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From the economic column I wrote in the past

米中貿易摩擦の行方

2018年3月

先週からまた世界の株式市場は大荒れです、なんでもアメリカのトランプ大統領が発表した、中国からの輸入関税引き上げの影響だそうです。この発表に対して中国も即座に反応、アメリカ産の果実や畜産物に対する報復的な関税引き上げを表明しました。

世界の2大経済大国による制裁の応酬は米中間の貿易戦争を連想させますが、世界経済が密接に絡み合った現在において、貿易戦争に勝者はいません。米中だけにとどまらず、その影響はモノやおカネの移動を通して世界に伝染し、やがて実体経済に悪影響を及ぼすのではないかと懸念されているようです。

僕はこの問題に関して先日のメルマガで書かせていただきましたが、歴史をさかのぼりますと、新興の経済国が急成長し既存の経済に挑戦する過程で、必ずといってよいほど両者の間に経済的な軋轢が生じているようです。

では米中通商摩擦は今後どのように展開し、世界経済にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

この問題について考える場合、1960年代から1990年代まで続いた日米貿易摩擦は参考になると思います。この間の主な出来事をまとめてみますと、以下のようになります。

1960年代後半 日米繊維交渉
1977年から1988年まで3度にわたり 日米牛肉・オレンジ交渉
1970年代以降 日米自動車問題
1985年 プラザ合意を境に円安是正
1985年から1991年にかけ 日米半導体協議
1987年から1990年にかけて 日米スーパーコンピュータ問題
1989年 日米構造問題協議
1993年 日米包括経済協議

繊維に始まって自動車まで、30年以上にわたって日本とアメリカの間で通商摩擦が生じ、両国は断続的に問題解決に向けた協議を続けてきたことがわかります。しかもその大半は例えば自動車産業の輸出自主規制や、アメリカでの現地生産シフトなど、主に日本側の譲歩と努力によって達成されたといえるでしょう。

以上のような日米間の通商摩擦問題から、私たちはいくつかの知識を得ることができます。

まず一つ目は通商摩擦の解消は一筋縄ではゆかず、長期間に及ぶ交渉が必要だという点です。しかも一つの品目に限定されず、多品目に対象が広がってゆくという点にも注意が必要ではないでしょうか。米中の経済摩擦もおそらく同様で、その範囲は多岐にわたることが予想されます。例えば中国による著作権の侵害問題や、他国が中国に進出する際に求められる技術移転の問題など、これだけをとってもかなりの難問で、やすやすと中国が譲歩するとは思えません。鉄鋼やアルミ、玩具に家電、繊維製品や衣服など、中国からアメリカに流れる商品は多岐にわたり、その金額は年あたり60兆円を超えるといいます。日米間の交渉のように品目ごと協議してゆけば、いったい何年かかるのでしょう・・・

二つ目は問題の解決には両国の妥協、もしくは片側の妥協が必要だという点です。中国の今の立ち位置を考えた場合、同国がかつての日本のように一方的な妥協を重ねるとは思えませんが、逆に全く妥協をせず貿易戦争への道を選ぶとも思えません。お利口な中国当局者はアメリカと共倒れの道を選ばないでしょう。なにより今の中国は外需への依存度が高く、全面対決に至った場合の被害は甚大です。

一方でアメリカのほうはどうでしょう。

トランプさんの行動は予測不能とよく言われますが、それは違うと思います。トランプさんの行動を見ていると、単に信念や理念より目先の利益を優先させているだけで、逆に言えばアメリカの国益、あるいはトランプさんの個人的な利益によって政策を決める傾向が強いように思います。したがって目先の利益さえ得られれば、米中問題でも妥協の余地は十分あるのではないでしょうか。

このようなことから米中の経済摩擦はアメリカと中国、双方が妥協の落としどころを見つける形で解決に向かうと思います。が、一方でこの問題の解決は、上記のように長期的な視点で見ておく必要があるのではないでしょうか。

では株価のほうは今後どのような反応を示すのでしょう。

トランプさんが中国制裁を発表した週に世界の株価は急落しましたが、いずれ市場はこの問題が一過性ではなく、長期にわたって続くことを知るでしょう、そして米中が落としどころを探る展開を、株価は織り込み始めるに違いありません。

しばらくは振れ幅の大きな時期が続くでしょうが、やがて株価も新しい落ち着きどころを探すのではないかと考えています。