価値あるコインを求めてLooking for valuable coins
地金価値がコイン価格より高くなれば
2018年2月
今回は現物資産の耳寄り情報を一つ・・・ここのところパラジウムの価格が上昇しているのは、本レポートの読者はご存知かと思いますが、コインの市場でちょっとした異変が起きています。ロシア(旧ソ連)では1988年から1991年にかけ、以下のような1オンスのパラジウム貨幣が作られました。
(旧ソ連で1989年に発行された25ルーブルのパラジウム貨幣、重量はちょうど1オンス、発行枚数は27000枚)
ロシアでは当時大量のパラジウムが採れましたので、このように世界でも珍しいパラジウム貨が鋳造できたわけです。今でも同国はパラジウムの最世界最大の産出国ですが、なんでも近年は産出量が減っているらしく、いまはとてもそのような余裕はないでしょう。
さてこのパラジウム貨幣(25ルーブル=1オンス)ですが、僕は今月の泰星コインの月刊誌『Coin Challenger』で、一枚113,000円(会員価格/税込み)で売られているのを発見しました。このコインの純度は99.9%なので、パラジウムの地金価格だけで121,000円ほど(税込み)になる計算です。
1051ドル(2/27現在1オンスあたりの価格)×106.6ドル×108%≒121,000円
貨幣を溶解することは法律で禁止されていますが、仮にこのコインを溶かして販売すれば、一枚当たりいくらかの利益が出ることになります。現状では一枚当たりの儲けは数千円ですが、今後もしパラジウムの価格がさらに上昇すればどうでしょう。おそらくロシア国外にあるこのパラジウム貨の大半は、溶解されてしまうのではないでしょうか。そしてどなたかの「歯のかぶせもの」になってしまうかもしれません。コレクターとしては寂しい気がしますが、実はそのようなことは過去何度も起きました。
記憶に新しいところでは、日本の現代金貨です。例えば平成3年に発行された「天皇陛下御即位記念10万円金貨」です、このコインの諸元は以下のとおりです。
重さ:30グラム
額面:10万円
発行枚数:200万枚
発行:1990年4月10日
金の純度:100%
発行当時の金の価格は、1グラム=1800円ほどでしたので、このコインに含まれる金の価格は54,000円ほどに過ぎませんでした、当時の大蔵省の役人は、まさか近い将来地金の価値が額面を上回るなど、考えもしなかったに違いありません。ところがそのあと金の価格は順調に上昇し、現在は1グラム=4800円(税込み)ほどになっています。したがってこの金貨の地金価格は約144,000円で、額面(10万円)をはるかに超えるという珍現象が起きました。
4800円×30グラム=144,000円
発行枚数は金貨にしては異例に多く200万枚も作られましたので、希少価値はゼロですが、なにぶん地金の価値が額面を超えてしまっています。その結果、この金貨は現在市場で14万円以上の値で売買されているのです。発行当時この金貨は広く国民に販売されましたので、多くの方は含み益を得ているはずです。一説にはそれを業者が大量に安値で買取り、海外に輸出していると聞きます、きっと海外で溶かされているのではないでしょうか。
それとは性質が異なりますが、世界を見渡せば現代金貨のなかに地金価格に近い価格で売買されているコインもあります、例えば下のメキシコ50ぺソ金貨です。
(メキシコで1821年から1847年まで発行された50ペソ大型金貨、重量は41グラム以上、金の純度は90%、したがって含まれる金の重量だけでも1.2オンス以上あります)
この金貨は800万枚以上も作られましたので、希少価値はほとんどないのですが、それでも近年の金価格上昇によって、地金価格がジアジワ上昇しています。上記のように1枚当たり1.2オンス以上の金を含んでいますから、地金価格だけで18万円ほどにもなります。
4800円×37.5グラム≒180,000円
今後金の価格がさらに上昇するようなことがあれば、冒頭のロシアのパラジウム貨のように、現在の売買相場を地金価格が上回ってくるかもしれません、しかもこの金貨は作られてすでに100年近くたっており、そろそろアンティーク・コインの仲間入りです、数が多いので状態の悪いコイン(例えばMS63程度まで)は希少価値が出てくるとは思えませんが、それ以上の個体はさほど多くは残っていません。地金価格の上昇+希少性という観点で、おもしろいコインではないでしょうか、ちなみに現在の相場はMS64クラスで30万円強です。
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