スマートフォン版に切り替える

From the economic column I wrote in the past

ロシアによるウクライナ侵攻の本質は何か

2022年2月28日

今回に限らず、僕は日ごろからよく「この問題の本質は何なのか」などと考えます。

先週ロシアがウクライナに侵攻してビックリしました、アメリカは事前に情報を持っていたようで、オリンピック期間中から「ロシアのウクライナ侵攻は近い」と言い続けてきました。のんきな僕などは「代償が大きすぎてできないだろう、もしやるとしても一部で済むんじゃないか?」などと楽観していました、でも結果はアメリカが言う通りになってしまいました、僕だけでなく多くの方も同様だったのではないでしょうか。

こんな出来事を目の当たりにして僕は考え込んでしまいます、「なぜロシアはこんな暴挙に出られたのだろう。」

ロシアが侵攻したのは「事前に制裁への準備ができていたからだ、最悪SWIFTを締め出されても、ロシア版SFIFT(注)があるから当面は大丈夫だ、外貨準備も潤沢だし、中央銀行は金(Gold)もたくさん持っている」こんなふうに考える人もいるようですが、果たしてこの程度の脆弱な準備でプーチンはギャンブルに出るでしょうか・・・。

注)銀行間でおカネの受け渡しの際に使われる国際的なネットワークのことで、現在1.1万行ほどが参加しています。SWIFTから締め出されると、国をまたいだおカネのやり取りができず、例えば輸入代金の支払いや、輸出代金の受け取りもできません、つまり他国との貿易ができなくなるということです。ロシア経済にとっても大きな打撃になりますが、ロシアからの輸入に依存する国も物資の購入ができなくなります、例えばプラチナやパラジウムなど、同国のシェアが高い物資の輸入が止まると、日本はガソリン車の生産が制限を受けてしまいます。ロシアは万一SWIFTから遮断される場合に備え、「ロシア版SWIFT(SPFS)」を構築してきましたが、現在の参加銀行は400行程度にとどまりますし、内訳を見ても新興国の銀行が大半です。

僕はプーチンがウクライナ侵攻を決めた一番の理由は中国にあると思います、ロシア一国では欧米に太刀打ちできませんが、中国を引き込めば対抗できると考えたのだと思います。中国版SWIFT(CIPS:約1300行が参加)を活用することもできますし、すでに中国がロシア産小麦の輸入を発表したように、中国は巨大な消費市場でもありますし、欧米と並ぶ技術を持つ分野だってあります。そういえばオリンピックの開会式前に、プーチン氏が北京を訪れ習近平氏と会談しましたが、今にして思えばプーチン氏の目的は、クライナ侵攻のお墨付きを得ることだったのでしょう。「侵攻の結果、欧米から制裁を受けるが中国が助けてくれる」と見切ったのでしょう、少なくとも中国経済の台頭がなければウクライナ侵攻は無かったに違いありません。

このお話しはここでお終いではありません。

例えばアジアでは台湾問題がありますし、南シナ海の領有問題や尖閣問題もあります、その上、もっとヤバイ北朝鮮問題もあります。今後も中国という国が経済力をさらに拡大するならば、ウクライナ侵攻に似た状況が、アジアでも起きうると覚悟しておくべきだと思います。ウクライナ問題とアジアで起ききつつある諸問題の根っこは同じで、その本質は中国の経済的台頭です。

私たち日本人はこの現実を直視しなければなりません、少なくとも中国の高成長が続く限り、ウクライナで起きている現象はアジアでも起きうるということです。ことが起きてから慌ててSWIFT排除のような劇薬を持ち出すのではなく、私たちはゆっくりと効き目がある漢方薬を処方すべきではないでしょうか。中国による技術詐取を目的としたハッキングの阻止はもちろん、特に理系技術者の同国への流出防止や、技術そのものの流出防止など、即効性は欠きますが、同国の得意ワザである「技術のただ食い」を止めなければなりません、つまり経済安保の徹底です。あと日本の会社は同国が撒く巨大な市場というエサにつられ、彼らに技術を吸い上げられないことが重要です、たとえ短期的な機会損失が起きたとしても、大局的に見ればよほど損失を抑えることができることを私たちは知りました。今回のウクライナ侵攻から私たちは学ぶことがたくさんあります、私たち個人も「備えあれば憂いなし」です。

単なる入札代行ではなく、このサイトの主催者である田中がコンサルさせて頂きます、
コイン初心者の方でも安心してご利用いただけます。