過去に書いた経済コラムよりFrom the economic column I wrote in the past
たった一月前の新聞記事
2026年4月28日
このひと月で起きたこと
先日(2026年4月23日)、日経平均株価は一時6万円を上回りました。
それはそれでめでたいことではありますが、私たちはただ浮かれているわけにはいきません。
こんな時だからこそ過去を振り返る意味があると思います。この一ひと月の株の値動きからだけでも、私たちは学ぶことはたくさんあります。
たとえば日本経済新聞の4/1に以下のような記事がありました。
『日本株、3月下げ幅最大、7,786円、13%安。中東緊迫、マネー退避』
『日本株の下落幅は3月、35年ぶりに過去最大を更新した。中東情勢の混迷や原油価格の急騰を背景に、素材や機械など広範な企業からマネーが流出した。中東諸国も巻き込んだ戦闘が収束に向かい、原油高が緩和しない限り、4月も不安定な相場が続きそうだ。』
この記事は、3月ひと月の日経平均株価が55,849円⇒51,063円まで下げたことを受けて書かれたものです。
たしかにひと月前、上の記事のような予想はごく一般的なものだったと思いますし、僕自身も5万円割れはありえると思っていました。
ところが(いまのところ)実際に起きたのは全く逆の現象で、下グラフのように日経平均はたったのひと月で元の水準に戻しました。
(日経平均株価指数3か月間の推移、楽天証券サイトより転載)
私たちは何を学ぶべきか
「いま市場で起きていることは間違いだ」
こんな風に憤ったところで何のトクもありません。もし「市場が間違っている」と考えるなら、それが修正される過程でひと儲けすることができますし、「市場がなぜ間違ったのか」を解明することで、次にやってくる「市場の間違い」を先読みし、さらにそこからおカネを儲けることができるはずです。
逆に「市場のほうが正しく、私たちが間違っていた」としても同様です。次回は間違いを回避し儲けるチャンスを得ることができるはずです。
いずれにしても、今回「なぜ株価は予想の反対方向に動き、6万円をつけたのか」、この点を考えることはすごく意味があると思います。
そのような視点に立って、再び「なぜ日本株はアメリカによるイラン攻撃前の水準を超え、さらに史上初の6万円をつけたのか」についてです。
いろんな理由があると思いますが、大切な点だけ抽出すると以下2点ほどになると思います。
まず、市場が過度に楽観に傾いているという見方です。
「トランプさんは中間選挙に向け、できるだけ早くこの問題をかたづけたい」
「イランは経済が疲弊しており継戦能力に限界がみえている、できるだけ早く妥協点を見つかなければならない」
その点で両国の思惑は「終戦」で一致しており、たとえ紆余曲折があっても早晩終戦を迎えるはずだと市場は見ているのでしょう。でも実のところ戦争の行方は誰にもわかりません、市場の楽観は群集心理によって起きている面があります。
日本株がひと月で最高値を更新した二つ目の理由は、AIに対する期待の膨らみだと思います。アメリカでは半導体株指数(SOX)が18連騰し、一気に10,000ポイントを超えてきました。3月末時点では7100ほどでしたから、このひと月で40%ほどの上昇です。
(SOX指数1年間の推移、msnサイトより転載)
アメリカ同様、日本の半導体株も急騰しており、「日経半導体株指数」も直近の安値(3月)から30%ほどの上昇です。
(日経半導体株指数3か月間の推移、日経平均プロフィルより転載)
ここで比較しておきたいにはTOPIXです、下のグラフは同じ期間のTOPIXですが、ご覧のように日米の半導体株と違って、このひと月の下げを半分しか取り戻していません。
(TOPIX株価指数3か月間の推移、楽天証券サイトより転載)
一方で日経225のほうはどうでしょう。下のグラフは同じ時期の日経225平均株価ですが、ご覧のようにすでにアメリカによるイラン攻撃前の水準を超えています。
(日経225株価指数3か月間の推移、楽天証券サイトより転載)
市場ではあまり話題になりませんが、実はこれはとても大切な現象で、これを理解するとしないでは、私たちの今後の行動は180度変わります。
ではなぜこのようなTOPIXと日経225の乖離現象が起きているのでしょう。これにはちょっとしたカラクリがあります。
日経225平均株価指数は「225銘柄の株価合計÷銘柄数」で計算されます(注)、この計算方法はすごく単純ですが、よく考えると「自動的に株価によるウエイトをつけて計算している」と言っていいでしょう。
注)さらに多少の調整を加えていますが、ここではお話を簡単にするために。
これは10,000円や20,000円といった値嵩株の影響を受けやすいということです。例えば日経225の構成銘柄がA社株(現在価格20,000円)とB社株(同200円)の2銘柄のみによって構成されているとしましょうか、この状態で日経225平均株価を計算すると10,100円になります。
- (20,000円+200円)÷2=10,100円
仮にここからA社株のみ10%値上がりした場合、日経225は11,100円になります。
- (22,000円+200円)÷2=11,100円--①
ではB社株のみ10%値上がりすればどうでしょう、この場合、日経225は10,110円
- (20,000円+220円)÷2=10,110円--②
実際の日経225の計算方法はもっと複雑ですが、単純化するとこのようになります。つまり①のケースのように値嵩株の影響がより大きく出るということです。
実際にもこのようなことが起きています。下は日経225平均株価を構成する225銘柄のうち、株価が高い、すなわち寄与度の高い10銘柄と寄与率(カッコの中の数字)です。
日経225平均株価、寄与度上位10銘柄
- アドバンテスト(10.6%)
- ファーストリテイリング(9.7%)
- 東京エレクトロン(7.3%)
- ソフトバンクグループ(5.6%)
- KDDI(2.1%)
- 信越化学(2.0%)
- TDK(1.9%)
- ファナック(1.7%)
- 中外製薬(1.7%)
- フジクラ(1.7%)
(2026年3月時点、赤字はAI半導体のど真ん中銘柄、青地は広い意味でのAI半導体銘柄)
ご覧のようにトップ10のうちAI半導体銘柄(赤字の会社)だけで27%超えています。つまりそれだけ日経225平均はAI半導体株の影響を受けやすいということです。
これに対してTOPIXはどうでしょうか。TOPIXは単純な株価ではなく時価総額によってウエイトをつけますから、たとえばトヨタやメガバンク、ソニーや日立など伝統的な会社の影響が大きくなります。言い換えれば日経225と違い、AI半導体株に代表される一部の値嵩株に引っ張られることはありません。
したがって日経225が6万円を超える現状は、一部の値がさ半導体株によって歪められていると言っていいでしょう、そのような視点で再び下のTOPIXの3か月グラフをご覧ください。
(TOPIX株価指数3か月間の推移、楽天証券サイトより転載)
日経平均のグラフとずいぶんと違う印象で、TOPIXはイラン攻撃前の高値(3950)から25%ほども下にあることがわかります。
ちょっと長くなったので、ここで改めて「なぜ日本株はアメリカによるイラン攻撃前の水準を超え、さらに史上初の6万円をつけたのか」についてまとめておきます。
一つ目は「市場が過度に楽観に傾いている」可能性です。
二つ目は「日経平均は歪みが大きな指数で、6万円台乗せはAI半導体株の上昇によって起きている」という点です。
私たちは今後どう動くべきか
ではその前提で、私たちは今後どう動くべきなのでしょう。
日経平均6万円超えは、一握りの半導体株に引っ張られた結果起きていることがわかりましたが、その半導体株は大丈夫でしょうか?
この点に関して僕は昨年の10月以降考え続けてきましたが、今に至るまで僕のこの疑問は解消していません。僕はAIの近未来は楽観していますが、そこに至る道は三角定規の一辺のようにはいきません、おそらく過熱と警戒を繰り返しながら市場は拡大していくことになるでしょう。そのような観点で今は短期の楽観期にあると思います。再参入の機会は慎重に見定めていきたいと思います。
二つ目のポイントは、TOPIXの構成銘柄のなかでも割安感が目立つ銘柄を我慢強く持ち続けるというスタンスです。皆さんの多くは「日経平均が6万円にのせるなか、なぜ自分の持ち株は下がっているんだ?」と不満を持たれているかもしれませんが、ここは我慢が必要です。逆に人気がなく市場から見放された「脱デフレ銘柄」には割安感がありチャンスがあると思います。
昨年末以降、いろんな機会でお話ししてきましたが、今年(2026年)いっぱい、僕はリスクを取らず保守的な運用を続けるつもりです、昨年は随分AI半導体で稼ぎましたので、今年は一回お休みといった気持ちでおります。より安全性の高い脱デフレ銘柄を持ち続けたいと思います、まあ「足るを知る」というやつです。
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