スマートフォン版に切り替える

Looking for valuable coins

金の価格と金貨

2025年2月28日

先日配信したメルマガで僕は、「元本確保型金貨」のお話をしました、昭和61年に発行された「昭和天皇在位60年記念」の10万円金貨のことです。

この金貨は純金20グラムの重さがあります、当時の金価格は1グラム=2100円(下のグラフの青矢印)ほどだったので、金属としての価値は42,000円ほどにすぎませんでした、振り返るとこの金貨に10万円の額面を設定したのは大きな間違いでしたが、当時の大蔵省役人を含め、この金貨の金属価値が(自分たちが生きている間に)10万円の額面を上回ることがあるなんて、誰も考えていなかったに違いありません。

まあそんなゆるーい感じで額面を決めてしまったことを、そう遠くない将来、彼らは後悔することになりました、そして今では地金価格32万円です。

僕はこの事務所を作ったとき、この10万円金貨のことを「元本確保型金貨」と呼んだことがありました、当時海外で元本確保型をうたったファンドが流行っていたからです。2004年時点の金価格は1グラムあたり1400円ほど(黄色矢印)でしたから、この金貨の地金価格は3万円ほどでした。額面である10万円までだいぶ距離がありましたが、この調子で金の価格が上がってゆけば、近い将来に地金の価値が額面を上回るだろうと考えたのです。

(金の価格1978年以降の長期推移:三菱マテリアルのサイトより転載)

当時この金貨の地金としての価値はまだ3万円でした、一方でこの金貨を銀行にもってゆくと10万円のお札と交換してくれました。なので当時この金貨を3万円でコイン商に売る人はいませんでしたが、今後このコインの地金価格が12万円、14万円と上がってゆけばいったいどうなるのか・・・、そんな風に僕は考えたのです。この場合、コイン市場での売価は金の地金価格のほうに追随し12万円、14万円という感じで上がってゆくはずです、つまりこの金貨は最低でも額面10万円の価値が保証されており、なおかつ金の価格に連動して価値が増えてゆくことが予想されたのです。これが元本確保の意味です。

あれから20年が経ち、この金貨は元本確保型金貨だったことが証明されました。

これでおしまいだったら僕の自慢話になってしまいますが、このお話には続きがあります。
この苦い経験から財務省は、その後発行された金貨の額面を10,000円にしてしまいました、平成5年に発行された5万円金貨を最後に、こんなおいしい金貨は発行されなくなってしまったのです。つまり額面を1万円に下げることによって、「元本確保機能」を持たないようにしたといえるでしょう。

でも世界を探すと、いまでもこれに似た意味でおいしい金貨はあります。

例えばアメリカで1908年以降に発行された「セントゴーデンス」と呼ばれる20ドル金貨です、この金貨にはほぼ30グラムの金が含まれています。

(アメリカ1924年の20ドル金貨)

この金貨とよく比べられるのは、たとえばカナダ政府が発行する地金金貨「メイプルリーフ金貨」です。メイプルリーフは毎年大量に発行されており希少性はありません、つまり常に金としての価値で売買されている金貨です。このメイプルリーフ金貨は1オンス(約31.1フラム)の金が含まれており、さきほどの20ドル金貨より3%ほど多いのですが、皆さんが田中貴金属で買う場合の価格は50.8万円(2025年2月27日現在)です。

したがって先ほどの20ドルに当てはめると、この50.8万円から3%差し引いて49万円ほどが金属としての買値(かいね)ということになるでしょう、言い換えればどんな状態が悪くても、この49万円という価格が20ドル金貨の最低限の価値と言っていいでしょう。

もちろん金の価格は日々動いていますし、中長期でみても下がる可能性はあります、でももし金の価格が徐々に上がってゆくとしたら、この金貨もまた49万円以下には下がりません、その意味で、元本確保に近い性格を持っているといえるでしょう。ちなみにこの金貨、MS63程度の状態なら50万円台の前半で買えてしまいます。

いつも申し上げていますが、コインの価値は状態に依存します。状態の良い個体、たとえばMS65やMS66(注)の高鑑定コインであれば、今後さらに希少価値が上乗せされるでしょう。

注)この銘柄の67以上は滅多に出てきませんが、出てきたら1万ドルを超えます

セントゴーデンスは1908年に発行が始まりましたが、その一つ前に銘柄「リバティヘッド」も同様です。特に1900年代に発行されたコインは、セントゴーデンス同様、まだ希少価値は十分に乗っていません、古いぶんリバティヘッドに比べると少し相場は高いですが、それでも元本確保に近い性格を持っており安心感がある銘柄です。

(アメリカ1904年の20ドル金貨)

同様の性格を持った金貨として、ほかにペルーの100ソルがありますし、中南米で1700年代から1800年にかけ発行された8エスクードなども、状態のよくないものなら地金価格+アルファで購入可能です。

こんな視点でコインを収集するのも面白いものです。

単なる入札代行ではなく、このサイトの主催者である田中がコンサルさせて頂きます、
コイン初心者の方でも安心してご利用いただけます。