過去に書いた経済コラムよりFrom the economic column I wrote in the past
2024年8月に起きた株価急変動
2024年8月31日
今月(2024年8月)の世界株は波乱の展開でした、特に大きく動いたのは日本株です、8/5は日経平均が4451円安と史上最大の下落を記録しましたあと、急反発して今月を終ろうとしています。一方で世界を見渡すと、日本初のショックなど無関係に動いた市場もあります、ブラジルやインド、インドネシアやマレーシアなど8月相場は順調でしたし、アメリカ株ですらNYダウは最高値圏まで戻しています。
日本株に関して申し上げますと。今月は何とも不思議な値動きでした。以下は日経225の直近6か月の動きですが、ここで5月以降の値動きをあらためて整理しておきたいと思います。
フェーズ1: 5月から6月中旬まで
38,000円から39,000円あたりの狭いレンジで推移
フェーズ2: 6月中旬からから7月上旬まで
急上昇し42,000円超え、過去最高値更新
フェーズ3: 7月中旬からから7月下旬まで
急降下して38,000円から39,000円の水準に戻る
フェーズ4: 7月下旬から8月上旬まで
一気に下落し一時31,000円台に
フェーズ5: 8月中旬から8月下旬まで
急反発し、38,000円台に戻す
(日経225平均株価指数6か月間の推移、楽天証券サイトより転載)
つまり急騰⇒急降下⇒急上昇で、もとの38,000円から39,000円に戻っただけです、この間、日経新聞や経済番組などでは「円キャリーの巻き戻しが原因」で、その「円キャリー巻き戻しを起こしたのは日銀の植田さんだ」的な論調でしたが、上のグラフを見ればうなずける解釈です。
結局、日銀の政策や植田さんの発言に振り回されただけで、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に変化はありません、したがって日経平均は日銀会見の前の水準である「フェーズ1」水準に戻っただけです。
でもここで「やれやれ」と済ますわけにはゆきません、私たちは、この稀に見る株価変動から、多くのことを学ぶべきだと思います。
まずは当局、特に日銀の政策によって株価は驚くほど動くという点です。特にたった3営業部で7600円以上、率にしても過去最大の19.5%も急落しうるという点を、私たちは覚えておくべきだと思います。
二つ目は、経済のファンダメンタルズ(基礎的な環境)に目を向ける必要性です。上記のように今回の急落は、たとえば日本経済の見通しが急に悪化したとか、それに基づいて企業業績が悪化したというように、実体経済の悪化を予見して起きたものではありません。またリーマン・ショックのように、金融危機への不安が台頭して起きたものでもありません。つまり今回の急落は、経済のファンダメンタルズとはかけ離れた現象で、その点では一種の心理的な現象といってもいいでしょう。その違いを見極めるのは簡単なことではありませんが、少なくとも見極めようとする意識は大切だと思います。
(日経225平均株価指数1年間の推移、楽天証券サイトより転載)
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