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From the economic column I wrote in the past

世の中には変わった人がいる

2022年9月30日

世の中には変わった人がいるものです。

なんでもドングリを25年間集め続けている人がいるそうです、お名前は宮国晋一さんとおしゃいますが、通勤途中に公園を歩いていて、地面に落ちているドングリにふと目を留めたのが始まりだそうです。それ以降、子供の頃に戻ったような気持ちで毎朝降ってくるドングリを拾い続けているとききます。単なる趣味にとどまらず、2007年には「すばらしいドングリの世界」というウェブサイトを立ち上げ、現在まで更新し続けておいでです。ドングリに関する書籍も何冊か出されていて、たとえば「ドングリの呼び名辞典」といった辞典もお出しになっています。

でもこの方は植物学者ではありませんし、生き物の研究を生業としている方でもありません。大手電機メーカーの電子デバイス開発部門のサラリーマンで、今でも現役のご様子です。ところがウェブサイトを見ていると、根っからのドングリ好きだということがひしひしと伝わってきます、「なぜドングリか?」とよく効かれるそうですが、「ドングリが好きだからドングリなのです」としか言いようがないとおっしゃいます。

この方をみていると、僕は江戸時代の伊藤若冲や安藤昌益のことを思い出します、二人とも本業を持っていました。伊藤若冲は京都の青物問屋の主人ですが、ただただ絵が好きで、お店を弟に譲って絵の世界に没頭してゆきます。安藤昌益は医者でしたが、思想家としての一面もあり無神論や原始共産主義など、当時世界でも先端的の思想を持っていた人です。いわば二人とも江戸時代のどこにでもいる隠居のような人でしたが、本業とは何の関係もない研究や画業に没頭し続けたという点で、先のドングリさんと何だか似ています。

以上はホンの一例で、江戸時代に入り、庶民の生活に余裕ができてからというもの、趣味というか、本業とは無関係の研究や探求に没頭し生涯を終えるというライフスタイルの人がたくさん出てきます。ヨーロッパに行けばドイツやスイスなど同種の人たちがいそうな気がしますが、世界的にみるとこれはかなり特殊ではないかと思います。そしてこの利害を超えた探求や没頭・・・職人の世界ではしばしば「匠の技」などと言われますが、このようなニッチな世界への没入は、いまでも日本人の特徴であり続けていると思います。

一見無意味におもえるようなことでも、一筋に打ち込んでいくうちに人々の生活に有益な発明や発見につながるということは珍しくはありません、近年ではリチウムイオン電池の発明や青色LEDの発明、有機ELの発明、最近では全個体電池の研究など、今でも世界の最先端技術に対する日本人の貢献は大きいと思います、でもこの人たちは、発明しておカネを儲けようとしたわけではありません、ただただ「ドングリが好きだからドングリです」に過ぎないのだと思います。

世の中にはいろんな民族がいます。

アメリカ人は仕組みをつくって儲けを総取りするのがうまいですし、中国人は目端が効いていて、儲かりそうな技術や商売があればすぐ自分のものにしてしまいます。イギリス人は金融の才がありますし、イタリア人は芸術の分野で独創性を発揮します、フランス人は外交が上手で規格作りに長けていますし、韓国人は思い切りがよく、一瞬の勝機をとらえて量産するのが得意です。それぞれに得意分野はありますが、得意分野があるからこそ、このような国はこれからも経済的に没落することはないでしょう。

日本人も同様です。

日ごろは大衆の海に埋もれている異才が日々好きな研究や探求に没頭し、これからも世界が驚くような発見や発明を生み出してゆくに違いありません。問題はそれをおカネに変える方策で、そこさえしっかりとサポートできれば、日本経済の将来は決して暗いものではないと僕は思います、そしてそれを正しく導いてゆくのは政府の仕事です。

さきほどのドングリの話は本日(9/28)の日本経済新聞朝刊の最終面(「文化面」)で紹介されていたものです。ドングリにも丸いものや長いもの、なかには4-5センチもあるデカいヤツもあるそうです。僕もなんとなくドングリを研究する気持ちがわかります。

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