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From the economic column I wrote in the past

わが国の財政破綻は本当にないのか

2018年7月

第6章「国債の将来」
(1)国債がこんなに激増して財政が破綻する心配はないのか

『国債がたくさん増えても全部国民が消化する限り、すこしも心配は無いのです。
国債は国家の借金、つまり国民全体の借金ですが、同時に国民がその貸手ですから、国が利子を支払ってもその金が国の外に出て行く訳でなく、国内に広く国民の懐に入っていくのです。
しかもわが国の産業は十分発展しており経済が揺らぐことはありません』

なんだか聞いたような文句ですが、これは今から77年も前、日本がアメリカに対して宣戦を布告する直前の1941年10月に、当時の大政翼賛会が配布した冊子「戦費と国債」の中の一文です、カナ使いや文章を読みやすくするため僕が少し手を加えたり省略したりしていますが、おおむね書かれている内容は上記のようなものでした。この冊子は150万部も刷られ、当時「隣組」と呼ばれた、いまでいう町内会のような組織で広く回覧されたものです。

ではその後どんなことが起きたのでしょう。

1945年の敗戦から3か月ほどたち政府は『国債を大幅に償却し、膨大な国庫の重荷を整理する』方針を発表し、その後は財産税の新設、預金封鎖の実行、新円切替と国民の資産没収を行いました。同時に進行したハイパーインフレの影響もあり、政府の借金は一気に解消、つまり政府は国民への借金を踏み倒したわけです、上記「戦費と国債」発行からわずか4年後のお話しです(注)

注)この部分は2018年4月25日付朝日新聞朝刊記事をもとにしています。僕が調べた範囲では、上記記事の内容に誤りや誇張はありませんでした。

ご参考までに敗戦時点の政府借金の対GDPは約200%、これに対して現在のそれは230%です、いまでも経済評論家のなかには「日本国債の90%以上は国内で消化されている。したがって財政破綻の心配はない」と説く人も多いのですが、上記のようにそのロジックは政府が借金を踏み倒し、国民からお金を没収することを前提にしていることがよくわかります。

そういえば先日閣議決定した「骨太の方針」で、政府はプライマリーバランスの達成時を5年遅らせて2025年にしました、しかもそれは名目ベースの経済成長率3%という、ちょっとありえないほどの経済成長が前提になっています。ちなみにわが国経済の3%成長は、バブル時代の1991年度以来ありません。

政府は2021年に進捗状況を中間検証するといっていますが、その時点で高すぎる経済成長の前提が明らかになり、2025年のプライマリーバランス達成未達が見えてきたらどうするのでしょうか・・・また骨太の方針で達成時期を延期するのでしょうか。そうこうしているうちにも財政はどんどん悪化してゆきます、

ちょっと心配症に過ぎるかもしれませんが、用心するに越したことはありません。お国が財政健全化をないがしろにするなら、私たちは独力で自分の資産を守るしかありません。