スマートフォン版に切り替える

From the economic column I wrote in the past

コロナで拡大する貧富の差

2021年2月28日

報道で「ここ数年で貧富の差はさらに拡大した」などよく耳にします、僕自身の体感でも、今の日本は貧富の差が拡大する方向に進んでいると思います。僕は首都圏に住んでいて、たまに仕事や私用で東京の六本木や白金などリッチな人がたくさん住んでいる街に行きますが、場所によっては「ここはホントに同じ日本なんか?」と驚いてしまうことがあります。住んでいる人の身なりや醸し出す雰囲気、街なかを走る車、散歩で連れているワンコなど、どれをとっても明らかにフツーの庶民ではありません。起業して儲けた人、その会社を売ってさらに儲けた人、そのお金で株に投資してもっと儲けた人など・・・、リッチになった理由は様々でしょうが、日本でも明らかにお金持ちは増えていると思います。

一方でそうでない人も多いように感じます。

たとえば日本人の平均給与はこの20年ほどほとんど増えていませんが、中央値でみれば下がっている可能性すらあると思います。給与水準だけではありません、統計をみるとすぐ首を切られる派遣やバイト、パートなどが増えており、それがさらに格差拡大に拍車をかけているようです。今回のコロナをみてもそのような統計を肌感覚として実感することができます、例えばコロナ前、僕は事務所の近所の定食屋さんで昼ご飯を食べていたのですが、その店はもうありません。馴染みの店員さんが今何をしているか考えると胸が痛みます、きっと日本中のあちこちで同様のことが起きているでしょう。

格差の拡大は金融政策に影響を与える

今後について考えても、現状が改善する方向に進んでいるとは思えません。コロナ後もカイシャは生産性を上げるためリモート化やIT化、ロボ化など推進して行くことになるでしょう、生き残るためには当然のことだと思います。そのような社会に適応しお給料を増やす人も出てくるでしょうが、大半の従業員にとって、このような変革は厳しい結果を招くことになると思います、考えてみれば当然です、今まで自分自身の手足や頭を使ってやっていた仕事が、ITやロボに奪われてしまうのですから・・・。

このような格差拡大は日本ばかりではありません、むしろ日本はまだましな方かもしれません、先日FRB議長のパウエルさんは議会証言で「アメリカ経済は雇用・物価の目標から程遠い」と発言し、金融緩和を長期にわたって続ける見通しを示しました。これはヒスパニックや黒人など低所得層の収入が、なかなか回復してこないからでもあります。

つまり

・貧富の差の拡大⇒コロナもあって貧困層の収入が伸びない⇒雇用と物価が目標水準に届かない⇒金融緩和(低金利と流動性供給)を止められない

ということで、言い換えれば格差の拡大がFRBの金融緩和を後押ししているとも言えるでしょう。もっと簡単に言えば貧困層への配慮から金融緩和を止められないということです。

ではもしFRBがこのまま金融緩和(低金利と流動性供給)を続ければいったいどうなるのでしょう、上記のように金融緩和の好影響を最も大きく受けるのは、株をたくさん持つ富裕層です、株を大量に持つ富裕層はますますお金持ちになる一方で、本来助けるべき貧困層にはなかなかその恩恵が届きません。

その結果、以下のような循環が出来上がってしまうことになるでしょう。

・貧富の差の拡大⇒貧困層の収入伸びない⇒雇用と物価が目標水準に届かない⇒金融緩和(低金利と流動性供給)を止められない⇒資産価格の上昇⇒富裕層がさらに富裕化⇒貧富の差の拡大⇒貧困層の収入伸びない⇒・・・

コロナはいずれ終息しますが、また別の危機はやってきます。動物の生活圏と人間の生活圏はますます接近するでしょうから、また新たな感染症が出てくるかもしれません。でも危機はいつも違う顔をしてやってきます、実体経済とおカネの量はさらにアンバランスになり、再びリーマン・ショックのようにマネーの暴走が起きても不思議ではありません。

もし私たちが財政出動と金融緩和以外に新しい処方箋を見つけられないとしたら、世の中に滞留するおカネの量は今後も増え続けるしかありません、そしてその先にあるのは上記のような貧富の差の拡大とアメリカのような社会の分断です。

この問題について私たち日本人も真剣に考えなければならないと僕は思います。

単なる入札代行ではなく、このサイトの主催者である田中がコンサルさせて頂きます、
コイン初心者の方でも安心してご利用いただけます。