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From the economic column I wrote in the past

いつまで続けるのか、日銀のETF買い

2019年4月

「日本のETFの70%を日銀が持っている」と聞けば、多くの読者は驚かれるのではないでしょうか、日銀がETFを経由して日本株を買い始めたのは、民主党政権時代の2010年です、当時はリーマン・ショックの後遺症が続いており、ETF購入による株価引き上げを後押しする気分が政権にあったのだと思います。当時の日銀総裁は白川さんでしたが、白川さんにとってはきっと大きな決断ではなかったでしょうか。なぜなら特殊な例を除き、中央銀行による株式購入など世界中を見渡してもかつてなく、株の購入が、果たして中央銀行にとって許されるのか否かという迷いはあったはずです。

はたして株の買い入れが、中央銀行が行う金融政策として許容されるか否か・・・この問題は今でも疑念を持たれたままです、白川さんに続いて日銀総裁に就任した黒田さんは、ETFの購入を続けたばかりか、その買い入れ額を拡大して現在に至っています。その結果が冒頭の「日本のETF残高の70%を日銀が持っている」という状態なのです。

ある会社からみて、上位10位以内の株主のことを「大株主」と呼びますが、その基準で言えば、日本の上場企業のうち約半数の大株主が日銀になってしまいました。

なぜ日銀が株を持つとダメなのか

そもそも日銀の役割は、金融政策を通しての物価の安定と金融システムの安定ですが、果たして株の購入が金融政策の範疇に収まるのでしょうか、日銀の理論によれば、直接ではなくETFを通した株の購入なので、個別企業の経営への関与を行うわけではないということでしょうが、果たしてその点はどうでしょう。

逆に経営に関与しないことが企業統治の緩さにつながり、結果的に個々の企業に対し、逆の意味で関与していることにならないでしょうか。

もしこの見方が正しければどうでしょう。

日銀によるETF買いは、単に中央銀行の役割から逸脱しているにとどまらず、かえって日本企業を長期的に弱体化させていることになりはしないでしょうか。

そればかりではありません。

日銀によれば日経平均が18,000円を切れば、日銀が保有するETFは含み損状態になるとのことです、今でこそ日経平均は22,000円台ですが、振り返れば昨年末に世界的な株価の急落があり、日経平均は19,000円に接近する場面がありました。株価は常に経済を反映して上下に振れるもの、当然これからも18,000円割れはあるでしょう。

その場合、日銀が保有するETFに含み損が発生し、その結果、日銀に対する信認は失われるでしょう。

債券には満期があるが、株には満期はない

もうひとつ日銀が株を保有することに対する懸念があります。

それは株には満期がないという点です、日銀だけでなく、アメリカのFRBにしてもヨーロッパのECBにしても、大量の国債を保有しています。これはリーマン・ショックによる「景気底割れを防ぐため、緊急避難的に大量の国債を購入してきたからです。その結果、FRBにしてもECBにしても、巨額の国債を持ってしまったのですが、国債には満期があるのが救いです。中央銀行が保有する国債は、いずれ満期の到来とともに償還され、中央銀行が保有する国債の残高は自動的に減ってゆくことになります。

これに対して株はどうでしょう、株には国債と違って満期がありませんので、日銀が手持ちの株を売らない限り、その残高が減ることはありません。むしろ今でもETFを通した株の買い付けを行っていますので、この調子で株の購入による量的緩和を進めると、日銀保有の株は延々と増え続けます。

それでも日銀は「ETF買い」をやめられない

さらに今後の日本経済や世界の経済を見渡してみると、どう考えても景気の順調な拡大⇒
2%インフレと達成⇒量的緩和の停止というように、日銀の思惑通りには行きそうにありません。中国の成長鈍化や米中貿易摩擦、アメリカにおける減税効果の一巡など心配事も多く、おそらくうまくいって世界経済や日本経済は現状維持が精いっぱいではないでしょうか。

このような足元の世界経済を先読みし、すでにFRBは利上げ停止宣言を行いましたし、今年いっぱいで量的縮小もやめる方向です。ECBもヨーロッパ経済に対して懸念を深めており、予定していた利上げを見送る方向です。

このような状況で果たして日銀は「ETF買い」をやめられるでしょうか。

おそらく逆で日銀は、再び量的緩和のアクセルを踏まなければならない状況にあるといってよいでしょう。日銀がこの問題をどの程度深刻にとらえているか知りませんが、日銀によるETFの大量保有によって、我が国はまた一つ新しい問題を抱え込んだといってよいでしょう。

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