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From the economic column I wrote in the past

混迷の時代に入る中国

2022年10月30日

国には栄枯盛衰があるようです。

先日お隣の中国で5年に一度の共産党大会がありました、5年に一度しか開かれないだけあって中国最大の政治イベントです。大会以前から習近平さんは3期目の党総書記への就任が確実とされていましたが、結果はその通りでした。この点に関して驚きはなかったのですが、7人いる最高指導グループのうち6人まで習氏の子分だったのは、多くの専門家にとっても驚きだったようです。実質的にはお隣のロシア同様に独裁体制で、毛沢東時代に逆戻りです。

権力の集中は良いことではありませんが、それよりもっと大きな問題は、習氏の経済に対する基本的な考え方です。

今日の日経記事に、習氏の経済的な思考の根底には「荀子」の思想があると紹介されていました。荀子は「性悪説」を説いた紀元前の人ですが、「人間の本性は際限のない欲望で、これを統制せずに放置すれば、その無制限の欲望を満たすため人は奪い合い、殺し合い、最終的には社会が大混乱に陥る」と唱えています。そのような危険な社会にならないよう、人民は指導者に自らの権利の一部、たとえば自由を謳歌する権利や富を追及しようとする権利を委譲し、その結果、安全で経済的に反映した社会を実現できるという考え、これが荀子の「性悪説」のエッセンスだそうです。

たしかに習氏の最近の言動を見ていると、荀子の影響を大きく受けているようにみえます。

一昨年以来の共同富裕のスローガン化や、その具体策としての不動業やIT企業への規制強化、あるいは教育産業や一部の超富裕芸能人への締め付けなど見ていると、習氏の経済政策の根底に「人間の欲望への押さえつけ」があるとわかります。

2期目までは指導部の中に複数の政敵がいましたし、いわゆる長老と呼ばれる目の上のたんこぶたちもいました、でも先日の共産党大会以降、(習氏にとって)そのような不安定な要素は無くなりました、おそらく3期目は今まで以上の熱心さで、中国人民の欲望を抑え込む政策をとるのではないでしょうか。

果たしてこれから中国は、人民の欲望を抑えつつ、経済的な発展を続けられるでしょうか・・・。

私たちの経済的発展を支えてきたのは、私たち一人一人が持っている「もっとお金持ちになりたい」という、いわば「むき出しの欲」だと僕は思います。一方で意識するしないにかかわらず、人はおカネもうけをするために、何らかの価値を生み出しているといっていいでしょう。なぜなら価値のない財やサービスに対し他人はおカネを支払わないからです。このようにて生み出された価値の一つ一つは些細なものであっても、それが何億も集まると莫大な経済的、あるいは技術的な進歩を生み出します。このようにして私たちは欲望を燃料にして豊かになってきましたし、経済的にも進歩してきたといっていいでしょう、そしてそれを実証したのは皮肉なことに近年の中国自身でした。

荀子の思想の実践によって、たしかに中国の社会は安定するかもしれません、ただしそれは経済成長を犠牲にしたうえでの安定です。鄧小平いらいの中国は、経済的な高成長によってここまでの大国に成長してきましたが、得意のパクリビジネスはすでに限界に達しているようにもみえますし、年金制度の未整備や貧富の格差拡大、少子化など、無理な成長によって犠牲にされてきた多くの社会問題も表面化しています。習氏がそこまで考えているかどうか知りませんが、3期目の習氏は経済成長をとるか、それとも社会の安定をとるか・・・、この選択のなかで悩み続けることになるでしょう、でも上のような理由から両方とも得るのはどだい無理なはずです。経済成長とれば政権の基盤が揺らぎますし、社会の安定をとれば中国の覇権は無くなります、すでに潜在的な成長力が低下するなか、どっちをとっても中国にとって厳しい結果が待っていると思います。

そしてこのことは私たちの資産運用に大きな影響を与えるでしょう、中国が低成長時代に入るなか、この20年のように世界は高い経済成長を望めないとおもいます、その前提で私たちは資産運用の方針を立てなおすべきではないでしょうか。

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