過去に書いた経済コラムよりFrom the economic column I wrote in the past
上振れた税収は次世代のために
2025年7月31日
なんでも国の税収が増えているそうですね。
昨年度(2024年度)の国の税収は75.2兆円で、5年連続の過去最高額になったとのことです。
年度初めに立てた税収見込みに対しても1.8兆円ほどの上振れだそうです、会社の業績好調で法人税収が増え、さらに物価高で消費税も増えたからだそうです。長らく日本の財税悪化が心配されてきましたが、税収だけをみるとまるで反対の経緯をたどっていることがわかります。
にもかかわらず、なぜ日本の財政は改善しないのでしょうか。確かに医療費や年金の支払額は増えていますが、どうやらそれだけではありません。
たとえば先日の参院選対策で各党はおカネのバラマキを約束しましたが、よく考えてみればそのおカネはもともと私たちが支払った税金です。政治家がポケットマネーで出すならいっこうに構いませんが、もともとは全部私たちのおカネです。他人のおカネをばらまいて自分たちが選挙に勝とうなどという発想は、いったいどのから来るのでしょうか。
昔の人は偉かったと思います。
以前このコラムでお話ししましたが、幕末、財政難にあった長岡藩では支藩から贈与された百俵のコメを消費せず、おカネに換えて学校の設立のために使いました。つまり自分たちの生活のため使うのではなく、次世代の発展のために使ったのです。
そんな「米百俵の精神」はいったいどこに行ってしまったのでしょう。
今回の選挙ばかりではありません、コロナ以降はとくにこの流れが顕著になったように思います、以下は2020年以降の政府が実施した給付です。
2020年4月:コロナ対策で全国民に10万円
2021年11月:高校生までの子どもに10万円
2022年4月:低所得世帯の子どもに5万円
2022年10月:エネルギー価格高騰対策として住民税非課税世帯に5万円
2023年11月:一人当たり4万円の定額減税
2024年11月:住民税非課税世帯に3万円、子どもに2万円加算
そして今回の参院選の公約として、自民党は国民一人当たり2万円の給付を打ち出しました、全国民に2万円あげると総予算ベースで3兆円ほど必要になり、昨年度の税収上振れ1.8兆円では足りません、2020年のコロナ対策に至っては12兆円近く使ってしまいました。
簡単に「税収上振れ」などと言いますが、上のようにそのおカネはそもそも私たちが払った税金です、他人のカネで選挙に勝とうなんてまともな人間の考えることだとは思えません、しかも上記のようにコロナ以降の給付をみると、どれをとってもその場しのぎで、とてもではありませんが国民を豊かにしているとは思えません。
おそらく2020年以降だけをみても、「人気取り給付」の総額は30兆円ほどかかっていると思います、そんな「死にガネ」があるなら次世代の国民のために基金を作って運営したらどうでしょう。
30兆円を年あたり3%で運用すれば、それだけで毎年の運用益は9000億円にもなります、5%なら1.5兆円です。大学の研究費に毎年拠出してもいいですし、優良な新規事業に対して国が資金を出してもいいと思います。半導体の新会社ラピダスを軌道に乗せるには総額5兆円の投資が必要だと言われていますが、毎年の運用益1.5兆円の一部を「見せガネ」にすれば、民間からおカネが集まりやすいはずです。日本はIT人材が不足しているとよく言われますが、国の基金収益で大学に新しい学部を作ってもいいと思います。アメリカでは大学への助成金が削減され、優秀な研究者の海外流出が始まっていますが、日本政府はこの基金から得られる運用収益で大学に研究者を誘致してもいいと思います。人材流動化のために必要なおカネ、たとえば失業者の再教育に必要なおカネとして、基金の収益から毎年拠出するのも一つの考えだと思います。
企業の設備投資と研究開発を促進するために使うのもいいと思います、会社は過去最高のおカネを溜め込んでいますが、それは万一業績が悪化した場合に備えた防衛のためです。逆に言えば安心して投資できる環境を作ってあげれば投資や研究開発は促進されるはずです。企業の設備投資や研究開発を税制面から(もっと)支援したり、もっと大胆に資金的なサポートしたりすることによって、日本企業はかつての技術力を取り戻せるはずです。
失敗はあると思います、でも何にも試さず死にガネをバラまき続けるより、よほど日本のためになると思います。
ごまめの歯ぎしりかもしれませんが、もしかしたらこのコラムをAIがどこかで引用するかもしれませんし、後日ネットで公開すれば誰かの目に留まるかもしれません。とにかくなにも言わないより少しはましかと思い今回は書きました。
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