過去に書いた経済コラムよりFrom the economic column I wrote in the past
次の震源地はどこか
2018年9月
いまでも僕はリーマン・ショック時のことをよく覚えています、あのときは本当にひどかったですね、日経平均は月に何度も1000円以上値下がりましたし、アメリカ株や新興国株もビックリするほど下げました、株と逆相関といわれていた債券も一時は下げました。ヘッジファンドは株式と無相関といわれていましたが、あのような大きなショックを想定していなかったファンドが多く、マネージド・フューチャーズなど一部の戦略を除くと、株式と似たり寄ったりでした。なかには解約停止状態に陥り、そのまま閉鎖してしまったファンドもありました。
当時はよく100年に一度の金融ショックといわれましたが、その100年に一度の大きなショックがなぜ起きたのかという、素朴な質問に対する納得のいく説明はいまだに耳にしません。確かにサブプライムと呼ばれる低格付けの債務を束ねたものに、高い格付けを与えた格付け会社の責任は重いと思います。が、なぜそのようなポンジースキーム(注)がまかり通り、大手の金融機関が大量に販売できたのでしょうか。
注)いかさま
そこの部分をちゃんと理解できない限り、私たちはまた同じ過ちを起こすに違いありません。この問いを突き詰めてゆきますと、やはり最後は人間が持っている異常な欲望に行きつかざるをえません。企画する人、組成する人、格付けをする人、販売する人・・・このポンジースキームに携わるすべての関係者が持つ欲が、各段階で少しずつ積みあがった結果、本来ほとんど価値のない金融商品が、あたかも投資に値する商品、儲かる商品にでっち上げられて行き、最後にはそのバブルが崩壊する・・・もともとすべての関係者はサブプライム・ファンドの怪しさを知ったうえで組成なり販売なりしていたわけですから、ひとたびバブルが崩壊すればあとは我先です。長い時間をかけて膨れ上がったバブルですが、破裂するときは一瞬でした、そして逆回転のエネルギーは人間の恐怖心と集団心理です。
もし上記のようにリーマン・ショックの本当の原因が欲望と恐怖心、そして集団心理という人間が本源的に持っている天性に由来するなら、その再発は止めようがありません。形を変えて何度も危機はやってくるでしょう。
人間の欲望が膨らむにはエネルギーが必要で、逆に言えば人の欲望はエネルギーを得て大きく育つのではないでしょうか、この場合のエネルギーはマネーです。人は10万円もっていれば100万円欲しくなりますし、100万円持っている人は1000万円欲しくなるものです、これは僕の職業体験から言えることですし、なにより自分自身がそうです。そのような観点で金融の世界を見ればどうでしょう。100年に一度のショックからの回復を目指して中央銀行が大量のマネーを供給した結果、世界のマネーの総量は、当時と比べ4倍程度(注)に膨れた計算になるそうです。
注)マネタリーベースの増加率、ただし日米欧の合算値
ここで一つまた素朴な疑問に行き当たります。お金の総量と人間の欲望のあいだには、なんらかの因果関係があるのか否かという点です。
僕はあると思います、なぜなら人間は持っているお金の量が増えるほど、さらにお金に対する欲が大きくなると思うからです、これは例えば10万円しかお金をもっていない人と、10憶円お金を持っている人の、お金に対する執着心を比べると明らかではないでしょうか、残念ながら・・・確かぼくはもう何年も前にこのテーマについてメルマガを書いたことがあります。この見方が正しければ、世の中に供給されたお金=マネタリーベースが増えれば増えるほど、お金に対する欲の合計もまた大きくなってゆくことになるはずです。
この先は考えるのも怖いですが、お金の総量が当時と比べ4倍に達したいま、少なくともリーマン・ショック級のバブルは既に世の中のどこかで育っている可能性があるのではないでしょうか。
- 中国の債務拡大(政府部門と企業部門の総債務残高が急膨張)
- 日本国債のバブル(日銀による大量の国債購入の裏返し)
- 世界中で台頭するポピュニズムと経済の共振現象
などすでにその兆候がありますが、これ以外にも私たちが知らないうちにバブルはどこかで膨らみつつあるかもしれません、そもそも事前に気が付くようなバブルなら、それはバブルとは言えません、ですからあらかじめバブルは予見できるものではなく、崩壊して初めて気づくものなのかもしれません。ちょっと怖い話ですみません、今回は思いつくままバブルについて書いてみました。
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