価値あるコインを求めてLooking for valuable coins
直近オークションの結果より(2022年8月のオークションから)
2022年8月31日
8月はいくつかの大きなコインオークションがアメリカで開かれました、今回はその結果のご紹介と今後の見通しなど思いつくまま書かせていただきます。なお今回のオークションはヨーロッパや中南米が中心で、中国はじめアジアのコインの出品はあまりありませんでした。
南米の大型銀貨
目立ったのは1700年-1800年代あたりを中心とした、中南米の大型銀貨の値上がりです、金貨ではないのでご注意ください、以下いくつかの事例を抜粋します。
・中央アメリカ1847年8レアル銀貨
(Stack’s Bowers 社サイトより転載)
うえのコインは、中央アメリカ(現グァテマラ)で1847年に発行された大型の8レアル銀貨です、落札予想額(以下EST)は600-900ドルでしたが、ハンマープライス(以下HP)は2200ドルまで伸びました、税込み総支払額では40万円を超えました。状態はPCGS-MS62でこの銘柄にしてはかなりよく、人気もあるコインではありますが、中南米の大型銀貨人気を裏付ける結果となりました。
つぎはもっとなじみ深いコインです。
・メキシコ1777年カルロス3世8レアル銀貨
(Stack’s Bowers 社サイトより転載)
金貨版である8エスクードはなじみがあるコインですが、このコインは銀貨版の8レアルです、数年前までこの8レアルなどまったく人気がなく、オークションでは不落札になるケースが多かったのですが、近年の大型銀貨人気もあり、この銘柄も高値で落札されるようになってきました、ESTは1500-2000ドルでしたが、HPは2600ドルまで伸びました。総支払額ベースでは48万円です。金貨版である8エスクードとの値差が徐々に小さくなってきた感じです。なお状態はNGC-MS62ですので決して良くはありません、中南米の状態の良い大型銀貨はまだまだ値上がりすると思います。
最後は「カバリト」の名で親しまれているメキシコの8レアル銀貨です。
・メキシコ1912年1ペソ銀貨
(Stack’s Bowers 社サイトより転載)
このコインも数年前までありふれたコインだったのですが、近年はビックリするほど高騰中です、たしかにデザインはきれいですが、カタログ価格はというとMS63クラスでも450ドルに過ぎません、本貨はNGCの評価でMS64ではありますが、HPは3200ドルまで伸びてしまいました、総支払額ベースでは約60万円ですから高額コインの仲間入りです。アジアでいえば「ブリタニア貿易銀」や「日本の円銀」などと同じ時期ですから、この値上がりは決して不思議ではないのですが、「世界のコイン市場がつながっているんだな」と改めて実感しました。そういえば僕はこの銘柄の裸(未使用クラス)を10年ほど前買ったのですが、たしか2-3万円でした。
次に値上がりが目だったのはインドです。
インド
・インドのクッチで発行された100コリ金貨1923年
(Stack’s Bowers 社サイトより転載)
このコインも最近人気が高まっています。僕は趣味でやっている「ときいろ」というネットショップで、一昨年この銘柄の1866年銘(PCGS-MS65)を51万円でお売りしましたが、本貨のHPは3400ドルでした、総支払額は63万円ほどにもなります。状態はPCGS-MS63ですから「ときいろ」の個体より2ランクも下です。実は僕はこのコインのセリに参加したのですが、ついて行けずに途中で降りました。この銘柄だけではなくインドの金貨は全体的に値上がり中です、経済発展と富裕層の拡大が同時に進むいま、インドコインの値上がりは必然だと思います。
・ハイデラバードのアシュラフィー金貨
(ときいろより)
インドの藩王国ハイデラバードで1935年に発行されたアシュラフィー金貨です。状態はPCGS-MS66と素晴らしかったのですが、HPは4600ドルでまたまたセリ負けました、総支払額ベースでは85万円ほどにもなります。このコインも「ときいろ」で販売したことがありますが、当時(一昨年)の売値は54万円でした、なお状態は1ランク上のNGC-MS67でした。買われた方はきっとお喜びになっていると思いますし、昨今のインドコインの値上がりは、自分自身の読みが当たってうれしくもあります。一方で以前のように気軽に買えなくなってしまいました。このハイデラバードも近年人気が高く、先日国内で開かれたークションでも、同グレードのMS66が総支払額ベース約80万円で落札されています。
最後にもう一枚です、これも僕が以前から割安感を指摘してきた古代インドです。
・クシャン朝のディナール、シャカ王時代
(ヘリテージ・オークションのサイトより)
古代インドも着実に値を上げてきましたが、今回の出品コインもHPベースで2900ドルまで伸びました。総支払額ベースでは53万円ほどです、状態はANACS-62ですから、この銘柄にしては良いほうですが、それでも僕のようにずっと前から古代インドを見続けてきたものにとっては感慨無量で「ここまできたか」という思いです。でも稀少性から考えて、またインド経済の将来性から考えて、古代インドはまだまだこれから伸びると思います。なにしろ同時代に帝政ローマで発行されたアウレウスと比べると、市場への出現頻度はむしろ低いですから・・・。ハドリアヌスのAUクラスなら200万円-300万円ほどは致しますよ。
以上中南米の大型銀貨とインドのみ見てまいりましたが、他にも割安感がプンプンしている領域はたくさんあります。
- アジアの1800年代後半から1900年代初頭に発行された大型の銀貨とすべての金貨群
(アンナン、ブリタニア、ピアストル、円銀、明治金貨など) - アジアで戦後に発行された大型かつデザインのよい金貨
- ブラジル1700年代-1800年代初頭までの金貨、特にフォアン5世の12800レイス
- 古代ギリシャ/帝政ローマ
- 1500年代から1800年代までのターレル銀貨
- 同上ダカット金貨
(「ときいろ」サイトより、ブラジル、フォアン5世の12,800レイス)
(「ときいろ」サイトより、イギリス、極東貿易銀「ブリタニア」)
(「ときいろ」サイトより、アンナン紹治通宝7銭銀貨)
他にも最近では
- カラフルできれいなトーンが乗った大型銀貨
- プルーフライク鑑定の金貨と銀貨
- コインではありませんが、アジアの紙幣、エリザベス肖像の紙幣
などにジワジワ人気が集まっています。
今回はふれませんが、いずれまたお話ししたいと思います。
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