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今年一年のコイン相場予想と注意点

2021年1月31日

今回は年初なので今年のコイン相場について少し考えてみたいと思います。まず相場に影響を与えそうな出来事についてです。

FRBの量的緩和縮小(「テーパリング」)があるかないか?

今年一年の経済を予想するに際し、最大の注目ポイントは中央銀行による金融政策、なかでもFRB(アメリカの中央銀行に相当)の政策だと思います、昨年のコロナショック以降、FRBはじめ先進諸国の中銀は全力で量的緩和(注)を行いました。

注)おカネを市中にバラまく政策、市場から主に国債などを購入し、その対価として自らが印刷した紙幣を大量に供給してきました。

以下はリーマン・ショック以降のFRBバランスシートの推移です。

(FRBのバランスシーと推移:FRBサイトより転載:単位は100万ドル)

中央銀行は自ら印刷したお札で市中にある国債などを購入しますので、その金額だけ(中央銀行の)バランスシート(=総資産)は膨らみます、大雑把にいえばバランスシートが膨らんだ分だけ、市中に供給するお札の量が増えていると考えてもよいでしょう。

モノの値段はモノとお札の交換レートのことです、お札が増えるとその価値は薄まり、相対的にモノの価格は上がります。昨年コインが大きく上昇した理由の一つは、おカネの価値の希薄化だったことは間違いありません。

逆に言えば、量的緩和が止まれば、コインはじめ現物資産の価値上昇も止まる可能性があることを、私たちは理解しておくべきではないかと思います。さらに注意しておきたいのは以下のような逆の流れです。

・量的緩和継続⇒量的緩和の縮小(「テーパリング」)⇒量的緩和の停止⇒バランスシートの縮小(注)

注)中央銀行が保有する国債には満期がありますので、中央銀行が量的緩和を停止すれば自動的にバランスシートは縮小してゆきます

もちろん中銀のバランスシート縮小によって悪影響を受けるのは、実物資産だけではありません、より影響を受けやすいのは、あとでお話しするように株だと思います。

ただし今まで市場に大量供給されてきたお札が徐々に回収されるわけですから、コイン市場だって無風というわけにはゆきません。場合によっては逆にコイン市場からおカネが流出してしまう可能性すらあるでしょう。

ではまず本当にテーパリングはあるのでしょうか、あるとしたらその時コインはどのように値動きするのでしょう。

まずは年内のテーパリングが有るか無いかという点から考えてみましょう。

結論から申し上げると年内のテーパリングはないと僕は思います、先日のパウエル議長の発言を聞くと、同氏は目先の景気回復を楽観していないようです、FRBが注視するインフレ率と雇用をみても目標とする数値から程遠く、まだまだ現在のFRBは政策を転換する段階にないということがよくわかります。

ただしこれは現状です。

今後ワクチン接種が順調に進み、感染者が減ってゆけばどうでしょう、どこかのタイミングでFRBはテーパリングに踏み切ることは間違いありません、問題はそのタイミングです。

前ページのグラフはFRBのバランスシートの推移ですが、ある程度の将来はこのグラフから推測可能です、前回の量的緩和はリーマン・ショックがあった2008年に始めましたが、FRBがテーパリングを実行に移したのは黄色矢印の2013年12月です。つまり5年ほども量的緩和を続けたことになります。なお、その後FRBがバランスシートの縮小に動いたのはさらにその5年後の2018年の末(赤矢印になってからです、これをみてもFRBというか中央銀行の金融政策が、いかに慎重に行われるかよくわかります

もちろんリーマン・ショックと今回のショックは違いますが、今回はまだ感染拡大のさなかです、株が先読みして動くのは理解できますが、FRBが感染終息を先読みして動くことはありえません、しかも今の財務長官はかつてのFRB議長でハト派(=量的緩和派)のイエレンさんです。

株のようにコロナ終息を先読みしておカネがコインから流出することはないのか

上記のように僕は年内のFRBによるテーパリングはないと思いますが、市場が株のように先読みし、コイン市場から逃げ出してしまうことは無いのでしょうか。

僕はいくつかの理由でNoだと思います、以下順に考えてみたいと思います。

まずおカネの質の違いです、株は売買が容易で投機的なマネーが常に出入りしています、なかには1000分の一秒といった高頻度取引を繰り返すファンドや個人もいて、一瞬で市場に入ってくることもあれば逆に出てゆくこともあります。

一方でコインはどうでしょう、売買にかかる手数料は株の比ではありませんし、買うのも売るのも時間と手間がかかります、市場のサイズも株とは比べものにならないほど小さく、そこに投機性の強い機関投資家やファンド達が入る余地も動機もありません。

入ってくるおカネは長期的な資産保全趣味での保有を目的とした「落ち着いたおカネ」が中心で、目先の金融政策や相場動向によって忙しく出入りするようなこともありません。

以上のような理由で来年以降のテーパリングを先読みし、コイン市場からおカネが逃げ出すということは考えにくいと僕は思います。

今年コインを新たに購入する際にお気をつけ頂きたい点

ただし今年のコイン投資に際し、ご注意いただきたい点もあります。

昨今のコイン市場には、投機的な志向を持った個人のマネーも入ってきています、残念ながら、そのようなおカネがホンの一握りの銘柄を異様なまでに買い進めるという現象もみられるようになってきました、例えば現代イギリスコインです。

(イギリスで1839年に発行された5ポンド、通称「ウナ&ライオン」)

上の写真は有名な「ウナ&ライオン」と呼ばれるコインですが、このコインが異常な値上がりを見せるなか、イギリスやオルダニー、ジブラルタルなどが最近発行した「ウナ&ライオンの復刻版」までもが異様に値上がりしています。

なかには15,000円で販売されたコインが200万円を超えるなど、どう考えても説明できない状態になっています、これなど明らかに「投機的な志向を持った個人のマネー」の影響だといえるでしょう、過去を振り返るといくつも似たような動きがありました、たとえばイギリス造幣局が毎年発行しているエリザベス2世の5ポンド金貨です、特に値上がり顕著だったのは1982年銘で、PR70なら一時350万円以上の値をつけたものです、いまではすっかりブームが去った観があり、新興コイン商さんも在庫を抱えてお困りの様子です、結局バブルが起きると誰かがババを引くのです。

(1985年イギリス5ポンド)

それにしても彼らは逞しいですね、ヤングエリザベスの次は「ダイアナ」でひと儲けし、それが終われば「ウナ&ライオン」のリストライクと「ジェームズ・ボンド」です、そうやって「投機的な志向を持った個人のマネー」の目先を変え、次から次にバブルを生んでは破裂させているだけです。すみません、書いていてちょっと腹が立ってきたもので話がわきにそれました。

申し上げたかったのは、FRBのテーパリングが始まれば、コインといえどもニューマネーが入りづらくなるという点です、その場合、今盛んにおこなわれている現代コインのバブル的投機は終焉するでしょう、この点には十分気を付けていただきたいと思います。

一方で当然ながら大半のコインはこのようなバブルとは無縁です。

確かに昨年は大型でクラシカルな金貨も値上がりしましたし、銀貨でもレアなもの、状態の良いものは目立って値を上げました、ただしそれは昨年に限ったことではありません、中南米の大型金貨が値上がりしたのは、今まで安値に放置されていたものの見直しに過ぎません、1950年以降に発行されたペルー100ソルの値上がりは、現代コインからクラシックコインへ仲間入りする過程で起きた相場の見直しによるものです。古代ギリシャ・ローマ、インドなどの金貨の値上がりも、今までの価格が異常に安かっただけで現在の相場に違和感はありません、逆にモノによってはまだまだ強い割安感があります。

(メキシコ1741年8エスクード、フェリペ5世)

(帝政ローマ、トラヤヌスのアウレウス金貨、紀元2世紀)

今年の後半は中銀による量的緩和の縮小(テーパリング)が市場で意識され始めるのは間違いないと思います。コイン市場も一定の影響はあると思いますが、「投機的な志向を持った個人のマネー」の流入が止まるにすぎません、なぜなら前のグラフのように2013年以降もFRBはテーパリングを行いましたが、その間コイン市場は全く悪影響を受けなかったからです。コインから見ればむしろ「投機的な志向を持った個人のマネー」の流入が止まり、まっとうな市場が戻っているという意味で歓迎すべきだとすら僕は思うのです。