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Looking for valuable coins

2023年のコイン相場を考える

2022年11月30日

そろそろ年末なので、今回は来年のコイン相場について少し考えてみたいと思います。 まずコイン相場全体からです、残念ながらコイン相場全体を指数化したものはないのですが、アメリカコインに限っては、鑑定会社PCGSが組成したアメリカのコイン指数があります、以下は同社が開示しているPCGS 3000 Rare Coin Indexです、この指数はPCGS社によって抽出された希少なアメリカコイン3000銘柄の価格を指数化したものです。 なお、上のグラフは1970年以降の長期グラフ、下は直近3年間のものです。


(PCGS 3000:1970年以降の長期グラフ:PCGS社サイトより転載)


(PCGS 3000:3年間のグラフ:PCGS社サイトより転載)

ご覧のようにアメリカコインは1889年に大相場があり、そこから永い眠りについてしまいましたが、2021年3月以降は急上昇しています。もちろんこれはアメリカコインだけのお話しですが、それ以外の地域、たとえばアジアや中南米、古代なども、印象として今年はまずまずの好結果だったように僕は思います。富裕化と格差拡大が進むであろうアジアを中心に、来年もこの好調さを維持するのではないかと思います。

ただしコインならどの領域を買ってもOKというわけではありません、イギリスや同連邦の現代コインのように相場が大崩れした領域もありますし、中国のように今後しばらく注意が必要な国もあります。

ではまずその中国コインからです。

中国

この欄で何度かお話ししてきたように、今年の中国コインは変動が激しかったです、年の前半はここ数年の急騰を引き継いだ形で急騰しました、振り返れば5月の香港がピークだったように思います。年の前半、特に目立ったのが高額コインの急騰で、自動車ダラーや孫文の三羽鳥など、オークションで年初来で1.5倍ほどの高値を付けました。が、そのあたりが頂点で一年をお通してみれば「いって帰ってこい」で元に戻ってしまいました。

今後の焦点は、さらに下げ続けるのか、それともこのあたりが底で、しばらく横ばいが続くのかです。一つの参考値は10月に開かれた「オークションワールド30回」です、中国コインは決して多く出品されませんが、それでも2枚の自動車ダラーが出品され、結果は以下の通りでした。

  • 自動車ダラー NGC-XF40⇒640万円
  • 同上     NGC-XF45⇒490万円

注)XF40のほうが高値落札されていますが、コイン自体はXF40のほうが高状態でした、鑑定会社の数字だけで買ってはいけないことがよくわかります。なお上のXF40は弊社のお勧めで、あるお客様がお買いになったものです、その方は昨年1月のオークションでお買いになりましたが、当時のお支払総額は290万円ほどでした。

(中国1928年、貴州省7銭2分銀貨「自動車ダラー」)

下のXF45のほうがオーバーグレードでしたので参考にはならず、上のXF40が640万円落札の方が参考になります、この結果は10月に香港で開かれたオークションとほぼ同等でした。

続いて11月に開かれた「銀座コインオークション」の結果も参考になります、同オークョンで自動車ダラーが一枚だけ出てきましたが、結果は以下の通りです。

  • 自動車ダラー PCGS-XF Detail⇒230万円

瑕疵の内容は「修正あり」で、その点ではかなり重度の瑕疵ではありましたが、結果は上記のように230万円だったのでマズマズといっていいでしょう。

10月の香港からひと月ほどしか経っていませんが、今のところさらに相場が下がる気配はありません、先日香港のオークション会社の方の意見交換したのですが、彼らもまた同様の感想を持っており「むしろこの程度の下げがあったほうが、マーケットにとって健全だと思う」などと言っておりました、その点では僕も同じ意見で、今年前半の上昇が異常だったのだと思います。

強い確信をもっていえるわけではありませんが、ここ一年の激しい変動はこのあたりでいったん終息し、来年は現在と同程度の安定した値動きではないかと僕は思います。

アジア

来年のアジアコインに僕は期待しています。

経済成長の重心は中国からアジアに移動し、富裕層による資産分散の需要もコインに向かうでしょう、アンナンは引き続きいいと思いますし、カンボジア、タイ、インドネシア、フィリピンなど東南アジアに関しても、やっと離陸したばかりです。

(アンナン、嗣徳通宝7銭銀貨)

そして最大の注目はインドです。インドはいま世界で最も景気拡大にわいている国ですし、貧富の格差も引き続き拡大してゆくでしょう。先日イギリスで首相に就任したスナクさんの奥さんはインドIT企業の創業者の娘さんだそうですが、なんでもお持ちの資産はイギリス王室の保有資産より多いそうです。このエリアに関しては来年という短期の時間軸ではなく、向こう数年にわたり、中国コインがたどった道を歩むことになるでしょう。

例えば古代インドのクシャン朝やグプタ朝は信じられないくらい安値に放置されていると思います、この時代はヨーロッパでいえば帝政ローマですが、両者の金貨の相場帯を比べると僕が言っている意味がお分かりいただけると思います。一例を挙げると帝政ローマのレア銘柄、高状態なら軽く300万円を超えますが、クシャン朝ならせいぜい100万円までです。

(クシャン朝のディナール)

(帝政ローマのアウレウス)

アメリカ

冒頭のように永い眠りから覚めつつあるアメリカですが、今年の勢いのまま来年はも楽しみな一年になると思います。

例えば1873年-1885年まで発行された「シーティッド・リバティ」と呼ばれる貿易銀です、この銘柄には毎年1000枚内外発行されたプルーフ貨があるのですが、いままでいかにも安すぎました、今年に入って徐々に見直し買いが入っていますが、それでもPR63程度の高状態で60万円ほどに過ぎません、割安感がプンプンです。

(1877年アメリカの1ドル貿易銀)

ありふれた20ドル金貨でも状態が良いものなら来年期待できると思います。

中南米

スペイン植民地のペルー、メキシコ、コロンビアなどで、1700年代後半から1800年代の初頭にかけ発行された大型金貨はここ数年で随分と値を上げました、その結果、相場水準は訂正され、MS(未使用)クラスなら70万円ほどの値札が付くようになってきましたし、MS63ともなれば150万円です。

(チリ1803年8エスクード金貨、カルロス4世)

ずいぶんと人気化したものですが、僕は今の相場が行きすぎだと思いません。

同時代のヨーロッパの大型金貨に比べると、これでもまだ評価不足だといってよいでしょう。でも不思議なのは同時代のブラジルコインの安さです、以下は上のコインより70年も前に、ポルトガル植民地だったブラジルで発行された大型金貨(12,800レイス)ですが、MSクラスでも120万円ほどで入手可能です。これに対し、同時期に南米スペイン植民地で発行されたフェリペ5世の大型金貨なら、MSクラスで200万円は下りません。

(ブラジル1730年、12,800レイス金貨、フォアン5世)

このように中年米コインに関しては、相場水準の安さに加え、さらにブラジル大型金貨の安値放置が見られます、来年一年で相場が適正化されるとは思いませんが、少なくとも値下がりの心配なく買える領域ではないかと思います。

そのほか

そのほかの領域で安心感があるのは古代ギリシャ・ローマです、この領域は相場の変動が小さく、しかも徐々に相場帯も上がりつつあります、短期的な大儲けは期待できませんが、来年も安心して買える領域です。

(BC320年、古代マケドニアのスターテル金貨)

他に推奨したいのは神聖ローマ(16世紀以降のドイツ、オーストリア、ハンガリー)のターレルです、銘柄が多く専門性が求められますが、それだけに新興コイン商の煽り系マネーが入りにくい領域です、デザインや技術も素晴らしく、趣味の対象として、長期投資の対象として、来年もそっと仕込むには良い領域です。

(1685年、ドイツ「リュートを弾く少女3ターレル」)

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