過去に書いた経済コラムよりFrom the economic column I wrote in the past
半導体株の売り時期、若干の修正
2024年2月29日
何度かこのレポートで取りあげましたが、今回の半導体株の上昇は2022年10月(下のグラフの赤矢印)を起点に始まりました。当時の半導体指数SOXは2162でした。
下のグラフはアメリカの半導体株指数(SOX指数)の5年間グラフですが、前回のピークは2021年12月に付け、その時点の値は3946(黄色矢印)でした。現在は4663で最高値更新中です。
(SOX指数5年間推移:マイクロソフトのサイトより転載)
一方で半導体の出荷額のほうはどう推移したでしょう、アメリカのSIA(Semiconductor Industry Association)は先日(2024年2月5日)に2023年の半導体世界売上高を発表しました、半導体の出荷統計は意外と集計まで時間がかかるようで、最新のデータの把握に骨が折れます、その点でSIAのデータはアップデートが早く有益です。下のグラフはSIAによる最新データですが、今回はこの最新データに基づいて、半導体株の売り時に若干の修正を加えさせていただきます。
(世界半導体売上高の推移、1996年から2023年末まで:SIAより転載)
このグラフ時は半導体株の行方を予想するうえでとても大切なので、皆さんにもよく見てほしいのですが、赤い線は対前年同月比の推移、青いほうは売上額の推移です。さきほどのSOX指数と違って時間軸が長くてすみませんが、ご注目いただきたいのは前回SOX指数がピークを付けた2021年12月(黄色矢印)と、その後SOX指数がボトムを付けた2022年10月(赤矢印)の間の部分です。
SOX指数がピークをつけた黄色矢印時点(2021年12月)では、半導体の出荷額は43ビリオンドル(430億ドル)ほどで、まだサイクルの上り坂にありました。半導体出荷額がピークを付けるのは2022年の3月ごろですから、SOX指数は4か月ほど半導体サイクルを先取りしていたことがわかります。
これに対し赤矢印のほうはどうでしょう、SOX指数がボトムを付けたのは赤矢印(2022年10月)ですが、半導体の販売額を見ると、逆にそのあたりが絶頂期でした、半導体売上はその後減ってゆき、ボトムを付けるのは2023年の3月ごろです、つまり株価(SOX)は半導体サイクルを5か月先取って下がり始めたことになります。
以上のことから私たちは2つのことを知ることができます。
- 前回のサイクルでは、半導体株は半導体のサイクルに対し4-5か月先行した
- 半導体のサイクルは2023年3月ごろすでに底を打っており、現在2024年2月時点では、すでにボトムから11か月経過している
特に2番目は重要で、今回のSIAによる最新データによって、初めて半導体サイクルの上昇トレンド入りがあきらかになったといってよいでしょう。個々の企業をみると半導体の底打ちは2024年の初めごろだとのデータもありますが、全体でみると意外と市場の底打ちは早かったことがわかります。このあたり僕も含め皆さんも、データをアップデートする必要があると思います。
ではその点を踏まえて今後の半導体株の予想です。
上記のように半導体サイクルは2023年3月に底を打って反転していることが明確になりましたが、問題は次のピークがいつ来るかです。一般に半導体サイクルは4年-5年程度といわれていますが、実際はどうなのでしょう、改めて検証したいと思います。
ここでもSIAのグラフが役立ちます、上のグラフの赤い線に注目して直近4回のピークを挙げますと
- 2022年3月ごろ
- 2017年11月ごろ
- 2014年2月ごろ
- 2010年1月ごろ
以上のようになります。さらにピーク間の期間を取ると、おおむね以下の通りです。
- 2022年3月ごろ(前回ピークから52か月)
- 2017年11月ごろ(前回ピークから45か月)
- 2014年2月ごろ(前回ピークから49か月)
- 2010年1月ごろ
サンプルは少ないですが、直近3回のサイクルに限れば、おおざっぱに49か月が1サイクルだったといっていいでしょう。さらにボトムからピークまでは半サイクルなので、49か月を半分にして25か月、これがボトムからピークまでの平均期間の目安です。
もしこの例が今回も当てはまるとしたらどうでしょう、うえのように今回のボトムが2023年3月ですから、そこから25か月(2年と1か月)で次のピークは25年4月となります。
さらにさきほど見たように株価が4~5か月サイクルに先行するならば、次にやってくる半導体株のピークは24年末あたりということになります。
もちろんサイクルは毎回一定のリズムで訪れるわけではありません、もしかしたらAI特需によって、今回のサイクルは高くて長くなる可能性も十分あると思います。
でも僕は安全サイドに立っておきたいので、今回の半導体株のピークは24年末あたりに置くことにいたします。そこを踏まえて半導体株からの降り時を、24年の夏あたりと考えておきたいと思います。なお従来僕は2024年の秋口を半導体株からの降り時と申し上げてきましたが、上記のようにSIAのデータのアップデートと、サイクルに対する株価の先行期間(前回サイクルのデータを採用し、4-5か月に修正)を変更した結果、従来の2024年秋口から2024年夏と少し前倒しいたします。
経済はいつも同じところにいるわけではありません。今回のSIAデータのように、刻々と新しいデータは入ってきますので、臨機応変に見通しを修正していきたいと思います。今後も見通しの変更があれば、都度このレポートでお話ししたいと思います。
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