過去に書いた経済コラムよりFrom the economic column I wrote in the past
第2期トランプ時代の金相場
2024年11月21日
今回はトランプ時代の金価格について
少し考えてみたいと思います。
金(Gold)の相場を動かす要因はいくつかあります。
金は2000年以上前から通貨としての性格を持ってきましたが、
面白いことにその性格は今でも変わりません。
よほど通貨としてふさわしい性格を持っているに違いありません。
その結果、いまの世界を見渡してみると、
まずドルを中心とした法定の通貨群がありながら、
それと並ぶ形で金(Gold)が存在するという、
不思議な構造になっているという見方もできます。
この二重構造は金の相場に大きく影響します。
つまり金の価値は、
ドルを中心とした法定通貨との相対的な関係において、
変化するということです。
この点をおさえたうえで、
金(Gold)の相場を動かす要因について考えてみたいと思います。
一つ目は法定通貨、
特に米ドルへの信頼感です。
1900年台の前半はイギリスのポンドが、
1900年代の後半以降は米ドルが、
基軸通貨としての役割を担ってきましたが、
足元ではドルの信頼性が劣化しているのは明らかです。
さきほどの二重構造をベースに考えますと、
通貨の信頼性が高まると金の価格は下がりますし、
逆もまた真なりということになります。
通貨への信頼性という観点からいえば、
ドルの発行元であるアメリカ政府の財政悪化が、
重要な要素になります。
具体的にいえば、
財政悪化→国債の大量発行→デフォルト(破綻)への懸念
→法定通貨の信頼性低下→金価格の上昇
という経路で金の価格は動くということです。
金価格を動かす二つ目の要因は、
法定通貨の発行量です。
たとえば2008年のリーマン・ショック以降、
日米欧の中央銀行は大量のおカネを発行しましたが、
これは通貨と金のバランスに大きな影響を与えました。
簡単に言えばドル紙幣の希薄化→金価格の上昇で、
この間、金価格は1ドル=800ドル程度から2600ドル程度まで
値上りしています。
金価格を動かす三つ目の要因は、
「果たしてドルが基軸通貨としてふさわしいのか否か」という
疑念の広がりです。
ウクライナ戦争以降に実施されたロシアの国際決済網からの締め出しや、
同国の外貨準備の凍結などをみて、
ドルを外貨準備として持ち続けることへの懸念が、
特にグローバルサウスと呼ばれる新興大国のなかで広がりつつあります。
中国を筆頭に、トルコやインドなどの中央銀行は、
外貨準備の一部を金にシフトしつつありますが、
この流れは今後も続くのではないかと思います。
金価格を動かす四つ目の要因は、
世界の金利、特にアメリカの長短金利です。
金を持っていても1ドルももらえませんが、
アメリカの国債を持っていれば利息がもらえます。
したがって金利の上昇、
あるいは高止まりは金のウリ要因です。
以上、金が持つ特殊な性格を手がかりに、
金価格を動かす四つの要因について考えて参りしました。
では来年以降の4年間、
トランプ時代でどのような変化が起きるのでしょうか。
まず一つ目の「米ドルへの信頼感」からです。
選挙中トランプさんは
法人税と所得税の減税すると発言していましたが、
選挙の結果、上下院とも共和党が多数を占めており、
その実現性は高そうです。
減税の結果、経済が活性化し→逆に税収が増えて→財政好転
といいうシナリオも無くはありませんが、
市場はそんな能天気ではありません。
二つ目の「ドルの希薄化」はどうでしょう。
昨年からFRBはドル紙幣の回収(=QT)を進めていますが、
2008年のリーマン・ショック以降をみると、
FRBは比較的短く緩やかなQT期間を挟みつつ、
期間・規模ともそれを上回るQE(=紙幣の拡散)をやってきました。
景気の後退や金融ショックに対する中央銀行の処方箋が変化しない限り、
ドルの希薄化が止まるとは思えません。
三つ目の「グローバルサウスのドル離れ」はどうでしょう。
トランプさんの4年間、
アメリカが一国主義を強めるのは確実で、
グローバルサウスと呼ばれる国々は、
ますますドル離れを進めると思います。
この点もまた金の上げ要因になるでしょう。
最後の「アメリカの金利」はどうでしょう。
財政の拡大や景気の過熱は金利の上昇要因です、
おそらくトランプ時代はこのような傾向が出やすいと思います。
その点は金の下げ要因ではありますが、
ここ数年を振り返ると、アメリカの金利が上昇する中で、
金の価格も上がってきました。
よほど上げの力が強かったと考えるべきだと思います。
これからのトランプ時代は高金利が続くでしょうから、
その点では金貨価格の下げ要因ではありますが、
おそらく金の価格を上方向に引っ張る3つの力のほうが強いと思います。
目標価格について、ここでは触れずにおきますが、
金は産業用途が小さく、
たとえ値上がりしても困る人はほとんどいません。
この点は金価格の近未来を考える一つの材料となるでしょう。
では今回はこのへんで。
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