありましたが、目立ったのはアメリカの「近代20ドル金貨」の値上がりです。

アメリカの近代20ドル金貨は2銘柄あり、一つは1950年から1907年まで発行された20ドル金貨(通称「リバティヘッド」)、もう一つは1907年から1931年にかけ発行された20ドル金貨(同「セントゴーデンス」)です。

(アメリカ1904年20ドル「リバティヘッド」:「ときいろ」サイトより転載)

(アメリカ1928年20ドル「リバティヘッド」:「ときいろ」サイトより転載)

ご覧のように2種とも自由の女神がデザインされたきれいなコインです、ただ価値という点ではさほど値は張りません、なにしろ発行期間が長いうえ、発行枚数も半端ではありません。以下ご参照ください。

  • リバティヘッド:1850年から1907年、総発行数は1億枚以上
  • セントゴーデンス:1907年から1933年、総発行数は7000万枚以上

まず驚くのは発行数の多さです、当時の世界を見渡してみても1オンスサイズの大型金貨をこれほどたくさん発行した国はありません。特に発行数が多いのは1895年から1931年までで、この間、多くの年で200万枚以上も発行されました。これだけを見ても、当時アメリカの経済が急速に成長していく過程がわかります。

ご参考までに同時代の日本を見ると、最大サイズの金貨は新20円で重さは1/2オンスしかありません、しかも発行数は5000万枚弱にとどまります。当時の日本は日露戦争に勝ち、第一次世界大戦の特需で莫大な利益を上げた時代です、いわば日本経済の一つの頂点にあったわけですが、その日本ですらはるかに及びません。

(大正8年/1919年、新20円金貨、発行数約153万枚)

第一次大戦で荒廃したヨーロッパをみると、大型金貨の発行数は問題にならないほど少なく、当時の超大国イギリスですら、エドワード7世、ジョージ5世、ジョージ6世の戴冠記念として、数千から数万枚程度、ほんのわずかな記念金貨が発行されただけです。

(イギリス1911年、ジョージ5世の5ポンド金貨、発行数2812枚)

経済大国フランスも似たり寄ったりで、大型金貨の発行は年あたり1万枚から3万枚にすぎません。敗戦国のドイツに至っては金貨どころではありませんでした。

(フランス100フラン、1885年発行数2894枚)

世界的にみればこのように、1900年代の初頭は金貨、特に1オンスサイズの大型金貨はアメリカと日本を除き、ほとんど発行されていません、そのような観点から言えば、アメリカの上記2銘柄は、大量に発行されたという意味で特異な存在だといえるでしょう。

そんな事情もあって、コインの世界でアメリカの近代20ドルは「ありふれたコイン」、もっといえば「地金コイン」と見られてきましたが、最近は少し様相が変わってきたように思います。

値上り要因の一つ目は金価格の上昇です。

以下は直近10年間の金価格ですが、ご覧のように1オンス=1200ドルほどから、足元では2600ドルほどまで値上がりしています。

(金の現物価格10年月間の推移、楽天証券サイトより転載)

上記のように、アメリカの近代20ドル金貨はほぼ1オンスの金が含まれています、これはどういうことかといいますと、価格の下限が1200ドルから2600ドルまで切りあがったことを意味します。

実際にここ一年の値動きをみてもこれを裏付けています。例えばリバティヘッドの1904年銘をみますと、平均的なMS63程度の状態で、年初時点で35万円ほどでした。金の価格は年初時点で1オンス=2000ドルほど、為替レートは1ドル=142円ほどでしたので、当時の金価格1オンスは、日本円ベースで税込み31万円と計算できます。

  • 2000ドル×142円×110%≒31.2万円

つまり年初時点20ドル金貨を分解すると

  • 地金価格:31万円
  • 希少価値:4万円

となるわけです。

この1904年銘の20ドル金貨は、足元で同程度の状態で50万円ほどまで値上がりしてきました。一方で現在の金価格は1オンスあたり

  • 2600ドル×151円×110%≒43万円

です。したがって現在の価格50万円を分解する以下のようになります。

  • 地金価格:43万円
  • 希少価値:7万円

上記からいくつかのことがわかります。

まず、実際の相場推移をみても、地金型金貨は金の価格が最低限になる点、
二つ目は(アメリカ近代20ドル金貨に関していえば)、希少価値が上昇傾向にある点、
以上2点です。

うち希少価値のほうについて一つ付け加えると、希少価値はコインの状態によって指数的な上昇を見せます。上記のようにMS63程度の、いわば並の状態のコインは希少価値の上昇はさほど顕著ではありませんが、たとえば状態が2段階上のMS65の場合はどうでしょう。

先日の銀座コインオークションで1904年銘、NGC-MS65が出品され、ハンマープライス62万円で落札されました、総支払額ベースでは79.4万円です、これを上と同様に分解すると

  • 地金価格:43万円
  • 希少価値:36万円

となります。

この銘柄のMS65はかなりの希少状態ですが、希少価値はMS63の7万円に対し、MS65は36万円もあります。しかも上で紹介したように、希少価値のほうは時間の経過とともに上がってゆきます。もちろんMS65よりMS66、MS66よりMS66+のほうが将来性は高いでしょう。

しかもアメリカのコイン相場をみると、全体的にも下のグラフように著しい割安感があります。

なお、下のグラフはPCGS社が集計するGeneric Gold Coin Indexで、アメリカで発行された通常コイン(希少性の低い銘柄)の相場を指数化したもの、もう一つ下のグラフはNYダウの同期間のグラフです。横軸は同期間ですので見比べてください、この2つのグラフはいろんなことを語ってくれます。

(アメリカ通常金貨相場1970年以降の推移、PCGS社サイトより転載)

(アメリカNYダウ株価指数、1970年以降の推移、「投資の森」サイトより転載)

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