過去に書いた経済コラムよりFrom the economic column I wrote in the past
買い負ける日本で生きてゆくために
2021年12月28日
たしか10年ほど前だったと思いますが、「買い負け」という言葉をよく耳にしました。
「買い負け」はカニやマグロなど高級品の買い付け現場で中国や韓国のバイヤーに負け、日本人は気軽に食べられなくなるとう、イヤな現象のことです。
あれから10年経ちましたが、「買い負け」は一時的な現象ではなく、さらに深刻になりつつあるといえるでしょう。
おり悪く世界的に物価が上がりつつあるのもやっかいです。すでに大豆やトウモロコシなどは、中国人の爆買いによってコロナ前の2倍ほどになりました、原油や食用油なども似た値動きです。
(トウモロコシ先物価格、過去2年推移:楽天証券サイトより転載)
しかも近頃よく言われるようになりましたが、下グラフのように日本人の収入はこの30年ほどほとんど増えていません。
(G7各国の年収推移1990年-2020年/ドル建て購買力平価ベース:Mochaサイトより転載)
収入が増えないという相対的な貧困化に加え、世界的な物価高が同時に進んでいるわけです、日本が世界の市場で買い負けるのも仕方ありません。
僕は日本人の収入が増えない最大の理由は生産性の低さだと思います。
以下は日本生産性本部が集計した、主要国の「就業者一人当たりの労働生産性(1970年-2020年)」の推移で、いずれもアメリカを100として指数化したものです。これを見れば一目瞭然で、日本経済が絶好調だった1990年時点に最高値77となり、その後下がりっぱなしで2020年には55.6になってしまいました、韓国の59をも下回っています。大雑把に言って今の日本人は、アメリカ人の半分ほどしか価値を生んでいないといってよいでしょう。
アメリカとの対比なのでちょっとわかりづらいかもしれませんが、主要国がアメリカと同程度に伸びるなか、日本はこの30年間、相対的に生産性が低下しっぱなしです。
(財団法人 日本生産性本部のサイトより)
ご参考までに生産性は労働者一人が生み出す付加価値のことで、「生産性が上がればお給料が上がる」という考えは間違っていないと思います。
日本に当てはめると
生み出す価値が伸びない⇒モノやサービスが高く売れない⇒会社が儲からないから賃金を増やせない
という図式が定着してしまったのだと思います。
(たぶんこの考えはあっていると思いますが)仮に上記の通りだったとすればどうでしょう、私たち日本人が突然生産性を上げられるとは思えません、なぜなら生産性の低さは、行政のIT化遅れや会社の教育制度の不備、非効率な転勤制度や年功序列的な給与体系の放置、設備投資や研究開発費の不足など、私たちが長年放置してきた社会の構造に起因しているからです。言い換えれば社会制度の老朽化にともなって起きる、金属疲労のようなものではないでしょうか。
このような現状を改めるのは容易ではありません。私たち一人一人に染み付いた悪い習慣を、そうやすやすと改めることができると僕は思えないのです。
では私たちは今後も「買い負け」を受け入れなくてはならないのではないでしょうか。
豊かさが全てではないこと僕もわかっているつもりです、買い負けたといっても、日々の贅沢を少しずつ我慢すればいいだけのお話しで、「足るを知る心」もまた大切だと思います。
でも本音は少し違います。
例えば海外からやってくるアジアの人たちが、私たちが気軽に入れない銀座のすし屋に、当たり前のような顔をして入ってゆく光景を見るとどうでしょう、実際に僕はコロナ前にそのような光景をなんどか目にしましたが、正直申し上げてこころ穏やかではいられませんでした。昔はアメリカのホームドラマをみて、そのあまりの豊かさにため息をついたものですが、遠くない将来、私たちはアジアのドラマをみてため息をついてしまうかもしれません。
私たちは今後も「買い負け」が続く日本で、こんなうらやましさを覚えながら生きてゆかねばならないのではないでしょうか。
僕はそうは思いません。
おカネの世界には国境がありません。日本が貧困化の道をたどっても、自分のおカネを日本から切り離して運用することはさほど難しいことではありません。
ネット証券に口座を開けば、クリック一つで外国株や海外のETFを買うことができます、同じくクリック一つで円をドルに両替することだってできるのです。ペーパーアセットに不安があれば、外国のコインを買うことだってできます。
これはどういうことかといいますと、おカネだけを海外に移動して、その生産性の高さに紐づけして資産を増やすということです。
このような大局的な視点に立てば、海外資産での運用は欠かせないことがわかります、私たち日本人が相対的な貧困状態に陥らないために・・・。
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