価値あるコインを求めてLooking for valuable coins
ゆがめられたわが国コイン市場
2017年5月
いろいろな機会で申し上げるのですが、日本のコイン市場はホントに未熟(すみません!)だと僕は思います。
以下は僕が日頃感じる国内のコイン市場の特徴です。
- イギリスの5ギニーや5ポンドなど、ごく一部のコインに人気が集中する傾向
- そしていったんブームに火が付くと価格が急騰し、数年で数倍といった値を付けること
- 国内の相場急騰が海外に波及し、世界的に見た新しい相場帯を形成すること⇒国内のあおり系コイン商による買い付けが主因です。
- 逆に人気の圏外に置かれたコイン群は安値に放置され、国際的にみて割安銘柄があること⇒海外の目ざといコイン商やコレクターの草刈り場になっています。
今回は日本のコイン市場が、世界的にみていかに歪んでいるか・・・そんなお話しを少しさせていただきます。
最近時々「日本にコインブームがやってきましたね」などと言われますが、僕自身は一向にブームだとは思っていません。海外のコイン市場と比べると、まだまだ参加者が少ないですし、オークションの開催回数や出品数などみても貧弱です。例えば私の事務所には海外のオークションカタログがたくさんあるのですが、各オークションに出品される点数をザッと見ただけで、国内と海外の市場に厚みの差があることがわかります。
さらに出品されるコインの品質にも歴然とした差があります、海外オークションの場合、例えば単価数万円程度のコインは、一般的にメインのオークションに出展されることはありません、出品されることがあっても写真なしの、いわゆる「サブオークション」の部への掲載が中心で、いわば「一山ナンボ」扱いです。
これに対して国内のオークションは質において大きな見劣りします、例えば以下は2016年に開催された国内大手オークションのカタログの抜粋です。古代ギリシャのページですが、皆さんこれをご覧になってどうお感じでしょうか。例えばロット番号7703,7704は前回当欄でご紹介したフクロウ君ですが、状態は7003がVF(落札価格は12.5万円)、7004はF(こちらはNGC社のホルダーに入っていて状態はVF)にすぎません。先月も申しましたが、このフクロウ君は数がたくさん残っており、海外大手のオークションで、NGC社のAU未満(すなわちXFやVF)がメインオークションに出てくることはまずありません。
(国内大手オークションの2016年カタログ抜粋)
あるいはロット番号7001をご覧ください、このコインは紀元前5世紀から4世紀、ギリシャと争ったアケメネス朝ペルシャの最盛期に造られたダリク金貨という有名なコインで、欧米の大手オークションでは必ず数点は姿を見せるコインです。一方で国内オークションではせいぜい年数点が出品されるにすぎません、さらに問題はその状態です。ロット番号7001はVFとなっていますが、これは僕の印象としては少しオーバーグレードで、感覚的にはVF-程度だと思います。
さきほどのふくろう君同様、海外の主要オークションで、このコインのVF程度がメインオークションに出品されることはまずなく、巻末の写真なしの「一山ナンボ」コーナーでの掲載が定番となります。価格のほうもまた同様で、ロット番号7001は29万円(オークション主催者に10.8%支払うので、実質的な買い値は32万円を超えます)とかなり高額ですが、欧米のオークションではUSD1500(こちらもオークションハウスへの手数料が15-20%程度、さらに輸入消費税が8%かかりますので、日本円で21万円ほど)程度がせいぜいです。国内オークションの場合、レアもの扱いで入札が集中しますので、どうしてもこのような落札価格になるのでしょう。
(ロット番号7001拡大図、古代アケメネス朝ペルシャのダリク金貨、図柄は「走る王」)
ご参考までに先日の海外オークションで出品された、同種のコインの写真を以下に掲載させていただきます。右側がNGC社のホルダーに入った状態(ご覧のようにAUクラスです)で、左側はコインだけ拡大した写真です。上のロット番号7001の拡大写真と比べていただければ明らかですが、例えば王様の顔や王冠、左手に持つ“弓”、あるいは右手に持つ“槍”など、明らかに明瞭度において差があることがわかります。本ダリク金貨の場合、この程度の状態が欧米オークションの標準です。ご参考までに以下のコインの落札価格はUSD2,200ドルで、輸入消費税を含めても総支払額は31万円弱でした。
すべてのジャンルでこのような傾向になるわけではありませんが、これなども日本のコイン市場の後進性を表す好例ではないかと僕は思います。
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