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From the economic column I wrote in the past

日本円の近未来

2020年3月

1年や2年前という時間軸では気づかないことでも、10年、20年単位で考えると大きな変化を実感することがよくあります。

たとえば日本人とアジア人の購買力の力関係です。

今から20年前の2000年当時、日本を観光で訪れるアジア人は稀でした、なにしろ当時の日本は世界的にみて物価の高い国で、外国人が日本を避ける理由の一つが物価の高さでした。

あれから20年・・・日本人とアジア人の購買力は逆転しつつあります、もちろん平均値をとった場合、まだまだ日本人の相対的な富裕度は保たれていますが、中国はじめアジア諸国の貧富の差は日本の比ではありません。

アジアの富裕層と平均的な日本人を比べると、購買力の差は歴然で、これは近年増え続けるアジア人観光客の行動を見ても明らかです。

現実味を帯びてきた基軸通貨の交代と日本円の行方

では向こう10年、20年単位で将来を見るとどうなのでしょう。

残念ながら中国はじめアジア諸国の富裕化と、相対的な日本の貧困化はさらに進むのではないでしょうか。といっても日本人が貧困化するということではなく、あくまでアジア諸国と“比較の上で見た場合の貧困化”です。

それでもこれは私たちや私たちの子供たちの世代にとって、決して好まし光景ではありません。

可能性が高いとは思えませんが、さらに中国経済が拡大し、基軸通貨がドルから人民元に移るようなことがあればどうでしょう。

すでに日本はいろんな意味で中国の影響を強く受けていますが、この場合、政治的にも経済的にもより強く中国の影響を受けることになるはずです。たとえば米国債に代わって私たちは中国の国債に投資しているかもしれませんし、人民元建てで金や原油の売買をやっているかもしれません。経済面でも私たちはよりアジアとの結びつきを深めてゆくでしょう、もしかしたらマレーシアやインドネシアの中流リタイア層が、老後の生活拠点として日本を選ぶようになっているかもしれません。今とは逆に・・・

円がアジア最強の通貨ではなくなり、人民元を筆頭にしたアジア諸国通貨群のうちの、一つ(One of Them)になってしまう可能性も十分あると思います。

近未来の私たちの生活は

ではそのような世界の中で、私たちはいったいどんな日常を送ることになるのでしょう。繰り返しになりますが、日本の相対的な貧困化が進んだとしても、それはあくまで“相対的”なもので、今と比べると私たちの生活は便利で豊かなものになっているでしょう。

ですから決して悲観するようなことではないと思いますが、それでも長らく私たち日本人がアジアの近隣諸国に対して持ってきた、一種の優越感は過去のお話しになるのではないでしょうか。そして身近にいるアジアの富裕層をみて、うらやましいと感じることが増えてくるのかもしれません。就職模様も様変わりし、大学卒の優秀な人材のあいだでは、日本の大手企業ではなく、中国やインドのIT企業やメーカーなどが、あこがれの会社になっているかもしれません。

生まれた国を唯一のよりどころとした優越感ではなく、自らの努力の結果身に着けた能力や専門性、あるいはその結果、手にすることができた財産への充足感・・・よく考えてみれば、これは私たち日本人にとって、いまよりよほど健全な心の持ちようなのかもしれません。