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From the economic column I wrote in the past

現実味を帯びてきた中国による覇権とその対策

2018年11月

確かこのレポートかメルマガで僕は、中国が世界の覇権を握る可能性について書かせていただいた記憶があります、それほど昔のことではなく、確か一年か半年ほど前のことです。それまでの僕は中国経済に対して懐疑的で、いずれ「中所得国の罠」に陥り、例えばタイやロシアのように低成長時代に入ると考えていました。

僕がその見方を変えた一つのきっかけは、例えば同国内で急速に普及した自動車や自転車のシェアビジネス、あるいはスマホによるキャッシュレス経済やバイドゥーやアリババなどが主導する、ネット経済の予想外の進展です。

わが国と違い中国は、当局の規制がおおらかで、このような庶民発の新ビジネスが雨後の筍のように育ちつつあります。スマホや太陽電池、EVなどテクノロジー分野も確かに急成長しつつありますが、それらの分野は単に日本や欧米から盗んだ(あるいは正当な経路で移転した)技術の流用に過ぎません、ですからいずれ先進国へのキャッチアップとともに、成長の速度は鈍化すると高をくくっていたのですが、上記のような実際の国民生活から発生した新しい分野は少し様子が違います、これらの分野はどこに真似っこの対象があるわけではなく、中国の国民が日々の生活のなかで築いた、独自の技術というか文化だといえるでしょう。日本人から見ると多少ゴチャゴチャしていますが、それこそが中国だと思います。

過去に覇権を握った国の歴史を振り返りますと、いずれもそれまでになかった新しい技術で世界を席巻しています。例えば16世紀から17世紀にかけてスペインやポルトガルは航海技術で世界を制しましたし、その後覇権を握ったイギリスは蒸気機関を核とした産業革命が成長の原動力でした。第二次世界大戦以降のアメリカは複合的ですが、それでも初期のうちは自動車や家電、コンピュータなどの先端技術、その後は半導体やコンピュータソフトや独占的なOSで世界を席巻しました。さらにその後は金融やGAFA(注)などが主導する新ハイテク分野で世界のプラットフォームを握り、分野を移しながらも世界経済を席巻し続けたといえるでしょう。

注)Facebook,Amazon,Apple,Googleの4社のことです

そのような視点で中国を見るとどうでしょう。

中国は新しい覇権国になるのでしょうか、それとも先進国へのキャッチアップ期間が終わり、近々成長が鈍化し、そのほか大勢の中所得国の位置づけに収まってしまうのでしょうか。

確かにハイテク分野では目立って新しい技術や便益を同国は生み出しておらず、仮にこの世界に中国がいなくても、私たちは特に不便を感じないに違いありません。言ってみればただ安いものを大量に作っているだけです。でも例えばキャッスレス経済やシェア・エコノミー、あるいはドローンの利用技術やネット通販などの分野ではどうでしょう。この分野では中国の存在は巨大で、いまこの瞬間も新しいビジネスを生み出しつつあります。ひょっとしたら今後世界が思いもよらない新技術が中国から生み出され、私たちの生活を一変させる可能性だってあるかもしれません。少なくともここ数年の同国を見れば、そのような期待を抱かせる何かを中国はもっているように思えます。その場合、その先に見えてくるのは米中二強時代、さらには中国による覇権です。

確かに同国では、地方政府が長年にわたりため込んだシャドー・バンキングの問題や、環境汚染問題、不動産の過剰開発、少子高齢化、ネット言論の規制、富の偏在など多くの社会問題を抱えていますが、他国の事例をみますと、経済成長はそれら諸問題を覆い隠して進行する傾向にあります。

さてここからは資産運用のお話しです。

仮に中国が覇権を握るところまでは行かなくても、当面はどうやら中国経済の拡大はしばらく続きそうな勢いです。例えば数年後に経済成長率が4%程度に落ちたとしても、なにぶん同国のGDPは1400兆円近くもあり、わが国の3倍ほどのサイズです。1400兆円が話半分としても、4%成長による効果は決して小さくはありません。豊かになった中国人は、今後も自ら欲しいと思うものに投資を続けるでしょう、政府による海外投資の規制はありますが、「上に政策あれば、下に対策あり」の国民性で、そこが勤勉でまじめな日本人の違いです。紙幣への信頼、特に自国通貨への信頼が薄く、お金の匂いに敏感な彼らは、海外の資産、なかでも現物資産への投資へ傾斜してゆくのではないでしょうか。

そのような近い将来を想定するならば、以前にもお話ししたかもしれませんが、「中国人が欲しがる資産を先回りして買え」が正解ではないでしょうか、金や銀など貴金属は市場規模が大きくさほど影響があるとは思えませんが、不動産、コイン(なかでも中国のコイン)、カラーストーン(なかでも赤い石や緑の石)は、供給量が限られています、聞くところによると中国の新疆ウイグル自治区で採れる和田玉(「わだだま」ではないですよ、「ホータンギョク」といって中国人が大好きなヒスイの一種です)は、ここ10年で価格が100倍になったと聞きます。さらに資産性が高く希少な石、たとえばヒスイやルビー、スピネルなどは、きっと良い投資対象になると僕は思っています。つまりこれは中国による覇権という、ちょっと憂鬱な将来に保険をかけておくということです。