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From the economic column I wrote in the past

富の集中はなぜ起きるのか~統計学的アプローチ~

2021年2月28日

多くの方は5勝5敗ならトントンだとお考えだと思いますが、資産運用の世界ではそうはいきません。

たとえば100人が参加するコイントスゲームについて考えてみましょう。このゲームでは全ての参加者は100万円を元手にゲームを始めます。

一人ずつ順番に10円玉を投げ、オモテがでたらその人の勝ちで「親」から手持ちのお金の20%相当額をもらえますが、ウラが出たら負け、「親」に対して手持ちのお金の20%を渡さなければなりません。

以上のルールで100人の参加者が順に10円玉を投げてゆき、このサイクルを10回くり返したとしましょう。

たとえばある人は

  • 「勝ち」「勝ち」「負け」「勝ち」「負け」「負け」「負け」「勝ち」「負け」「勝ち」

というように5勝5敗となり、またある人は

  • 「負け」「勝ち」「負け」「負け」「負け」「勝ち」「負け」「勝ち」「負け」「勝ち」

というように4勝6敗に終わるといったイメージです。

結果としては、全ての参加者の勝敗は10勝0敗から0勝10敗までのうち、いずれかの組み合わせになります。

ではそれぞれの組み合わせごと、最終的に参加者の所持金はいくらになるかみてみましょう。

結果は以下の通りです。

  • 10勝0敗(620万円/0.1%)
  • 9勝1敗(412万円/1.0%)
  • 8勝2敗(275万円/3.5%)
  • 7勝3敗(183万円/11.7%)
  • 6勝4敗(122万円/20.5%)
  • 5勝5敗(81万円/24.6%)
  • 4勝6敗(54万円/20.5%)
  • 3勝7敗(36万円/11.7%)
  • 2勝8敗(24万円/3.5%)
  • 1勝9敗(16万円/1.0%)
  • 0勝10敗(11万円/0.1%)

注1)カッコ内の左側数字はゲーム終了後の所持金

注2)カッコ内の右側数字は発生確率

ここで特に注目して頂きたいのは、5勝5敗のところです。

この「5勝5敗」という組み合わせには、全体の24.6%と最も多くの参加者が分布していますが、彼らの所持金はご覧のように81万円となっており、元手の100万円を下回ります。つまり5勝5敗でもおカネは減るのです。

これってなんだかヘンではありませんか?

感覚的に勝率5割なら所持金はトントンで100万円のはずですが、実際には20%近くも減ってしまっています。

なぜこんなヘンなとこが起きるのか?

ではなぜこんな不思議なことが起きるのでしょうか?この結果をグラフにしてみるとよくわかります、横軸は「勝敗」、縦軸はこのゲームを終えた時点の残金(単位:万円)です。

上のグラフをみると左に行けば行くほど急速に残金は増えてゆくことがわかります。

このグラフについてもう少し考えてみましょう、例えば「1勝8敗」や「2勝7敗」というように負けが込んでかわいそうな人が、最後に一つ勝ったところでおカネは大して増えません、「1勝8敗」の人は最後にコインを投げる時点の手持ち資金は13万円に過ぎませんので、この人が最後の勝負に勝って20%おカネが増えたところで知れているのです、これに対して例えば「8勝1敗」のリッチな人はどうでしょう。

最後のコイン投げでこの人が勝った場合、持ち金は343万円⇒412万円へと大幅アップです。

このように金額ではなく率(この例では20%)でおカネが増えるので、勝ちが重なるほどリターンが高くなるのです、逆におカネの無い人は勝っても大して増えません。

このグラフからもう一つ大切なことを私たちは知ることができます、それは半分以上の参加者は資産を減らしている点です、さきほど僕は「5勝5敗で減る資産」と申し上げましたが、上のグラフをみてもこれが事実だとわかります、ご覧のように「5勝5敗」の人の資産は100万円を切っています、言い換えれば半数以上の参加者は元手を減らしています。

わたしたちはこの事実をどうとらえればよいのでしょう。

僕は「偶然に支配されたゲームにおいて、勝率50%では資産を増やすことができない」、そして「一部の大勝ちする人におカネが集まってゆく」のだと思います。

上記は

  • 勝率5割
  • 完全に運には支配された

ゲームの中でのお話しですが、現実の世界でもこれに似たことが起きていると僕は思います。

さらに申し上げれば、現実の世界では資産運用のスキルに差がありますし、ビジネスのスキルでも優劣があります。これはどういうことかといいますと、コインゲームという偶然に支配さえたゲームより、現実の世界はさらに一部の人が連続で勝つ確率が高いということです。ですから実際には、上記の結果よりもっと富の集中が起き安いのかもしれません。

たしかに近年、世界的に貧富の差が社会問題になりつつあります。

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