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Looking for valuable coins

金融危機と実物資産

2023年3月31日

金融危機と実物資産、
これは僕が長年考え続けてきたテーマなので、足元のような金融不安は良い教材になります。

今回は問題の震源となったシリコンバレーバンクの引き受け先が見つかりましたし、ヨーロッパでも問題のクレディスイスがUBSによる買収で、いったん不安は終息しつつあります。が、果たしてこれでおしまいと考えていいのでしょうか。

気になる問題はAT1債(Additional Tier 1)と呼ばれる社債です、この債券は一種の劣後債で普通債に比べ高い利息をもらえる一方で、弁済順位(発行体が破綻した場合に支払われる順位)が普通債より低いのが特徴です、クレディスイスは多額(約2.2兆円)のAT1債を発行していましたが、そのすべてが無価値になるとスイスの当局はすでに発表しています。危機の伝染がこれ以上広がらなければ2.2兆円で済みますが、このAT1債はなかなか厄介です、すでに2020年時点で世界100ほどの金融機関が発行しており、その90%はヨーロッパの銀行によるもので、残高ベースで30兆年ほどあるとされています(ディールロジック調べ)。

クレディスイス債の債務不履行によって、このAT1債問題は急速に台頭しつつあり、たとえばイタリアの大手行ウニクレディトが発行するAT1債の利回りは10%から29%へ、同じくイギリスの大手行ロイズ・バンキング・グループが発行する債券も、2月末の8%から現在19%まで上がっています(債券の価格は下落)。本来なら株式の保有者が損失を引き受けたあと、債券の保有者が損失を引き受けるのがスジですが今回は逆でした、クレディスイスがUBSに買収された結果、株式の一定部分は価値を維持しながら、AT1債が無価値になるという逆転現象が起きたのです。ほかの銀行が発行するAT1債の価格が下落(=利回りは上昇)したのは当然です。

上のようにAT1債の発行残高は30兆円で、過去の不良資産の規模と比べると必ずしも大きくはありません、例えばわが国で1990年代後半から2004年前後にかけ断続的に金融危機が起きましたが、当時金融機関が保有していた不良資産の合計は100兆円を超えるといわれました。したがって万一すべてのAT1債が無価値になったとしても、金融危機に直結することはないでしょう。

ただしいつも金融危機は突然にやってきます、金融システムにかかるストレスによって、最も弱い部分の鎖が切れ、不意打ち的に金融システムのメルトダウンが起きることだってあるでしょう。しかもアメリカの金融引き締めによる景気への悪影響はこれからが本番です、なかには金融引き締めによる影響は12-18か月後に最悪期を向かえるという試算もあります(イギリスの研究機関オックスフォード・エコノミクス社による)。FRBの利上げ開始は昨年3月でした、もしこの試算が正しければ経済への下押し圧力は今年3月から来年にかけ徐々に大きくなってゆくと考えておくべきでしょう。

さらに今回の利上げで注意しておきたいのは3倍速といわれるスピードです、リーマン・ショックの一因となったといわれる利上げ(2004年6月から2006年6月)と比べると、その速さと幅の大きさがわかります。

□リーマン・ショック直前:2004年6月時点の1.0%から2006年6月時点の5.25%まで4.25%政策金利の引き上げ

□今回:2022年3月時点の0.25%から2023年3月時点の5.0%まで4.75%政策金利の引き上げ

今回もそうでしたが、リーマン・ショックや日本の金融不安の時もそうでした、金融危機は思わぬ形でやってきます、いつどのような形で危機がやってくるか予想できないなら、平時から資産の分散をしておくしか手はありません、そのような観点で実物資産の組み入れは大切なのだと思います。

さらにもう一点、
下のグラフはFRBのバランスシートの推移です。

上はリーマン・ショックがあった2008年以降の推移、下のグラフは直近6か月の推移です、アメリカのFRBはリーマン・ショック以降、市場にドル紙幣を放出し続けてきました(=QE)、経済活動を活発化して金融不安を和らげるためです。2020年に起きたコロナ・ショック時も市場に大量のドル紙幣を放出しましたが、経済の正常化に伴って昨年央から逆に市場のドル紙幣を吸収(=QT)してきました、が、それも長続きしませんでした。

下のグラフのように今回のショックで再びQEは復活し、せっかく縮小しはじめたFRBのバランスシートも再拡大しています。

(FRBバランスシート2008年以降の推移:FRBサイトより)

(FRBバランスシート6か月間の推移:FRBサイトより)

この2つのグラフからわかることが一つあります。それは金融不安が起きるたび市場にドル紙幣をばらまかれ、お札の価値は薄まってきたということです。逆に言えば実物資産の相対的な価値の上昇で、大局的にみればこの流れは今後も変わらないでしょう。

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