過去に書いた経済コラムよりFrom the economic column I wrote in the past
トランプさんの頭の中
2025年4月26日
今年1月にトランプさんが大統領になってから、まだ100日ほどしか経っていませんが、この間に随分いろんなことが起きました。友好国であるカナダとメキシコに対する高関税の適用発表、世界を相手にしたとんでもない率の相互関税発表と90日間の適用延期、中国に対する前代未聞の高関税の適用と中国による報復。
株だけでなく米国債、ドルの一時トリプル安とその後の反転・・・、毎日トランプさんの気まぐれにつき合わされウンザリです。
向こう4年間、私たちはこんなイヤな思いをし続けなければならないのでしょうか。
トランプさんに政策一つ一つをみたら突拍子もないように見えますが、その頭の中を理解することによって、ある程度は次の政策を予想することができると思いますし、対策をたてることもできると思います。
今回はそんなお話をしたいと思います。
トランプさんの時間軸
まずトランプ思考の傾向について考えてみたいと思います。
明治の日本には「米百俵」で有名な小林虎太郎という偉い人がいました、当時の長岡藩は北越戦争に負け藩ごと極貧を強いられましたが、手元にあった百俵のコメの消費を我慢し、次世代のために学校を作ったというお話です。最近はこのお話しを聞かなくなりましたが、その昔、小泉元首相が所信表明演説でこの話をされたのを覚えています。
トランプさんの発想が、この「米百俵」の真逆だと考えれば次の行動が読みやすいと思います。
トランプさんはなによりまず自分が大切で、打ち出すすべての政策は「大統領在任中に見返りがあるか否か」という超短期志向に基づいていると思います。
もしこの4年の間にリターンがなければ、それは次の大統領にとって「タダ乗り=丸儲け」を意味し、これはむしろ自分自身にとってマイナスにしかならないと考えているのでしょう。
このような思考回路を持っているので、むこう4年という時間軸で見返りがないものに関心を示すことはないはずです。
トランプさん唯一の関心事
次に考えておきたいのは、トランプさんの最終目的は何かという点です。
Make America Great Againとよく言いますが、その実アメリカを偉大にすることにさほどの興味はないと思います、それより自分がどれだけの支持を集められるか、大統領任期中だけではなく、退任後もアメリカの政治に影響力を維持できるかという点に強い関心を持っていると思います。
そのためにはまず2026年11月に実施される中間選挙に勝たなくてはなりませんし、それが当面最大の関心事だと思います。
アメリカの中間選挙は大統領選挙から2年後に実施される選挙で、上院の1/3と下院のすべてが改選されます、現在の両院の議席数をみますと以下のようになっています。
- 上院:共和党53議席、民主党47議席
- 下院:共和党220議席、民主党215議席
(2024年11月15日現在)
よく「トリプルレッド」(=大統領、上院、下院 すべて共和党)と言われますが、この現状はトランプさんにとってかなり居心地がいいに違いありません、逆に言えばトリプルレッドだからこそ思い通りの政策を打ち出せるということです、でも圧倒的に共和党が議席を占めているわけではありません、上院、下院とも数議席失うだけで第二党になってしまいます。つまりかなり微妙なバランスにあるということです。
上記のような点から考えて、今のトランプさんの最大の関心事はどうやって中間選挙に勝つか、この点にあるのは間違いありません。
時系列的にみた譲歩スケジュール
中間選挙は2026年11月にありますが、そこから逆算すれば、少なくともその半年前(2026年5月)に経済は拡大期に入っていなければなりません、一般に政府の経済政策が実体経済へ影響を与え始めるまで半年はかかると考えるなら、そこからさらに半年前、すなわち2025年の後半あたりにまでに、トランプさんは「経済に対して優しい政策」に転じなくてはならない計算です。
一方で現在のトランプ関税は、以下のような経路で経済に大きなマイナスの効果を与えます、
- 関税の引き上げ⇒輸入物価の上昇⇒消費の減退⇒企業活動の低下⇒景気後退という最悪の結果
しかも世界は日本や韓国のような従順な国ばかりではありません、すでに報復関税を設定した中国だけではく、同盟国のEUやカナダでさえ報復を実施または検討中です、もし世界の多数を敵に回すようなことがあれば、上記のような経路に加え
- 相手国の対米関税引き上げ⇒アメリカ企業の輸出減少⇒景気後退
に至る可能性だってあります。一方でトランプさんが好きな言葉「アメリカの製造業の復活」には早くて2年、通常4-5年、場合によっては実現不能の可能性すらあり、どう考えても計算高いトランプさんの時間軸にはあいません。
このような点から考えて、トランプさんはいずれこの関税攻撃が割に合わないと気づくはずですし、もしかしたらすでに気づいているかもしれません。
いずれにしても先ほどのように「2025年の後半あたりまでには経済に優しい政策に転換」するはずで、そこを意識するならば、90日の猶予期限がくる7月8日までには相互関税を撤廃もしくはハードルを下げる必要があります。
さらに夏あたりからは経済に対してプラスになる政策、たとえば規制緩和や減税などを打ち出すことになるとみております。
時系列にまとめると以下の感じです。
2025年7月までに:相互関税での譲歩(一部取り下げ、もしくは緩和)、対中歩み寄り
2025年8月以降もしくはソク:規制緩和や大規模減税の発表
2026年なかばあたりまで:経済の回復期入り
2026年7月:建国250周年の式典
2026年11月:中間選挙
しめくくり
もう一点トランプさんの行動の特徴を挙げるなら、それは柔軟性だと思います。悪く言えばポリシーの欠如です。
たった一日で態度を変える人の行動に一喜一憂することに意味があるでしょうか、それよりトランプさんの最終的な目標をおさえ、そこからどのような行動をとるかを予想するほうはよほど有益だと思います。
たとえば株式投資です。
相互関税で株価は大きく下げましたが、上記のような基本的な行動パターンをおさえておくと、日々のSNSで売ったり買ったりすることの無意味さがわかります、また逆にこのような行動パターンを理解しておけば、トランプさんを利用して株で儲けることも難しくはありません、「人の行く裏に道あり花の山」です。
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