価値あるコインを求めてLooking for valuable coins
11月開催の銀座コインオークションを振り返る
2025年11月28日
早くも2025年は終わろうとしています。今年も国内外で数々のオークションが開かれ活発にセリが行われました、今回は先日開催された銀座コインオークションの結果から、特に高額落札が目立った日本の近代金貨について紹介させていただきます。
落札コインの点描と傾向
銀座コインオークションの特徴は日本コインの出品が圧倒的に多い点です。おそらく同社の顧客には収集歴が長い人が多く、そのように昔からのお客さの多くは、外国コインより、大判や小判、円銀や明治から大正にかけ発行された「近代金貨」など、日本のコインを好む傾向が強いからだと僕は思います。
実際に同オークションの出品物をみると、日本コインと外国コインの比率は4対1ほども開きがあります。
このような事情で今回も日本の「円銀(1円銀貨)」と「近代金貨」の出品が充実していました。
そんななか今回目を引いたのは近代金貨の人気の高さです。
なかでも圧倒的な存在感を示したのは明治3年から4年にかけ発行された「近代金貨 銀貨 プルーフ/#648-657」です。

(明治3年、旧20円金貨のプルーフ貨、銀座コインオークションのサイトより転載)
これらはバラで出品されましたが、本来は10枚のセットものです。明治新政府が関係者へ贈呈品として配った可能性が高いセットですが、当時の記録は残っておらず不明な点が多いコインです。順次セリにかかりましたが、最初のロット#648は旧20円金貨でハンマープライスは9000万円!総支払額ベースでは1億485万円でした。旧10円以下も順にセリにかけられ10枚のハンマープライスの合計は1億4180万円、総支払額ベースで1億6520万円ほどでした。
主催者の説明によると、このセットは2000年スイスのオークションに出品された現品で、当時のハンマープライスは日本円で2240万円だったとのことです。過去のオークションカタログを繰ってみると2004年の銀座コインオークションにもこのセットが出品されており、ハンマープライス2200万円で落札されていました。
25年で7倍と聞くとスゴイなとは思いますが、よく考えたら2000年時点で金1オンスの価格は270ドルほどでした、現在は4200ドルですから15倍ほどです。先ほどの10枚セットは7倍ですから、金に及びません。
これだけを見ると金貨より金そのものを買ったほうがよかったように思いますが、あながちそうとばかりは言えません。私たち金融の世界にいる人間は、単純に収益率だけで投資対象の優劣を判断しません、よく使われるのはリスク(価格変動リスク)に対してリターンがどの程度の大きさかという点、つまり「シャープレシオ」を参照します。リスクに対してリターンが高いほど優秀な金融商品と判断するわけです。
そのような観点でこの間の両者を比べるとどうでしょう、金は足元の動きを見てわかりますが、かなり価格変動の大きな金融商品です。これに対して近代金貨はどうでしょう、もちろんその時々のセンチメントで動くこともありますが、一般的にさほどの価格変動はありません。このように単にリターンだけ見るのではなく、価格変動と合わせて金と金貨の優劣を比べたほうがいいでしょう。簡単にいえば金は15倍になったが値動きは激しい、一方で近代金貨は7倍にとどまったが価格変動リスクはほとんどない、この両者をどう判断するべきかという点です。
すみません、話がわきにそれてしまいました。
続いて僕の目についたのは日本の近代金貨の通常貨です。
今年に入っての近代金貨は急速に動意づいた感があります、たとえば下の旧10円金貨です。

(明治4年、旧10円金貨の通常貨、銀座コインオークションのサイトより転載)
PCGSの評価でMS65ですから、この銘柄にしては状態が良いほうですが、ハンマープライスは165万円でした、総支払額ベースでは192万円です。おもえば随分と値上がりしたものです、そういえば10年ほど前、僕はこの銘柄の同状態を40万円台で入手した記憶があります。旧金貨は額面や年号にかかわらずすべて値上がり傾向にあります。
日本で定着しつつあるインフレと、日本株高による富裕層マネーが分散の対象として選好しているのだと思います、その意味で日本の市場(株もコインも)やっと世界基準に近づいてきたといえるでしょう。
続いて注目したいのは新金貨です。下のコインは明治政府が明治30年以降に発行した新金貨です、旧金貨にくらべデザインが単調で大量生産品のそしりを免れませんが、それでもここ一年ほどで急速な見直し買いが進みました。

上のコインは#781の大正6年銘、状態はPCGS者の評価でMS66でした、この銘柄のMS66はマズマズの高鑑定ですが、ハンマープライスは62万円、総支払額ベースでは72万円強になりました。それにしても新20円も高くなったものです、昨年の同オークションに同年銘、同状態が出品されましたが、ハンマープライスは45万円でした。
来年の相場を予想する
このように日本の近代金貨は新旧問わず、また年銘を問わずこの一年だけでずいぶんと値上がりしたことがわかります。
この急上昇の理由は二つあると思います。
一つ目は足元で進む金価格の上昇です。近代金貨はコイン価格に占める金の価値が比較的大きく、その点で金価格の上昇は昨年以降の上昇に寄与したと思います。
二つ目の理由は、先ほども書いたように日本におけるインフレの定着と、株価の上昇です。日本人のお給料もそれなりに増えてはいますが、いまだインフレ率を超えることはできていません、つまり会社で働く多くの人はインフレ下でむしろ生活が厳しくなっているといえるでしょう。
そんななかリッチになっているのは株や現物資産をもっている人たちです。この層はまだ少数派ではありますが、最近では1億円以上の株資産を持っている人も珍しくなくなってきました、一方でそのような新富裕層ともいうべき人たちの不安は株価の下落です。
コインや不動産、貴金属は、そのような新富裕層による資産分散の対象として機能しつつあるようです、
このような視点でみれば、来年以降も同様の傾向が続く可能性が高いと考えておくべきでしょう。来月号は恒例になった「2026年型ポートフォリオを考える」ですが、その中でもう少し詳しくお話しできると思います。
単なる入札代行ではなく、このサイトの主催者である田中がコンサルさせて頂きます、コイン初心者の方でも安心してご利用いただけます。
