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From the economic column I wrote in the past

プロ野球の育成選手制度について考えてみる

2021年11月28日

皆さんは育成選手という制度をご存じでしょうか、育成選手制度はドラフトから漏れた、将来性のある若手を育成するために作った制度です、なんでも広島カープの発案で2005年に始まったそうです。

育成選手に登録されても即一軍の試合には出られませんが、二軍で活躍が認められれば、支配下選手に登録されて一軍の公式試合に出るチャンスがでてきます。簡単に言えば育成選手というのはテスト採用のようなもので、3年の間に成果を出せば正規採用(支配下登録)されるのです。

僕はこの育成選手制度は、日本プロ野球界が作った制度の中で一番うまく機能した制度の一つだと思います、最近ではソフトバンクの千賀投手や甲斐捕手など育成出身の選手が、東京オリンピックの日本代表として活躍しましたし、今シーズン巨人でスタメンに抜擢され大活躍した松原選手も育成出身です、阪神では代打の切り札、原口選手が頑張っていますし、小野寺選手も活躍中です。

こんな育成出身選手の活躍を見ていますと、僕はいろんなことを考えてしまいます。

たとえばもしこの制度がなければ、東京オリンピックで日本は金メダルをとれたでしょうか。もちろん一人や二人の選手の力で優勝したとは言いませんが、特にキャッチャー甲斐の活躍は群を抜いていたと思います。プロ野球も同様で、甲斐と千賀がいなければ、近年のソフトバンクの戦力は相当ダウンしていたのではないでしょうか、巨人にしても同様で、松原や増田がいなければ、今年はBクラスに終わったかもしれません。

そういった観点から考えますと、育成選手制度は埋もれていた才能を活用する素晴らしい制度だということがわかります。もしこの制度がなければ千賀や甲斐は野球をあきらめ、野球が上手い普通のサラリーマンになっていたかもしれません。もしそうなっていたとしたら、それは本人たちばかりではなく日本のプロ野球界にとって大きな損失です。

よく考えますと、これはプロ野球だけの話ではありません。

実は私たちの周りには、こんな才能をもっていながら、それを埋もれさせてしまっている人がたくさんいるのではないでしょうか。だとすればそれは当人ばかりではなく、日本全体にとっても損失です。才能や能力を持っているにもかかわらず、それを社会のために生かしていないのですから・・・。

ではなぜ一般の会社には、プロ野球の育成選手のような制度がないのでしょうか。

新興の会社の中には「お試し就職」のような制度もあるようですが、社会全体に定着しているとはいえません、特に一部上場の優良企業でそのようなお話を聞いたことがありません。理由の一つはプロ野球と違い、会社員は結果が見えにくいという面があるからだと思います。でもそれだけでしょうか。

僕は他に理由があると思います。

例えばある人気企業Aという会社があったとしましょうか、A社は人気の会社だけあって就職希望者はいくらでもやってきます、有名大学を卒業した学生やMBA、公認会計士などの有資格者、帰国子女などもたくさん入社試験を受けにやってくるでしょう。そんなより取り見取りの中から、果たして隠れた才能を持った人材をお試し入社させ、その才能を育成しようなどという面倒くさいことを、A社の採用担当は考えるでしょうか。

まあそのあたりが少人数精鋭性、実力主義のプロ野球と違うところでしょう。

このようにして一般の会社では埋もれた人材を発掘することができず、当人たちも才能を埋もれさせたまま一生を過ごすことになるのです、ああもったいない・・。ただでさえ日本は少子化が進みつつありますし、生産性の停滞から30年近くもお給料が増えていません。埋もれた人材の発掘は、日本経済の復活という観点でも他人事ではありません。

話が少し飛躍しますが、社会の変革期には、このような埋もれた人材が集団で頭角を現すことがよくあります、比較的近いところでは戦後の日本です、今まであった制度がリセットされ、その混沌の中から多くの人材が出てきました、松下電器、ソニー、ホンダ、シャープ、トヨタ・・・、その後の会社や日本の成長を支えたのは、この時期に入社した多くの才能だったことは間違いありません。

明治維新も同様だったと思います、新政府を作ったのはせいぜい30歳前後のいわゆる“若造”でした、江戸時代の硬直化した社会では陽が当たらず、生涯を終えるはずだった人たちです。

明治維新から約150年、太平洋戦争から約80年前が経ちました。

埋もれた才能を生かし、経済を再加速するという意味では、今の硬直化した社会制度など維持しようとせず、いっそのことリセットしてしまったほうが、よほど社会全体の幸福が得られるのではないかとすら思えてしまいます。

ちょっと過激でしょうか・・・。

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