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From the economic column I wrote in the past

停滞は後退と同じ

2023年3月31日

1月の当欄で僕はこのようなお話をしました。

『ゼロ金利というぬるま湯が20年近くも続いた結果、会社も従業員もすっかりハングリー精神を失ったように見えます。一人一人は決して怠けているつもりはないのですが、国際競争は相対的なガンバリで優劣が決まります、僕自身も含め、この20年というもの、例えばお隣の韓国や中国の人たち、あるいはアメリカ人たちと比べ、より努力をしてきたかと聞かれると、自信をもってYesと答えられないのではないでしょうか。』

僕はこの20年間、日本が徐々に地盤沈下してきた理由の一つは、私たち日本人一人ひとりの努力が足りなかったからだと思うのです、こんな風にお話ししますと大半の人は「何をアホなことゆうてるんや、自分は精一杯努力しているで」と反論すると思いますが、果たしてそうでしょうか。

日本人は勤勉で真面目ですし、一人一人をみれば精一杯の努力をしていると思います、でもその頑張りは正しい方向を向いているでしょうか。

僕はよく近所の法務局に行きます、会社の「全部事項証明書」をとるためです、会社をやっているといろんなところで全部事項証明書を要求されます、銀行口座を作るとき、新規開設時はもちろん一定程度期間が過ぎると弊社のような零細企業は更新を求められます。あと住所変更やビル名の変更があれば、監督官庁である金融庁から提出を求められます、金融庁だけではありません、さまざまな役所から様々な理由で全部事項証明を求められ、その都度近所の法務局に出向かなければなりません。決して法務局の職員の対応が悪いわけではなく、むしろ感心するほどテキパキと処理してくれるのですが、果たして僕はいつまで全部事項証明書を紙で出さなければならないのでしょう、それ以前に全部事項証明書の提出は本当に必要なのでしょうか、役所同士、法務局のデータベースから直接ダウンロードしてもらうわけにはゆかないのでしょうか・・。これは一つの例ですが、個人レベルでもこの手の雑事が多すぎます、窓口の職員もそれぞれ職務を忠実にこなしているのでしょうが、それが正しい方に向いた頑張りだと僕には思えないのです。

私たち日本人の大きな欠点の一つは前例主義だと思います。

前任者がやってきたからそのまんまやる、昨年までこれでやってきたから今年もやる、昨日までこれでやってきたから今日もやる・・・、さきほどの全部事項証明書一つをとっても、私たちの心の中に根を下ろした前例主義の強さがよくわかります。オンライン化やデータ化が大切なのは言うまでもありませんが、それ以前にその仕事やプロセスが本当に必要なのかどうか、頭を柔らかくしてゼロベースで考えるべきではないでしょうか、そしてもし仕事の進め方を変えたほうがいいなら、前例にとらわれず思い切って変えてみるべきだと思うのです。

自戒を込めて申しあげますとこの20年間、私たちが続けてきたのは仕事ではなく停滞です、一人一人は頑張っているつもりでも、努力の方向が間違っていたのだと思います。その結果、社会全体で見ると生産効率は上がらず停滞に陥ってしまいました。もしこの間、他国が生産性を上げたなら、私たちの停滞は後退と同義です。

逆にたとえば仕事のプロセスを少しずつ改善し、たとえば毎年3%効率を上げ続ければどうなっていたでしょう。

これを20年間続けると1.03の20乗、すなわち80%以上生産性は高まります。生産性が給与水準を決めるなら、私たち日本人のお給料もアメリカやドイツ、韓国なみに80%上がっていたはずです。日本経済停滞の要因はこんなシンプルなところにあると僕は思うのです。

そういえば僕がソニーにいたころ「創案」という制度がありました、社員全員が参加し週に一つなにか仕事の進め方の改善をし、それを創案委員に提出するのです。優秀賞には賞金が出るので、特に若手社員は楽しんで改善に取り組んだものです、最初は遊び半分でやっていましたが、いつしかそれが習慣化して、僕たちは日々些細な仕事のプロセスを見直すようになってゆきました、振り返れば素晴らしい制度だったと思います。できれば日本人すべてにこの創案制度を広めたいものです。

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